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フェルミ分布関数の揺らぎはなぜkTなのか
- フェルミ分布関数の揺らぎ(幅)がなぜkT、あるいは2kTなのか理解できません。これは覚えることなのでしょうか?まさかそんなことは無いと思うので、理解の方法を教えていただけないでしょうか。
- コンピュータでグラフを書いた結果がそうだったと理解するのですか?
- 初歩的な質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
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横からですが、もうちょっと噛み砕いて(前の回答者様の最後の 一行を薄めて書くだけですが)。 まず、フェルミ分布関数の指揮が多分間違ってます。正しくは f(E) = 1/(1+e^((E-μ)/kT)) でしょう(参考URLとかを見てください)。 さて、本題。 とりあえず、E = μ±kT を代入してみましょう。 f(μ+ kT) = 1/(1+e) ~ 0.73 f(μ- kT) = 1/(1+e^(-1)) ~ 0.27 E >> μ では f(E) ~ 0, E << μ では f(E) ~ 1 ですから、 フェルミ分布関数 f(E) の値が大きく変化するのはだいたい E = μ±kT の範囲ということになりますね。(ちなみに、値を見ればわかるように ほぼ半値全幅に対応する(こっちはピークじゃありませんが)変化量に なっています) これが、「フェルミ分布関数の揺らぎはなぜkTなのか」の理由です。 <なぜ 3kT とか 0.5 kT とかじゃないのか?> 「その範囲内でフェルミ分布関数が大きく変化する」という定義からすれば、 べつにそれでもかまいません。しかし、前の回答者の方も仰っていたように、 これは定性的な目安です。それなら、桁が違う、といった変化が無い限りは 判りやすい数値にしておくのが良いでしょう。 特に理由もなく係数をつけるよりは、±kTということで 2 kT としておくの が便利だと思いませんか?
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- waamos
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単なる定性的な目安です。 温度が0の孤立系を加熱して、温度Tで平衡状態にするとします。 系の温度がTのとき、粒子の熱エネルギーは大雑把にいえばkTです。 加熱によりf = 1 (ε<μ) or 0 (ε>μ)で分布していた粒子に、 熱エネルギーkTが与えられる訳ですが、フェルミ分布の深い部分では、 kT だけエネルギーが高い部分に空きが無いので遷移できません。 よってkTを与えられて励起できる粒子は ε = μ- kT ~ ε = μの範囲に限られ、遷移後は ε = μ ~ ε = μ+ kT の範囲に移ります。 抜けた範囲と、移った範囲の両端を取ると 2kTです。 揺らぎを kT としている記述は、エネルギーの等分配則 (粒子の1自由度に分配されるエネルギーが 0.5kT) を念頭においているのでは無いでしょうか。 2倍も違って良いのかよ!と思われるかもしれませんが、 ケースバイケースです。 古典論で電子比熱を説明すると、異常に大きな値になります。 フェルミ分布の揺らぎ幅はこの説明に良くつかわれます。 この文脈では、0eV ~ フェルミエネルギーの幅に対して 揺らぎ幅がどれだけ大きいかが問題になりますが、 フェルミエネルギーは大体5eVぐらい、kT は300Kで20meVですので、 揺らぎが20mVが40meVになろうが、熱励起する電子の割合が 小さいという結論は変わらない訳です。 数字の上ではε = μ±kT は f = 1/(1+exp(±1))となるだけの点です。
お礼
大変丁寧な解答をしていただき、ありがとうございます。 いくつか分からない点がありましたが、 僕の勉強不足だろうと思います。 回答者様のおっしゃっていることがわかるように、 勉強に精進したいと思います。
- htms42
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ここで使っている考え方はフェルミ分布だけのものではありません。 指数関数で表されている分布すべてに当てはまるものです。 だいたいの目安として使われています。 二酸化炭素の基準振動は4つあります。 伸縮振動はν1=1388/cm(対称)、ν2=2349/cm(反対称)の2つです。 変角振動は2つありますが縮退しています。ν3=667/cmです。 これらの振動がどの程度励起しているのかを考える時にも使います。 分布はe^(-hν/kT)で表されます。 hν/kT>>1であれば励起していることを考える必要はないだろう、 hν/kT~1の付近を考えればいいだろう、ということです。 常温で考えるとT=300Kとして、ν~430/cmです。 667/cmは2倍弱ですから効いてきます。 伸縮振動は考える必要がありません。 (変角振動は赤外活性です。温室効果に効いてくるのはこの振動です。) 指数関数f(x)=e^(-x) の特徴です。 x>>1ではf(x)~0としていいだろうということです。 コンピュータのない時から使われている考え方です。 ボルツマンの時代にはコンピュータはありませんでした。フェルミの時代でもありませんでした。 べき級数展開の場合は x<<1という近似がよく使われます。 この場合、x^2<<x とするには10倍程度以上の違いを考えます。x<<0.1です。 指数関数の場合はxが3倍程度変われば十分です。収束が速いのです。 目安はx~1です。 f(0)=1 f(1)=0.36 f(3)=0.05 f(x)=e^(-x)の値の評価は x=1を目安にしてx<3の範囲で考える というので十分だろうということです。
お礼
ご回答いただきありがとうございます。 解説いただいたことが詳しすぎて、 結局何でフェルミ分布関数の揺らぎ幅が 図に示してあるように2kTなのか よく分かりませんでした。 ちなみに図を引用した本では フェルミ分布関数がf(ε)=e^{(ε-μ)/kT}とされています。
お礼
分かりやすい説明をしていただき、ありがとうございます。 とても参考になりました。