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複分解について(2)
硫酸カリウムと塩化カルシウムの複分解では一価と二価の塩だからということがわかりましたが 一価と一価の塩の、複分解のはなぜ起こるのですか? 例) AgNO3+KCl →KNO3+AgCl なぜどちらも一価と一価の塩なのに複分解が起こるのですか?
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こういう反応を「複分解」という枠組みで理解しようということ自体、疑問です。 化学式での表現で AB+CD→AD+Cl となっていれば「複分解」だとしています。何が起こっているかは無視して文字としての表現の変化だけで見ていることになります。これは100年前の化学の立場です。当時としては仕方がなかったとは思いますが現在では古すぎます。化学結合の考え方がまだできていなかった時代ですから物質は全ていくつかの原子が集まって出来た塊です。アレニウスの電離説が提出されたのは1883年ですが直ぐに受け入れられたわけではありません。電離説以前の考え方はAとBが別れる、CとDが別れるのは反応が起こる時だけであるというものです。 質問文の中で示されている例は理化学辞典での「複分解」の説明文にも出てきています(wikiの説明は理化学辞典の引用ですから同じ内容です)。でもここで例に上がっている反応は水溶液中で起こる沈澱反応です。 AgNO3もKClもイオン結合性の物質です。正負のイオンがイオンの状態を保ったまま集合してできている固体です。水に溶かせばそのイオンがばらばらになります。 AgNO3⇒Ag^++NO3^- KCl⇒K^++Cl^- この変化は現在「分解」としては理解していないものです。「電離」としています。 ※現在、「分解」は次のような反応の場合に使われている言葉だと思います。 2H2O⇒2H2+O2 2H2O2⇒2H2O+O2、 2NO2⇒2NO+O2 2つの溶液を混ぜれば4種類のイオンがただ混ざるだけです。普通は単に混合溶液が出来るだけです。 この反応の場合は初めに無かった新しい組合わせで水に溶けにくい物質(結合の強い物質)が出来るので沈澱が生じます。AgClは沈殿しますから出来たと言ってもいいでしょうが残りのK^+、NO3^-はただイオンとして水溶液中に存在するだけです。くっついているわけではありません。 もしNaNO3とKClの組み合わせであれば NaNO3+KCl⇒NaCl+KNO3 と書くことは出来ないのです。単に4種類のイオンが混じって存在するだけの溶液ですから反応が起こったとは言えません。 NaOH+HCl⇒NaCl+H2O 理化学辞典に書いてある立場で言えば、これも「複分解」になってしまいます。 でもこれを「複分解」だとしている本はどこにもないはずです。これは中和反応です。 最早、化学式による表現だけを形式的に見ての判断しかできない時代ではないのです。何が起こっているかが分かれば、その起こっていることで反応を分類して行くという立場です。 そうは言ってもいまだに 「NaClという分子」とか「NaClの分子量」という言葉を使ったり、水溶液中の中和反応であるのに、「Na^+とCl^-が結合してNaClが出来る」という反応の仕組みを書いたりしている文章が目に付きます。 「塩の加水分解」という言葉の背景も同じようなものだと思います。 「複分解」、「塩の加水分解」という言葉はどちらも廃語にするのがいいでしょう。 「電解質」という物質の分類はファラデーの電気分解の理論(1833年)によって確立したものだと思います。でもそれは電圧をかけた時だけイオンに別れるという理解です。電圧をかけていない状態でも水溶液中でイオンに別れて存在しているという認識ではありません。アレニウスが電離説を出すまでに50年かかっているのです。 あなたの質問が「この反応がどうして起こるのか」という疑問から出たものだとします。 AgClの溶解度が小さいということが反応が起こる決め手になるのですから 「なぜAgClの溶解度はAgNO3に比べて極端に小さいのか」 という質問になるはずです。 でも溶解度の違いがどのようにして決まるのかはかなり説明するのが難しい内容だと思います。 普通の物理化学の本では「溶解度の大小」は認めてしまっています。 無機化学の本では扱っているものもありますがかなり、定性的なものです。 >硫酸カリウムと塩化カルシウムの複分解では一価と二価の塩だからということがわかりましたが K2SO4+CaCl2⇒CaSO4+2KCl についての話ですね。 これも複分解という捉え方は「?」です。 CaSO4の溶解度が小さいので濃度によっては沈澱が生じるというものです。 ある程度濃い溶液でないと起こりません。2つの溶液を混ぜるとさっと白く濁るというような顕著な反応は期待できません。 こういう反応を見るのであればCaCl2よりもBaCl2の方がはっきりしています。 BaSO4とCaSO4は溶解度にかなりの違いがあります。 2族の金属元素の硫酸塩は下に行くほど溶解度が小さくなります。 CaSO4とBaSO4では1000倍ほどの違いがあります。 これは2価と2価の塩の場合です。 1価と1価の塩の方が1価と2価の塩よりも溶解度が小さいと言うことが出来るのは同じようなイオンの組み合わせで考えた時でのことです。一般的に広げて言うのは無理があります。 Na2CO3とNaHCO3で比べるとNaHCO3の方が溶解度が小さいというような場合には当てはまります。 25℃の飽和溶液の濃度は Na2CO3 22.7% NaHCO3 9.3% でもこの違いは「比較的小さい」というレベルですね。極端な違いではありません。 陰イオンの種類を変えてしまうと NaCl 26.4% ですから1価と1価,1価と2価の比較が成り立たなくなっていますね。 銀イオンの場合、1価と1価の化合物の間でも陰イオンの種類が変わると溶解度の違いが大きく変動します。 水によく溶ける物質の例(25℃、飽和水溶液の濃度) AgNO3 70.7% AgClO4 84.5% 水に溶けにくい物質の例(飽和水溶液1L中の質量) AgCl 1.9×10^(-3)g(25℃) AgI 3.4×10^(-5)g(20℃) Ag2CrO4 3.2×10^(-2)g(25℃) ※ 溶解度の数値は全て化学便覧に載っているものです。 原子番号の大きな元素は電子の構造が複雑になっていますから 単純に電荷をもった球としてしまうのには無理があるということだと思います。 話が難しくなってくる理由もこのあたりにありそうです。
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- Tacosan
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溶解度を考えてみようか.