直感的な解説です。あまり厳密ではないのでご注意下さい。
正確に理解したい場合はモノの本で勉強して下さいね。
結構長いので頑張って下さい。
以下では全て1次元運動を仮定してお話しします。
ニュートンの運動方程式は
(1) d2x/dt2 = F / m
であることはご存じの通りです。
ここで d2x/dt2 は、時間 t の関数として表された
位置 x(t) を時間で2回微分したものです。
微分とは、その量の変化率を表す操作でした。
つまり、位置 x を時間で微分すると、
位置の時間変化率が求まることになります。
位置の時間変化率とは、位置[m]が単位時間[s]内でどれだけ進むか?
ということですから、それはすなわち【速度[m/s]】という量です。
同様に、位置を時間で2回微分したものは、
速度[m/s]を時間[s]で微分したものですから、速度の変化率です。
この量は【加速度[m/s2]】として定義されます。
さて、積分とは早い話が『微分の逆』ですから、
この加速度で表された運動方程式(1)を、時間で1回積分できれば速度が、
2回積分できれば位置が、以下のように求まることになります…
(2) dx/dt = ∫(F/m)dt = v(t)
(3) x = ∫∫(F/m)dtdt
…と言ってしまえばそれまでですが、
もう少し真面目に、原点に返って考えてみましょう。
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添付の絵を見て下さい。
これは速度 v を時間 t の関数として v-t 平面に表したものです。今、
【関数 v(t) と t軸 および t=a, t=b で囲まれた部分の面積】
を求めたいとします。
変な形なので、a から b の間に n個 の細い長方形を並べて、
それらの面積の和を、この領域の面積と言い張ることにしましょう。
まず、長方形の面積 S1 は、
(4) S1 = Δt * v(t1)
です。ここでこの面積の物理的な意味を考えます。
横幅は微小な時間 Δt で、縦幅は時刻 t1 における速度 v(t1)ですから、
(4)式は、【距離=時間×速度】を表していることは明白です。
結局この面積 S1 を求めることは、
『時刻 t1 から微小時間 Δt の間に進んだ距離』
を求めていることに他なりません。
同様に、面積 S2 = Δt * v(t2) は、
『時刻 t2 から微小時間 Δt の間に進んだ距離』
ですし、面積 S3 = Δt * v(t3) は、
『時刻 t3 から微小時間 Δt の間に進んだ距離』
です。
ということは、これらをある時刻 tn のところまで全て足し上げれば、
【ある時刻 t1 から tn までに進んだ距離 x 】を求めることが出来ます。
これを式で書き表すと、
(5) x = S1 + S2 + … + Si + … + Sn
= Σ(Si)
= Σ{ v(ti) * Δt } (添字 i = 1→n)
しかし、絵を見ると、関数との間に微妙に隙間があったりして、
どうも気にくわないですよね。長方形の刻みが粗いからこうなるのです。
逆に言えば、刻み数 n を目一杯細かくしてやれば
正確な面積を求めることができるということです。
具体的には何刻みにすればいいか?そう、∞ ですね。
よって、(5)式は
(6) x = lim Σ{ v(ti) * Δt } (添字 i = 1→n, 極限 n→∞)
と書き改められます。lim Σ とは何とも見てくれが悪いので、
これを別の記号で書くことにします。それこそが
(7) x = ∫v(t)dt (範囲 a→b)
です。ついでに Δt を dt と書き換えました。
dt の d は Δ:delta(=微小)の意味です。
というわけで、この計算を『速度を時間で積分する』と呼びます。
速度の積分が距離(位置)を表している、
ということが理解できましたでしょうか?
これは定積分の例なので、x は具体的な数字として求まりますが、
関数形 x(t) を求めたければ v(t) を不定積分すればよいわけですね。
その場合は積分定数が出てきますが、
これは普通、初期条件などから決めることができます。
結局、積分とは、変化を表す量 f から
元の量 F (F(t) を f(t) の原始関数と言います。) を求める操作と言えます。
今の例では、位置 x の変化率である速度 v から、元の x を求めました。
これは当然、速度 v の変化率である加速度 a を時間で積分すれば、
v を求めることがきるということです。
そもそも運動方程式は、位置 x(t) の微分方程式として
与えられるものですから、
これを【解く】とは、すなわち x(t) を求めることに他なりません。
運動方程式を解くには時間積分が不可欠な訳です。
と言っても、残念ながら(2)(3)式のように
単純な積分計算になることは少ないですが…
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では、(1)式が
(8) m * d2x/dt2 = F(x)
という形で書けたとき、この両辺を空間(というか距離 x)で
積分すると何が求まるでしょうか?
(9) m * ∫(d2x/dt2)dx = ∫F(x)dx
⇔ m * ∫(dv/dt)(dx/dt)dt = ∫F(x)dx
⇔ m * ∫d/dt(v^2/2)dt = -U2 + U1
⇔ m/2 * (v2)^2 - m/2 * (v1)^2 = -U2 + U1
です。
まず左辺ですが、dx = (dx/dt)dt や、合成関数の微分の公式(の逆)
を使ってちょっとトリッキーな変形をしているのに注意して下さい。
すると、見にくいですが、m/2 * (v)^2 という
見慣れた形が出てきました。これは…運動エネルギーですね。
v2, v1 はそれぞれ t = t2, t1 (x = x2, x1)の時の速度です。
次に右辺ですが、F(x)dx とは、力 F(x) と微小距離 Δx のかけ算ですから、
これはこの力によって物体がされた【仕事】を表します。
F(x) が -U(x) という形に不定積分できたとして、
x = x2, x1 のときの -U(x) を -U2, -U1としています。
(9)式をもっとわかりやすい形に変形します。すると
(10) m/2 * (v2)^2 + U2 = m/2 * (v1)^2 + U1
おわかりでしょうか。これはまさに【エネルギー保存則】です。
つまり、-U(x) は物体のポテンシャルエネルギーを表しています。
なぜこんなに都合良くいくのか?
それは、実はこの結果を元にこれらの量を定義しているからです。
いかがでしょうか?
そもそもエネルギーなどの物理量もこの運動方程式の積分から導かれた、
ということをなんとなく理解して頂けたでしょうか?