〔動詞の音便〕
音便とは、語の一部の音が、より発音しやすい音に変化する現象を言います。動詞の音便は、主に四段動詞、ラ変動詞、ナ変動詞の連用形語尾が、接続助詞「て」、完了の助動詞「たり」に続く場合に起こり、次の四種類があります。
◆イ音便
四段動詞の連用形語尾「き」「ぎ」「し」が、い」に変化する現象です。
例) 書きて→書いて 泳ぎて→泳いで 渡して→渡いて
◆ウ音便
四段動詞の連用形語尾「ひ」「び」「み」が、「う」に変化する現象です。
例) 争ひて→争うて 呼びて→呼うで 頼みて→頼うで
◆撥音便
1、四段動詞の連用形語尾「び」「み」、ナ変動詞の連用形語尾「に」が、撥音(はねる音「ん」)に変化する現象です。
例) 飛びて→飛んで 読みて→読んで 死にて→死んで
2、ラ変動詞の連体形語尾「る」が、助動詞「めり、なり<伝聞・推定>、べし」に続くとき、撥音「ん」に変化する現象です。この場合、「ん」は表記されないことが多いですが、音読するときは「アンメリ」「アンナリ」「アンベシ」と読みます。
例)あるめり→あんめり・あめり
例)あるなり→あんなり・あなり
例)あるべし→あんべし・あべし
◆促音便
四段動詞の連用形語尾「ち」「ひ」、ラ変動詞の連用形語尾「り」が、促音(つまる音「っ」)に変化する現象です。ただし、この「っ」は小書きされずに「つ」と書かれることが多いです。
例) 立ちて→立つて 習ひて→習つて ありて→あつて
*ウ音便・撥音便に伴って、本来清音である「て」「たり」は、濁音「で」「だり」に変化します。
〔形容詞の音便〕
ク活用・シク活用ともに音便が起こることがあります。
1、連用形語尾にあらわれる「く」にウ音便が起こることがあります。
例)つれなく→つれなう(ク活用形容詞の例で、「く」は連用形語尾です)
例)うつくしく→うつくしう(シク活用形容詞の例で、「く」は連用形語尾の一部です)
2、連体形語尾にあらわれる「き」にイ音便が起こることがあります。
例)つれなき→つれない(ク活用形容詞の例で、「き」は連体形語尾です)
例)うつくしき→うつくしい(シク活用形容詞の例で、「き」は連体形語尾の一部です)
3、補助活用連体形語尾にあらわれる「る」が、助動詞「べし・めり・なり〔伝聞・推定〕」を下に付けるとき撥音便が起こります。このとき撥音「ん」は表記されないことが多いです。
例)無かるべし→無かんべし・無かべし
例)無かるめり→無かんめり・無かめり
例)無かるなり→無かんなり・無かなり
〔形容動詞の音便〕
形容動詞の連体形語尾にあらわれる「る」が、助動詞「べし・めり・なり〔伝聞・推定〕」 を下接するとき撥音便を起こして「ん」になることがあります。さらに撥音「ん」は表記されないことが多いです。
例)あはれなるべし→あはれなんべし・あはれなべし
例)あはれなるめり→あはれなんめり・あはれなめり
例)あはれなるなり→あはれなんなり・あはれななり
動詞、形容詞、形容動詞は上記のケースで音便をおこします。しかし上記の条件に該当すれば100%音便になるわけではありません。
補足
高校一年生のテストでここまで突っ込 まれることはないですよね??