まず,No5のpei-peiさんの書き込みにある
>観測される振動数は、f*c/(c-v)になり
は,不正確ではないかと思われます.
誤解の無いように捕捉させていただくと、正しくは,
f*((1+(v/c))/(1-(v/c)))^(1/2) ---(a)
ではないでしょうか.
(ただし,観測者と光の進行方向は同じものとし,fは光源が静止している系で見た
ときの光の振動数であり,(a)はそれを観測者の静止系で見たときの振動数.)
繁雑さを避けるためにあえてローレンツ収縮の効果を無視したのかもしれませんが、
観測者にとって意味ある量はf*c/(c-v)ではなく(a)であると思います.
次に,cestunlivred さんの疑問について.
>相対論では光の速度が一定と言うことになっているので、自分の速度と光の速度と
>の差がない筈なのにどうしてドップラー効果が起きるのでしょう。
このままでは少々論理的ではありません.No6でもふれられていますが、言葉を補
ってもう一度整理すると、次のような疑問になると思います.
1)ドップラー効果は「観測者の速度と波の速度との差」が元々の波の速度からずれ
ることから生じるものである.
2)しかし光に関しては,光速度不変性より「観測者の速度と波(今の場合は光)の
速度との差」と元々の波(光)の速度とは差がない筈である
3)よって光ではドップラー効果は起きない(のではないか.)
しかし,実際は光の場合にもドップラー効果は生じる、なぜ?
と言う疑問だと思います.
この主張のどこが間違っているのかというと,それは,1)と2)とでは
「観測者の速度と波の速度との差」の定義が違うという点です.
だから3)が成り立たないのです.言葉では同じ「観測者の速度と波の速度との差」
でも,相対論を考える場合は,どの座標系で考えているのかを明確に把握しなくて
はいけません.
では,1)と 2)で「観測者の速度と波の速度との差」はそれぞれ何を意味するの
でしょうか?
まず、No2の参考URLにあげられているページ
http://homepage1.nifty.com/tac-lab/doppler.html
の光のドップラー効果の説明をご覧下さい。
このページの(32)式までの考え方は,音波のドップラー効果の場合も光の
ドップラー効果の場合も全く共通です.この時点で既に「光が向かってくれば振動
数は高くなり,また離れていく場合は低くなる」というドップラー効果の特徴的な
性質が現れています.さらに相対論的な運動であるためローレンツ収縮の効果を入
れると(35)式を得ます.このとき依然ドップラー効果の性質は保たれたままです.
さてここで,(32)式の c - v が「見かけの速度」のように見え、ここでの
導出が,光速度不変の原理を無視しているかのように見えるかもしれませんが,
もちろん,そんなことはありません.(32)式の c - v は、
「光源の静止系から見たときの(<=重要)光速と観測者の速度の単なる差」
であって,1)で言う「観測者の速度と波の速度との差」とはこのことです.
いわゆる「見かけの光速度」,ではありません.そして,この「見かけの光速度」
が 2)で言うところの「観測者の速度と波の速度との差」なのです.
では,「見かけの速度」とはなんでしょうか?
詳細は省きますが(と言っても導出はローレンツ変換の式から容易にできます)、
相対論で「見かけの速度」は
vs=(vs'+V)/(1+vs'V/c^2) ---(b)
で与えられます。
ただし、一つの物質の運動を,互いに相対速度Vで運動する座標系 S,S'系で見
た時の速度をそれぞれvs,vs'としています.S'系で速度v'に見える運動はS
系で見ると(b)で与えられる速度vsで動くように見えるということです.また逆
も言えます.この時 ,(b)には以下の性質があります.
(I)vs'=0 ならば vs=V 逆に vs=0 ならば vs'= -V
すなわち、S'系で静止しているように見える物質はS系では速度Vで運動
しているように見え、S系で静止しているように見える物質はS'系では速
度-Vで運動しているように見えます。これがVが相対速度であるという意
味です.
(II)vs'=c ならば vs=c
すなわち、S'系で見て光速度で動く物質はS系で見てもやはり光速度cで
動きます.これが光速度不変性です.
(III)vs'<<c,V<<c ならば vs=vs'+V (近似式)
すなわち、光速度に比して遅い運動を考える時,初めて「見かけの速度」
は単なる和(または差)の形になります.
以上をふまえ,もう一度 具体例に戻ります.
上の記号との対応は,vs=c,V=v となります。
すなわち,光源の静止系であるS系で光速度cで動く物体(光)を,S系に対し
速度vで動くS'系(観測者の静止系)から見た速度がvs'になります.
(今の場合(II)よりvs'=c)
先の式(32)での c-v (=vs-V)は「見かけの速度」ではなく,同じS系で見
た時の,光速度と観測者の速度の単純な差 であるということがよく分かると思います.
ドップラー効果をもたらす原因は「見かけの光速」ではなくこちらの方です。
c-v は当然,光速を越え得ますが何も問題ありません.もちろん観測者から見た
「見かけの光速」は(II)で述べたようにvs'=cであり光速を越えません.
また,(III)の事情から,音波のような非相対論的な場合に限って,
「観測者の速度と波の速度との差」の 1)での意味と 2)での意味が一致します.
最後に蛇足ですが,
光のドップラー効果は音波のドップラー効果のように考えるより,
光の(4元)波数ベクトルをローレンツ変換するほうが簡単です.
また,相対論的な場合,観測者と光の進行方向が垂直の場合でもドップラー効果が
起こることに注意が必要です.座標変換で空間と時間が混ざるという,モロに相対
論的な効果に由来します.
最後の最後に,光のドップラー効果を考える際,運動は相対的なのだから上のURL
で与えられた説明とは逆に光源が動いて観測者が静止しているとしても良いではな
いか,その場合も同じ結果が得られるのか? という疑問を持たれるかも知れません.
結論をいえば同じ結果が得られます.音波のドップラー効果では光源が動く場合と
観測者が動く場合で結果が異なるためこのような疑問が湧くと思われますが,光波
の場合は実は,ローレンツ収縮の効果によって結果は同じになるのです.詳細は省
きますが,ファインマンの書いた教科書「ファインマン物理学」の波動を扱ってい
る巻(日本語訳 第二巻だったかな?)を参照ください.
だいぶ説明が冗長になってしまいました.御参考になれば幸いです.
補足
> ここで、それぞれが観測する音速は違うところからドップラー効果が生じる、でも、光の場合はどちらも光速になり、差は生じない。 と言うことですね。 そう、そういうことなんです。 教えて頂いたサイトを拝見しました。 「誰が観測しても光速一定」というのが無視されているような気がします。 光も観測者によって相対的な伝達速度が測定されるという前提ならば、 音と同様な説明があのページのように出来ます。 何か簡単に説明することは非常に難しいのではないかと思えてきました。 keronyanさんどうもありがとうございました。