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スピンエコー法とNMR信号についての疑問
- MRIの仕組みを理解するために磁気共鳴について勉強している中で、スピンエコー法について理解が追いつかなくなりました。
- スピンエコー法は180度パルスを使用して磁場の不均一性による位相の乱れを解消する方法であり、理解しやすく説明するとされています。
- しかし、なぜ180度パルスがそのような役割を果たせるのかが分かりません。
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「でももしお時間がありましたらどうして180度パルスをかけると、Aは8時にBは5時にならないのか教えていただけますか?平面ではなくxyz軸だからでしょうか?」につきまして。 うーむ。励起の話は掘り下げると難しくて本当の議論は量子力学的な話になるのだそうです。それは私の付け焼き刃ではどうにもなりません。 古典的な回転コマのアナロジでなんとかやるとして(これも私は付け焼き刃ですが)、 この例において、90度パルスや180度パルスの励起RF磁場はX方向を向いています。このX軸を向いている磁場というのが、X軸を中心に回転させるということにつながっていきます。 以下で少し細かく見ていきます。 スピンの向きはX方向成分、Y方向成分、Z方向成分(90度パルスのあとはこれはゼロになっていますが)に分けられます。 励起後ある時刻でXY面内のどこかを向いているとします。そのスピンはX方向を向いている成分とY方向を向いている成分にベクトルを分解できますよね。TE/2の経過後のAのスピンが2時を向いているのであれば、X方向にかなりの成分があり、Y方向にちょっと成分がある、そういう分解となります。 その二つの成分それぞれに対する励起磁場の効果を考えます。 ここで大事なのは、励起磁場は自分と同じ方向(X方向あるいは-X方向)を向いている成分については影響を及ぼさず、それ以外の方向を向いている成分だけに影響を及ぼす、ということです。 数学的に言うと、スピンに対する励起磁場の影響は、「ベクトルの外積」で決まります。なぜ外積かというのは、ここでは天下りを受け入れるしかありません(さもなくば本格的な教科書)。 外積というと難しいですが、 二つのベクトルが同じ向き(あるいは反平行)だったら外積の結果はゼロ(作用なし)、X方向の励起磁場はX方向のスピン成分に作用を及ぼさない。 二つのベクトルの向きが直交だったら外積の大きさは最大。そして外積の向きは二つのベクトルの両方と直交する第三の方向! 180度パルスの最初の一瞬を見てみると、X方向の励起磁場の大きさを|R|、Y方向のスピン成分の大きさを|S|とすると、結果の大きさは|R|×|S|で、まあ今の場合大きさはどうでもよくて向きに関心があるわけですが、受ける力の向きは、励起磁場Rの向き(X方向)とスピンSの向き(Y方向)とどちらにも直交、この場合はZ軸を向く。 つまり、Y方向のスピンはX方向の励起磁場によりZ方向に力を受ける、この結果Z方向に少しねじ曲げられる。 地球コマの回転軸をちょっとひねってやると、ひねった方向とは別の方向に軸がかしぎますが、それと同じです。 この調子で180度パルスの励起を続けていくと Aスピンに対する180度パルスの作用は、 X方向成分に対して作用を及ぼさない。いくら励起を続けても、AスピンのX方向成分はそのまま残る。 Y方向成分に対しては、180度パルスのごく最初の部分ではちょっとZ方向に向きYZ成分ということになるが、YZ成分も励起磁場Rの方向(X軸方向)に対して直交であるから、励起を続けるとさらに向きを変えていく(X軸を中心に回転していく)、ある程度の励起磁場を続けると、Y成分は-Y成分となる。ここで180度パルス終了。 X成分はそのまま、Y成分はひっくり返る。2時に向いていたのが4時になる。
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- imoriimori
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理系であってもMRIは難しいですからねえ。 fMRIならばスピンエコーをすっとばしてグラディエントエコーだけ学ぶという手もあるでしょうが、やはりスピンエコーは基本でしょうし。 回転座標系で見ることを理解されているとして簡単な説明を試みましょう。 90度パルスの直後全スピンともY軸を向いているとする(そういう向きになるように90度パルスをかけた)。Y軸は時計の12時。 ↓ ミクロな磁場不均一性などの理由で各スピンは勝手にY軸からてんでんばらばらに向きをそらしていく。 たくさんのスピンがあるけど、二つだけ見る。 Aスピンは時計回りに向きを変えていくとする。どんなスピードでも良いけど、例えばTE/2あたり二目盛の向き回転とする。時間TE/2経過後に時計の2時方向まで向きを変えることになる。(もっと大きなずれかもしれないけど、このくらい小さい方が説明しやすいので) BスピンはAとは微妙に違う磁場環境にあるのでAと同じには動かない、これもどっち向きでもどんなスピードでも良いけど、例えば反時計回りにTE/2あたり一目盛とする。TE/2経過後は、時計の11時を向いている。 ↓ ここで180度パルス。180度パルスによりAとBの位置はX軸(9時から3時の軸、180度パルスのかけかたはいくつかありますが、ここではそうしておきましょう)を中心にひっくり返り、Aは時計の4時に向きを変えさせられる。Bは時計の7時へ。 ↓ そこから先、AとBはそれぞれ以前の状態と磁場環境は変わらないのだから以前のスピードと以前の向きで動き続ける。その結果、 ↓ 180度パルスからTE/2経過後、 Aは4時から6時へ位置する。Bは7時から6時へ位置する。 めでたく合体。6時は-Y軸。 全てのスピンは、180度パルスからTE/2時間経過後位相を揃えて合体することになり、ここでスピンエコーのピーク発生。 これで180度パルスの役割がわかるといいのですが、どうでしょう。
お礼
大変分かりやすく説明していただいて有り難うございます。Y軸から下に行くスピンの事を考えていなかったので、位相がいつどうして揃うのか分かっていませんでした。また180度パルスをかけるというと、この場合ならAは8時になってBは5時になるからどうしてーY軸で位相が揃うのか分かりませんでした。X軸を中心にひっくり返ると言うことで、目から鱗でした。ご回答はプリントアウトしてまた復習します!
補足
でももしお時間がありましたらどうして180度パルスをかけると、Aは8時にBは5時にならないのか教えていただけますか?平面ではなくxyz軸だからでしょうか?
お礼
ご回答ありがとうございます。「お礼」を書いたあとに「補足」を付け足したら、そちらが上に来てしまったんですが、お答えいただいて助かりました。ここまで詳しく説明されているものが今までなかったのでいまいちあやふやでしたが、ようやくスピンエコーの仕組みが分かりました。こちらのご回答もプリントアウトしてあとでまた復習します!お時間を割いてお答えいただきありがとうございました。