- 締切済み
ミトコンドリア複合体Vに作用する薬剤
ミトコンドリア複合体Vに作用する薬剤として阻害剤と脱共役剤がありますが、この違いは何ですか?どちらもATPは枯渇する方向に働くのでしょうか?ミトコンドリア膜電位に与える影響が異なるのでしょうか?
- みんなの回答 (3)
- 専門家の回答
みんなの回答
- Hayate03
- ベストアンサー率36% (112/304)
実験データの話となると、なかなかコメントが難しいですね。 プローブを使ったΔpHやΔψの測定実験は、結果自体の解釈を する前に、結果が正しくそれらを反映しているかどうかの評価 が重要になります。また、実験系がインタクトなミトコンドリ アにどれだけ近いのかも評価が必要なように思います。 質問者さんが行われている実験系自体は古くからあるものです から、まずは過去の文献にあたって、その辺りの情報を収集す ること、そして必要と思われるコントロール実験を行うことが 必要だと思います。 お書きになっている様な実験の結果は、既に論文に報告されて いるように思いますし。
- Hayate03
- ベストアンサー率36% (112/304)
複合体Vを阻害した時に、ミトコンドリアの膜電位が 上昇して行くか?とのご質問ですが、答えはNOです。 脱共役剤を入れてやれば、複合体I~IVはどんどんプロ トンを輸送するでしょうが、そうでなければ、プロト ンの電気化学ポテンシャル(=濃度勾配+膜電位)と 酸化エネルギーが釣り合ったところで、プロトンの輸 送が止まります。 この「釣り合った状態」はおそらく阻害剤の有無には あまり影響されないはずです(ちょっと自信なし)。 イメージ的には、豆電球(複合体V)と乾電池(複合 体I~IV)の関係のようなもので、豆電球があろうが なかろうが、乾電池の電圧が変わらないのと同じよう に考えればよいと思います。 あくまで原理的なお話しとしての説明です。
- Hayate03
- ベストアンサー率36% (112/304)
阻害剤は、複合体Vの酵素活性を直接阻害します。 その結果、ATPの合成と逆反応の加水分解の両方 が阻害されます。この場合には、解糖系で合成さ れるATPには影響を及ぼしません。 一方、脱共役剤は、ミトコンドリアの内膜に作用 して、水素イオンの透過を自由にし、他の複合体 により形成される水素イオンの濃度勾配や電位差 を打ち消します。 複合体VによるATPの合成は、ミトコンドリアの 内膜を境にした水素イオンの濃度勾配と電位差を 利用しているので、脱共役剤でもATPの合成が阻 害されます。 加えて、脱共役剤の場合には、逆反応であるATP の加水分解反応は阻害されず逆に促進され、解糖 系で合成されたATPを加水分解してしまい、ATP が枯渇する状況となります。 以下は、ATPの加水分解反応が促進される仕組み です。 複合体Vは、ATPを加水分解する場合には、水素 イオンを合成反応の場合とは逆向きに輸送します。 これにより生じる水素イオンの濃度勾配や電位差 がATPの加水分解反応にブレーキをかけますが、 脱共役剤がある場合には、このブレーキがかから ないので、解糖系で合成されたATPの加水分解が 進み、ATPが枯渇する方向に進んでしまう訳です。
お礼
丁寧に解説していただきありがとうございました! さらに質問で恐縮なのですが…。 「複合体V阻害剤はATPの合成と逆反応の加水分解の両方を阻害する」とのことですが、つまりV特異的な阻害剤(例えばオリゴマイシンなど)が作用するとVを介したプロトンの移動がストップしてしまうということですよね? それでも複合体I~IVは影響は受けないので、そのような薬剤が作用するとミトコンドリア膜電位は上昇していくと理解していいのでしょうか??
お礼
豆電球の例えはわかりやすかったです!ありがとうございました!! しかし最近行った実験で興味深いデータが…。 電位依存的にミトコンドリアに取り込まれるプローブを用いた実験を行ったところ、V阻害剤を作用させると何故か取り込まれる量が減少したんです。 つまり電気化学的ポテンシャルが低下したと解釈できるのですが、仮説ではポテンシャルは増加するか変わらないとしていたので、びっくりです。 この結果はリーズナブルなのでしょうか?? あと、複合体II阻害剤を作用させてもポテンシャルは変わらなかったのですが、これは複合体IIがプロトンの輸送機能を持っていないからと解釈してよいでしょうか?