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第二量子化できる理由
場の量子論の勉強をやり始めてわからないところがでてきたので質問させてください。 教科書には、なんらかの波動関数を第二量子化するときにまず波動関数を平面波展開し、その個々の振幅をいきなりa,a^+といった個数演算子で置き換えて量子化しています。 質問は 波の振幅を量子化できる根拠は何ですか?なぜ連続的であった振幅を個数演算子で置き換えることができるのでしょうか? 振幅は粒子の個数に比例するような原理みたいなものがあるのでしょうか? 何分、独学ですので誰かに僕の勘違いを軌道修正していただきたいです。よろしくお願いします。
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引き続きKENZOUです。私も非常に勉強になっています。 >なんかどことなく間違っているような気がしますが、どうなんでしょうか 格段大きな間違いはないと思います。まぁ、仮に間違っていても気づいた時に直せばいいのですから、ここは勇気をふるって場の量子論の勉強に大きく一歩を踏みだしてください。とはいうものの、少しだけ蛇足のコメントを付しておきます。 >・場を量子化できる決定的な根拠はない。 まさにその通りで、場の量子化という手続きは発見論的(ヒューリスティック)な考察にもとづいていると思います。 >・ただし波の振幅を量子化することで粒子性が導きだされると考えて、ハイゼンベルグとパウリは場を量子化した。 歴史的な話をすれば、波の振幅を量子化して粒子性を見出した最初の人はディラックだと思います。この考えをハイゼンベルグとパウリはマクスウェルの電磁場に適用し、場の量子論を建設していったのですね(←うろ覚え)。いずれにしても場から粒子性が導き出されたのは、上で述べたディラックの発見論的な試みのお陰ですね。 >・そしてそれが実験事実と合えば場の量は実際に離散的な値をとることがわかる。 表現上だけの問題ですが、理論計算の結果が実験事実を説明することができれば、その理論は正しいということになります。 >・量子化するには個々のフーリエ係数に対して交換関係を課すことで量子化することができる。 個々のフーリエ係数の交換関係は、場の演算子ψ(q,t)、ψ^+(q,t)に正準交換関係を課したその帳尻あわせとして出てきます。 最後にhttp://village.infoweb.ne.jp/~oyaoya/qed/index.htm#naiyou の名言集からピックアップしたワインバーグのインタビュー(1984)を載せておきます。 「粒子はエネルギーと運動量の束です。では、エネルギーと運動量とはなにか。並進によって定義される量子数じゃないですか?(中略)その素粒子がなんであるかは、対称性に関するその性質だけできまります。 素粒子は、その対称群の表現にほかなりません。(笑いながら)宇宙は対称群の表現の巨大な直積(※)です。宇宙はこれ以上、端的にいい表せっこありませんよ」 (※)消滅演算子を生成演算子の右にもっていったもの。
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- physicist_naka
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量子力学((2))小出昭一郎著を参考に、私なりの理解を示します。 よく知っている1粒子のシュレーディンガー方程式は、 ih∂ψ(r,t)/∂t=(p^2/2m+V(r))ψ(r,t) (1) です。(hはhバーのこと。) これを多粒子の場合に拡張するとどうなるかということです。 多粒子の場合は、 ih∂ψ(r1,r2,...,t)/∂t= (p1^2/2m1+p2^2/2m2+....+V(r1,r2,...))ψ(r1,r2,...,t) (2) となります。もちろんここで波動関数は(反)対称化されています。 大雑把ですが、これを式変形するだけで、a,a^+といった個数演算子で 表すことができ、さらに変形して(1)式とそっくりな式が出てきます。 ただし、今度はψ(r,t)は演算子となっています。 (2)式は3N+1次元で取り扱いにくかったのが、3+1次元となり、 取り扱いやすくなりました。
お礼
どうもありがとうございます。 何が便利なのかが、少しわかった気がします。
- KENZOU
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#1のKENZOUです。 >僕の勘違いは解けたような気がします。 なによりです。がんばってください。 >>この演算子が作用する場の状態ベクトルは別に考えます >とあるのですが、場と量子波の振幅の関係は何なのでしょうか? 前回の回答で状態ベクトルのことを特に言及しませんでしたが、やはり引っかかられたのかな(笑い)。 <状態ベクトルについて> まず、状態ベクトルとは一体何なのかということを補足しておきます(そんな事は既に知ってるよということでしたら読み飛ばしてください)。状態ベクトルは場の演算子が作用する被演算子で、 ○演算子⇔観測過程 ○状態ベクトル⇔物理状態 という対応で捉えればいいと思います(エルミート演算子が現実の観測過程で重要な役割を果たすことはご存知の通りです)。さて、状態ベクトル(物理状態)はいろいろな物理状態を成分とするベクトル(といっても数学的にはヒルベルト空間のという注釈がつきますが)として考えることができます。なぜベクトルとするのかというと、特定の物理状態が丁度おなじみのベクトル内積でつまみ出すことができるからなのですね。数学的に言い換えますと状態ベクトル|ψ(t)>はψ(q,t)を第q成分とするベクトルで、状態ψ(t)の中にΦnを見出す確率振幅は、ベクトルの内積と同様に<Φn|ψ(t)>と表現できるんですね。この議論は量子力学ではよくお馴染みのことと思いますが、場の理論に移行しても同じことが言えます。 <場と量子波の振幅の関係> まず、古典場から。 場とはなにかって真剣に考えるとしんどいので、場とは場の量自身のことだと考えてください。たとえば、電場とか磁場そのものと捉えてください。そして古典場はいつでも振幅と振動数と位相という量で特徴づけられています(フーリエ変換)。 次ぎに量子場へ。 古典場の範囲では粒子の粒々の概念はどこを探してもないのですが、これを量子化して粒々の粒子的イメージを引っ張り出せないか、というのがざっくりとした場の理論の考えだと思います(波を扱うより粒の方が分かりやすい)。そこで古典調和振動子を例にとりますと、調和振動子の振幅は振動数や位相とは無関係であるという特徴を持っていますが、この関係を粒子と波動という関係にオーバーラップさせ、粒子性を振幅に、波動性を振動数や位相にあてがったら物理的イメージとして都合がいいではないかとなります。まさに古典場を量子化するとこのイメージにぴったりはまった形になるのですね(もっとも相互作用がある場合はイメージ通りのことは運ばないようですが、、、)。 ということでまとめますと、場とは場の量そのもののことであり、それを量子化すると粒子像が飛び出してくる。この飛び出す元は「量子波の振幅」である、ということになります。 あまり整理せず、少しだらだら書きすぎましたが、お分かりいただけたでしょうか。 (P.S) >場の量子論の勉強をやり始めてわからないところがでてきたので 日置先生の「相対論的な場の量子論入門」と講義録が公開されています。少しばかり解析力学と量子力学の知識が必要ですが、相対論特有のややこしい議論はなく、非常にさっぱりとわかりやい講義録です。一読される価値はあると思います。ご参考まで。
お礼
詳しいご回答ありがとうございます。 参考も非常にわかりやすく(全部読んでませんが)ためになりそうです。 自分なりに整理すると ・場を量子化できる決定的な根拠はない。 ・ただし波の振幅を量子化することで粒子性が導きだされると考えて、ハイゼンベルグとパウリは場を量子化した。 ・そしてそれが実験事実と合えば場の量は実際に離散的な値をとることがわかる。 ・量子化するには個々のフーリエ係数に対して交換関係を課すことで量子化することができる。 なんかどことなく間違っているような気がしますが、どうなんでしょうか?(これをこのタイトルの最後の質問にしたいと思います。お時間あればお願いします。)
- KENZOU
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簡単のために(非相対論的なお話)シュレーディンガー場を考えてみましょう。シュレーディンガー場の方程式は(hをhクロスと読替えてください) ih∂ψ(q,t)/∂t=-(h^2/2m)∇^2ψ(q,t) (1) と書かれます。ここでψ(q,t)は量子力学の場合では確率振幅でしたが、場の量子論では「場の状態に作用する演算子」と考えます(この演算子が作用する場の状態ベクトルは別に考えます)。量子力学では、量子化というのは位置演算子qと運動量演算子pの正準交換関係を課すということですが、場を量子化するのに場の演算子ψ(q,t)、ψ^+(q,t)の正準交換関係が成り立つようにします(第2量子化)。 さて、ψ(q,t)をフーリエ変換すると ψ(q,t)=Σakexp(ik・q) (2) と書かれますが、これは多数の平面波を重ね合わせた量子力学でいう波束というのに相当しますね(なにかだんだん粒子的イメージがでてきた、、、)。 >なぜ連続的であった振幅を個数演算子で置き換えること >ができるのでしょうか? ここで留意すべきはψ(q,t)は場の演算子であり、決して波を表すものではないのです。ですからフーリエ係数akを古典的な波の振幅と捉えるのはマズイ、これも演算子なのです。 >波の振幅を量子化できる根拠は何ですか? 根拠というより、場をとにかく量子化するために場の演算子ψの正準交換関係を要求するのですね。これが成立する条件を求めるとフーリエ係数akの交換関係がでてきます。 [ak,a^+k']=δk,k' [ak,ak']=0 (3) このフーリエ係数の演算子を使ってシュレーディンガー場の方程式を書きかえると dqk(t)/dt=pk(t) dpk(t)/dt=-ω-2qk(t) (4) となり、これはまさに調和振動子の方程式ですね。ハミルトニアンはH=Σhωk{[ak^+,ak]+1/2} (5) となります。ところでN=ak^+ak は個数演算子と呼ばれ、この固有値が0,1,2,・・・となることはご存知の通りで、ここからまさに場の粒子像が出てきますね。もっともこの辺の事情はテキストですでに勉強されていると思いますので、このあたりで終わります。
お礼
非常にわかりやすい説明ありがとうございます。 僕の勘違いは解けたような気がします。 >>この演算子が作用する場の状態ベクトルは別に考えます とあるのですが、場と量子波の振幅の関係は何なのでしょうか? 変な質問ですいません。
お礼
何度もお付き合いいただき大変ありがとうございました。 KENZOUさんのお陰で一歩コマを進めることができそうです。 最後のワインバーグの言葉の意味を理解するためにがんばりたいと思います。