まず最初に「正しい会計」というのは1種類ではない、ということを理解していただく必要があります。
たとえば「税務会計」という会計があります。これは正しい税額を計算するための会計であり、その方法は法律により定められています。ですから「正しい税務会計」は税法に従った会計です。
また、経営を適切に管理するための「管理会計」という会計があります。これは経営状況を適切に把握し、自社の長所や短所を適切に分析し、対策を立て、改善するための会計です。「正しい管理会計」はその企業の現状を正しく分析でき、適切な対策が立案でき、適切に企業の改善ができる会計です。これはその企業の状況によって異なりますから、100社あれば100通りの正しい管理会計が存在します。税法に従った会計であっても、その企業の現状分析に適切でなければ「正しい管理会計」ではありません。
ですから、税金を計算するための会計と、経営の管理に使う会計と2つの会計が必要なのです。ただし、多くの企業では税務会計だけで経営管理もある程度適切に行うことができます。ですから、完全に2つの会計を分けている企業は少数です。
利益=売上高-固定費-変動費
というのは管理会計で使う公式です。
管理会計は、その企業の現状分析を適正に行うための会計で、100社あれば100通りの「正しい管理会計」があります。ですから、ここで「利益」に何を使うか、は企業によって異なります。
通常は営業利益を使うことが多いようです。
ちょっと考えてみてください。
商品を仕入れ、1万円支払いました。
仕入れた商品の一部を8千円で売りました。
利益はいくらでしょうか?
売り上げが8千円で仕入れが1万円だから2千円の赤字ですか?
でも売ったのは商品の一部だけで、まだ商品は残っています。100個仕入れて50個うったのでしょうか?100個仕入れて20個売ったのでしょうか?どれだけ仕入れてどれだけ売ったのかがわからないと利益額はわかりません。
売上から費用を引いた残りが利益です。費用には売り上げによって増減する「変動費」と売り上げによらず一定の「固定費」とがあります。ですから
利益=売上高-固定費-変動費
になります。しかし、固定費や変動費がいくらであるのかがわからないと、利益は計算できません。変動費がいくらなのかわからないのに利益がわかっている、なんてことはあり得ません。
もちろんこれが練習問題であるなら話は別です。
〇〇円の利益があった。変動費はいくらだったか計算せよ。
という問題です。
あるいは、経営計画のための計算として、
〇〇円の利益を得るためには、変動費をいくらにする必要があるか?
というような問題です。
この場合には、どの利益を使うか、がまず決定されます。
当期の経営計画として、営業利益の目標を定めたいのか、経常利益の目標を定めたいのか、あるいは純利益の目標を定めたいのか、全社の経営戦略と経営計画という視点から決定します。
要するに、変動費を計算するための利益額、というのはあり得ないのです。変動費がわかっていてはじめて利益額が計算でき、その利益額をいくら以上にしたいから変動費をいくらにしようか、という順序で計算をするのです。
補足
サイトには 利益=売上高-固定費-変動費 って書いてあるんですけど・・・