無条件降伏は無理かもしれませんが、ソ連を敗北させた可能性はあるかと思います。
●独ソ戦線について・・・
もし、日本が参戦した場合、実行されると思われる作戦の一つがシベリア鉄道の破壊です。
実際、関東軍には白系ロシア人の工作部隊が複数あり、この部隊がソ連攻撃の際にはシベリア鉄道破壊の任務を与えられていたと言われます。
また、空爆によるシベリア鉄道破壊もありえるでしょう。
もしシベリア鉄道が破壊されたらどうなるか・・・
第二次世界大戦でのソ連はアメリカ、イギリスからのレンドリース(軍事供与)が無ければ勝てませんでした。
アメリカやイギリスから戦車7千台以上、飛行機1万4千機以上、トラック37万台以上、その他大量の物資、食糧がソ連に渡されました。その運ばれた物資の約半分は、船でウラジオストックまで運ばれ、そこからはシベリア鉄道で西に運ばれました。
シベリア鉄道はその重要な補給路でした。
また極東やシベリアに配置されていた部隊が、西部での危機のために鉄道で運ばれます。1941年年末までに極東やシベリアから西部に鉄道で運ばれた部隊は34個師団にも及びます。
そうしたシベリアから運ばれた部隊の活躍があってモスクワはドイツ軍より守られました。
つまり、シベリア鉄道が早期に破壊された場合、ソ連は補給路と増援部隊の到着に乱れが出る事が予想されます。
ソ連も鉄道を破壊されれば修理するでしょうが、日本軍も再攻撃して、破壊して直して、破壊して直してのシーソーゲームのようになるのではないかと。ドイツ本土が連合軍の空爆を受けた時と同じです。
その結果、シベリアからの援軍の到着が遅れソ連の戦線は崩れる可能性があるかと。モスクワも陥落するかもしれせん。
レンドリースは極東ルートが使えないので、北極海ルート、イラン経由と空輸となり、ソ連に送られる物資の量も下手をするとかなり減るかもしれません。
なお、そう簡単に極東ルートの物資を他の輸送ルートに振り分けるのは困難が伴うかと。
北極海ルートの場合、主要港のアルハンゲンリスクからの鉄道が一本しかなく、輸送量がどうしても限られます。新たに鉄道を建設にするにしてもモスクワまで1200キロという距離と厳寒の地でとてつもない困難です。
イラン経由は最も遠いルートで時間もかかるし当然船舶の量がさらに必要となります。
また、ソ連は大量の農民を徴兵しました。当時のソ連の農村人口はソ連全体の7割を占めていました。
ウクライナなどの穀倉地帯をドイツに占領された事と合わせて、ソ連の食糧生産は非常に低下します。1945年というウクライナを既に奪回していた年でさえ、ソ連の小麦の生産量は戦前の半分以下でした。
その不足する食糧の穴を埋めていたのもレンドリースです。
もし、レンドリースにおける食糧の量が激減したら、農民の徴兵も手加減しなければならないかもしれず、そうなれば史実よりソ連兵の数は減るという可能性も出てきます。
そして、モスクワが陥落した場合、ソ連側の鉄道による物資や軍の移送がスムーズに行かなくなる事が予想されます。
ソ連の鉄道はモスクワを中心に張り巡らされましたが、モスクワより西側と南側に鉄道路線は多く敷かれ、モスクワより東側は西や南より鉄道網が発展していないのです。特にモスクワより東では南北を繋ぐ路線が限られています。
そういう面で、ソ連軍の展開と補給は少々乱れるかもしれず、それがドイツ軍に有利に展開するかもしれません。
モスクワを占領した後、どこまで進めるかはわかりませんが、ヴォルガ河を超えた辺りからだとウラル山脈を越える鉄道は大きく南北に迂回している鉄道を除き3路線しかないので、ドイツ空軍が鉄道を叩きソ連軍の交通網を麻痺させる可能性もあるかと。そうなれば、展開は増々ドイツ軍に有利になるでしょう。
◆つまり日本が参戦してシベリア鉄道を遮断すれば、ドイツにかなり有利な状況になる可能性もあります。
また、1943年の時点でさえ自発的にドイツ軍に参加してソ連軍と戦っていたロシア人は100万人と推定されています。
もし、モスクワが陥落すれば、こうしたスターリン体制を嫌いドイツ軍に味方したロシア兵はもっと増加したかもしれません。スターリンを見限る者が増加するかもしれないのです。
ロシア人だけでなく、ドイツ軍には東方部隊として、旧ソ連国民のアルメニア人部隊、アゼルバイジャン人部隊、北カフカス人部隊、タタール人部隊、トルクメン人部隊やコサック義勇兵部隊等々、ソ連のスターリン体制に不満を持つ少数民族の部隊がかなりありました。こうした少数民族達の中で、ドイツ軍に味方する者がさらに増えたかもしれません。少数民族と言ってもコサックなどは25万人が兵士としてドイツ軍に参加し、カルムイク人も8万人が参加しています。
そうなれば増々ドイツ軍は有利になったでしょう。
そしてソ連軍を東方へ押しやり、カフカスの油田地帯を制圧できれば、ドイツ軍はさらに有利になったでしょう。
カフカスの油田地帯はソ連の石油生産の9割を占める油田地帯です。ここを押さえられれば、スターリンには致命的です。この当時は、まだウラル東方の油田は発見されておらず中東の油田も現在のようには開発されていませんでした。
また、ウラル東方のシベリアや極東は人口は少なくソ連の人口の2割しかおらず、食糧の自給もできてない地域も多々あります。もし、スターリン体制を支持するソ連人がドイツ軍から逃げ、そんなウラル東方に押し寄せたら、致命的な食糧不足、物資不足になるかもしれません。
そうなれば、下手をするとソ連は内部崩壊するという可能性が出てくるかもしれません。
いずれにせよスターリンは危機に陥るかと。
●日ソ戦について・・・
もし、日本がソ連と戦った場合、かねてからの計画通り、まず沿海州を占領。この後、北および西に攻勢に出てルフロウ付近まで進出するでしょう。ルフロウは満州国の北、漠河の近くですから、それほど西進するわけではありません。
カムチャツカ半島の要地と樺太も占領予定でした。
日本軍は恐らく勝利できるのではないかと。恐らく制空権は握れましょうし、局地的な戦いで不利になっても退けば、ソ連軍は補給の問題から攻勢には出てこず、守勢に徹すると思われますし、時間が経てば極東ソ連軍は手持ちの物資を食い潰しジリ貧になるのではないかと。
スターリンは西部第一に考えるというか、極東に多くの戦力を割いたり補給を滞りなく続かせるなんて余裕は無いでしょうから。
こうした日本軍の作戦が成功すれば、日本は樺太の油田を占領しソ連の石油生産に更に打撃を与える事になります。
また、沿海州を北極海方面に北上すれば、そこにはソ連最大の金鉱山があります。
この金鉱山はソ連の戦中の戦費、戦後の復興資金を支えたと言われるほどの金鉱山です。ここを押さえれば、ソ連の戦時経済には大打撃であり、日本の経済に大助かりです。
■そうしたわけで、もしも上手く行けば、日本は沿海州、樺太、カムチャツカ、シベリアの一部とソ連最大の金鉱山と樺太の油田を手に入れ、ドイツも上手く行けばスターリンをウラル方面に追いやり、ウクライナの穀倉地帯、ドネツの工業地帯、カフカスの油田地帯を手に入れ、戦争目的である東方生存圏を手に入れ、スターリンはウラル周辺からシベリアで食糧不足、石油不足で悩み、アメリカとイギリスの援助で何とか生きているという事になるかもしれません。
なお、日本は史実では防共回廊を構成しようと満州国から西へモンゴルの部族や少数民族の部族と接触していましたが、そういう動きも活発化し、そこで日本の工作機関の動きと東へ追いやられて来たスターリンとが衝突するかもしれません。
また、旧ソ連の少数民族達の軍がドイツ軍支援の下に、その地を奪って新たな国を作ろうと、スターリンにとどめを刺さんとするかもしれず、そこでソ連は終わりになるかもしれません。
◇ただしソ連が敗北する可能性はあるとは思いますが、ソ連が勝利する可能性も十分ありえるかと思います。