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検査項目と抗凝固剤
EDTAとクエン酸ナトリウムはどちらとも脱カルシウム作用があると書かれていますが、クエン酸ナトリウムは主に凝固検査に使われ、一方EDTAは凝固系に使ってはいけないといわれました。 同じ作用の抗凝固剤なのに、なぜ使い分ける必要があるのか教えてください。お願いします。
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日本臨床検査医会のホームページ内にQ&Aがあるのですが、そこからの 抜粋です。 (Q)凝固検査の抗凝固剤としてクエン酸ナトリウムが用いられるのは なぜでしょうか。またEDTA塩を用いないのはなぜでしょうか。(長野 県 臨床検査技師) (A)凝固検査における抗凝固剤の目的は、血漿中のカルシウムイオン の濃度を低下させ、検査実施まで凝固反応が起こらないようにするこ とにあります。測定開始時には改めて必要なカルシウムイオンを添加 することになります。カルシウム塩を形成する中性塩のクエン酸塩や シュウ酸塩は、このような測定系に適しています。以前はシュウ酸塩 が用いられていましたが、クエン酸ナトリウムと比較して、時間とと もに第V因子や第VIII因子の活性の低下を起こしやすく、またPTも長め になる傾向があります。一方液状で使いやすいクエン酸ナトリウム は、1953年トロンボプラスチン形成試験の際に使用されたのが世界で 最初です。この時は、血液と等張の3.8%のクエン酸ナトリウム(5水 塩)が用いられ、やがて国際標準化委員会の働きかけで109mM、3.2%ク エン酸塩ナトリウム(2水塩)へと標準化されました。 血球算定の検査の際に通常用いられるEDTA(ethylene diaminetetraacetic acid)の場合は、最も代表的なキレート化剤で、 カルシウムイオンを中心に最も安定した5員環を有する錯体を形成しま す。さらにEDTAはその他の多くの金属とも安定した錯体を形成するた め、カルシウムを含む金属イオンの定量分析に用いられています (EDTA滴定)。 ところで、EDTA滴定において金属が水酸化物として沈殿するのを防 ぐために用いる補助錯化剤として、鉄とのキレート作用を持つクエン 酸塩が用いられます。したがってクエン酸塩の抗凝固活性には、この キレート作用がかかわっている可能性もあると思います。 実際に血球数算定に用いられている1.8mg/ml EDTAを、凝固学的検査 の際に使用すると、APTT、PTともに、クエン酸よりも少し長めの結果 となります。また凝固のポイントは用手法でみる限りでは、分かり難 い印象を受けます。そして塩化カルシウム濃度を上げると、一層凝固 のポイントは分かり難く、時間をかけてゼリー状に固まります。むし ろ通常の2分の1、0.0125Mの塩化カルシウムの方が、凝固点はわかりや すく、時間も短縮します。ただし、正常検体をバッファーで希釈し、 APTTの延長をみていくと、1.2倍程度までの希釈ではAPTT時間は変化し ません。このような結果から、少なくとも血液検査で一般に利用され ている濃度のEDTAは、凝固検査に適しているとは言えません。それに 加えて、標準血漿や凝固因子欠乏血漿はクエン酸ナトリウムを用いて 採血されたものですから、 EDTA採血された検体では、各凝固因子の定 量測定は不可能となってしまいます。 このように、クエン酸ナトリウムは使い易く、既に標準化されてい ますが、今のところEDTAについて十分な検討はなく、標準化もされて いないので、臨床検査に用いることはできません。 【参考文献】 [1] F.W. Fifieid and D. Kealey :分析化学 I 、1998、丸善 [2] 黒川一郎 他:臨床検査科学、1983、南山堂 [3] 福武勝博 他:血液凝固 止血と血栓 下巻、1982、宇宙堂八木書店 [4] Biggus. R. and Douglas , A. S.:The thromboplastin generation test. 1953、J. Clin. Path. 6: 23-29 (1998年11月8日 認定臨床検査医 腰原公人(No.338)、福武勝幸 (No.255))
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- ebisu2002
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逆にクエン酸ナトリウムは血球形態に変形を来たすため赤血球数などの算定や血液像には不適当です。
お礼
抗凝固剤にも得意不得意があるんですね。なかなか奥が深い…。回答ありがとうございました。
お礼
EDTAとクエン酸ナトリウムの使い分けについてよくわかりました。EDTAではなくクエン酸ナトリウムがすでに標準化されているとは知りませんでした。 ありがとうございました。