前置詞atの働きについて
atは点を表す、あるいは狭い場所を表すと、学習参考書に書いてありました。例えばat noonは正午という時点で、at the officeは狭い場所を表すのだそうです。
ところが、ではat nightは夜という時点を表すのかという疑問が生じます。それについていろいろ説明がなされています。例えば、夜の間は眠っている時間だからあっという間に過ぎ去るので点と同じだとか。珍説としか思えません。仮に、それが本当の理由だとしても、そのような説明を生徒達にする気にはなりません。説明というものはある程度、理のかなったものであってほしいと思うのです。そこで、私なりにatの働きについて考察して見ました。ご一読の上、間違いや怪しそうなところがあればご指摘下さい。
では分析を始めます。
(1) atび後続する目的語が数えられる名詞で、冠詞やその他の限定詞が付加される場合は時 間や空間において最小限度の伸び広がりしか表現できない、つまり点に近いものになります。
I waited at the station. やThe train arrived at Tokyo. において、実際に問題にされる場所は、それぞれstation内のある場所であったり、Tokyoのどこかの駅のホームだったりします。
I got up at 7 (o'clock). はI got up at the hour of 7. と同じです。瞬間を表します。
My grandfather passed away at 90. はMy grandfather passed away at the age of 90. と同じで す。もちろん、90才の年のある日のある瞬間を表します。
Look at the blackboard. においては、黒板の方に視線を向けよと言ってるわけで、視線の向 かう方向を狭い範囲におさめようという意図があるはずです。
aim at ---も同様です。目標を狭い範囲におさめようとするものだと思われます。
He drove the car at the rate / speed of 60 kilometers per hour. においては、速度を(振れ幅 の小さな)一定のものであることが示されているように見えます。
at some distance / angle ---なども同様。
(2) atび後続する目的語が数えられる・数えられないと関係なく、冠詞やその他の限定詞が続か ない場合は概念または概念に近い働きを行うと考えられます。
この場合は時間や空間の伸び広がりを表現できません。ただし、点に近いものだと言えません。そもそも、概念や概念に酷似した働きを行うものは時間・空間形式において制約を与えられないので、実体として扱われません。実体として見なされないものが文中、あるいは談話中で実際に使われるためには何らかの限定詞が必要だとする観点に立てば、見えない限定詞つまりゼロ冠詞が使われていると考えるしかないと思います(<冠詞がなくても、概念はそのまま文中でフリーパスで使用できる>としても構わないと思いますが、ゼロ冠詞という考え方の方が、概念と冠詞の関係を統一的に説明できるので有益だと思います)。
---この点に関しても、ご意見を頂ければありがたいです。
at work, at table, at flight ---
at workにおいてworkは概念です。ということは、workの持つ働きが表現されているように思えます。また、概念だということは一つ、または一回の出来事と意識されない、つまり状態の表現であるとも考えられます。どちらの解釈でも「仕事中」の意味が出ます。at flight やat tableも同様だと思われます。
at noon やat dawnやat midnightは文法書などではある時点の表現だとされていますが、そうではないと思います。noon やdawnやmidnightは概念なので、時間・空間形式によって具体化される(具体的な時間を持つに至る)ものではないと思います。
noonは点(瞬間)を表すものではなく、太陽の南中を表すものだと思われます。ところが、南中時には時計の時間が12時を指すこともあって、at noon =at '12 o'clockという図式が流布した結果、noonが時刻を表すものと錯覚されるに至ったのではないかと思います(私の仮説です)。
dawnやmidnightはそれぞれ夜明けと真夜中です。時刻を表すことはありません。これらの表現は時間幅を想定しないものなので、点(時間幅が最小)の表現だと誤解されたのではないかと思います。
このように考えると、at nightを点を表すものと考えることが筋違いのものであるように思われます。そもそも問題設定を間違えているという気がします。nightは黒々とした闇の深さを表しているに過ぎないと思います。at nightは「夜の暗い時に」の意味だと思います。
at homeも同様に考えられると思います。非常に狭い場所なのではなく、家庭という親密さを備えた場所を意味するのではないかと思います。
その他、at sea, at liberty, at random ---なども同じように説明可能だと思われます。
(3) 動名詞が続く場合
He's very good at swimming.
ここでのswimは原形ですから概念を表します。
原形動詞を活用させることは、その動詞の持つ概念が時間的な制限を与えられて具体化され る(時制を表現する)ということだと思います。
---ingは名詞につく限定詞のようなものだと思います。---ということは、(1)のヴァリエーションだ と言うことになります。
ここでのswimmingは外延ではあるものの、一般論的な文脈に組み込まれてたために内包に 近い働きをしているように見えます。
swimmingは<泳ぐこと>を一般的に表していると思います。
<総括>
以上の3つのパターンを分析しましたが、その共通点を探ってみました。
冠詞やその他の限定詞(---ingを含む)が続く場合は最小限度の伸び広がりしか表現できない、つまり点に近いものになります。冠詞やその他の限定詞が続かない場合は概念の働きを行うので、そもそも時間や空間の伸び広がりを表現できません。
つまり、双方共に、時間・空間という形式において一定の十分な伸び広がりを表現できないということが共通点かと思います。でも、そもそも位相の異なるものだと思います。
以上ですがいかがでしょうか。
お礼
大変素晴らしい知識をお持ちですね!!! 確かに、ひとつひとつをよく見てみると、「点」という概念が見えてきます!!! 他の前置詞と代替可能なのでは…との思いが拭えないのが難しいところですが、 だいぶスッキリしました! 今後も参考にさせていただきます。 夜なので回答こないだろうとあきらめていたのですが、お陰様で助かりました。 しかもこんなに詳しく説明を…(;ロ;) 回答ありがとうございます。