どうして敢えて「出る」杭なのか、他より一段と抜け出ているものとか、しゃしゃり出て差し出がましいものとかであれば、もっと言い様があるのではという観点から考えて見ました。
今でもひどく不揃いな歯並びの悪いのを「乱杭歯」と呼びますが、この乱杭(らんぐい)とは、本来「治水・護岸の目的で、河岸や海岸の近くに乱立させる杭並び」からの連想されたものなのでしょう。
この護岸の乱杭において、出る(=外に向かってはみ出す、出っ張る、突き出る)杭は<波に>打たれるという意味があったようです。この「波に打たれる」という表現が、今となってはむしろ新鮮に感じられませんでしょうか。
「高木は風に憎まる Tall trees catch much wind. 」の類いといえましょうか。
「高釘必ず打たれる」(「俳諧水滸伝」出典)の場合は単に不揃いや他より長目の釘だったというよりも、終いまでキッチリと打たれ忘れたものや、改めて弛んで浮いてきた釘は打ち直される意味とも言えましょう。
この出典とされる「北条五代記」でさえ「たとへば出るくひのうたるゝと俗にいふが如し」とありますから、俚諺として巷間に親炙された類いには、迂闊に一律の解釈を寄せつけないほどの堆積や沈殿があるという事でしょうか。
お礼
遅くなりましたが、感謝します。 大変参考になりました。