マスターカーブを作成するとき、両者にズレが生じたときはWLF法を
採ってください。
アレニウス則は経験に基づく大雑把な見積もり法です。WLF法は
高分子材料により適合した方法として提案され採用されています。
その違いは次のように説明できます。
高分子材料のクリープや応力緩和の現象は粘性流動に基づいています。
それで粘度にアレニウスの式を適用します。
温度Tでの粘度をη、見掛けの活性化エネルギをEとすると
η= ηo*exp(-E/RT) R 気体定数
基準温度Trでの粘度ηrの間には
ηr= ηo*exp(-E/RTr)
温度TとTrでの粘度を較べるために比を取ると
η/ηr= exp(-E/RT)/exp(-E/RTr) = exp{-E/R*(1/T – 1/Tr)}
両辺の常用対数を取ると
log(η/ηr)= -(E/2.303R)*(1/T – 1/Tr)
この式よりも高分子物質に広く適用できる式として Williams, Landel, Ferryに
よりシフトファクターaT(Tは下付小文字)に付いて提案された式が
log(aT) = log(ηTrρr/(ηrTρ)) = - C1( T - Tr)/(C2 + T -Tr)
C1,C2は系により定まる定数、ρ、ρrは温度T,Trでの密度です。
TとTrの差がそれほど大きくない場合は、Trρr≑Tρですから
log(aT) = log(η/ηr) = - C1( T - Tr)/(C2 + T -Tr) となり、
アレニウス則はシフトファクターを近似的に表したものであることが判ります。
WLFの式ではプロットは1/Tに対して直線にならず、これはアレニウス則の
見掛けの活性化エネルギEが温度に依存するためと解釈されます。
WLFの式に付いては自由体積理論等による検討が有り、WLFの式と
全く同じ形の式が導出されています。つまり理論的な裏付けも有る式です。
長時間データを短期間に採るためには、温度の異なる高温槽を多数並べて
クリープや応力緩和を同時測定します。機器的には自動記録の容易な
応力緩和が最も楽です。
実験データを待ちながら基礎を勉強してください。まだ10年有ります。
お礼
ありがとうございます。 WLF法でC1,C2も振って、なんとかしてあわせてみようと思います。 しかし、いま扱っているのはガラス転移点100℃くらいの樹脂(ABS+PC)です。DMA試験の測定温度はガラス転移点よりも低いです。カーブさえ繋がれば、基準温度が-20℃などガラス転移点を大きく下回っても大丈夫でしょうか。