結論から言えば、漢文では「ぬ」「ね」とは読みません。
合理的な理由はとくにないだろうと思います。
ただ、日本人は漢文訓読の場合、「ぬ」「ね」を用いてこなかったという歴史があるということです。
では、「ぬ」「ね」と「ず」「ざる」「ざれ」にはどういう違いがあるかという点ですが、
そもそも日本語のある種の言葉には、和文調の言葉と漢文調の言葉の両方があったようです。
たとえば、使役の助動詞は、和文では「す・さす」が主流で、漢文では「しむ」しか用いません。
このような違いです。
打消の助動詞「ず」の活用表は、通常、
ず・ず・ず・ぬ・ね・○
ざら・ざり・○・ざる・ざれ・ざれ
と二行に整理されますが、
平安時代あたりにはあまり用いられなくなる古い言い方を加えると、
な・に・(ぬ)・ぬ・ね・(ね)という四段型――( )は私が勝手に埋めましたが用例はないかもしれません。
の和文調の助動詞と
ず・ず・ず・○・○・○という無変化型の漢文調(?)の助動詞にラ変動詞の「あり」が続いた
ざら・ざり・(ざり)・ざる・ざれ・ざれという補助活用を有する漢文調の助動詞の二語があったと考えればわかりやすくなります。
平安時代ぐらいになると、前者の、「な・に」がほとんど用いられなくなり、活用表のうち連体形と已然形しか存在しないという、いわば異常事態になったので、
平安時代を基準にした学校の古典文法ではこの二つの助動詞をひとつの語としてまとめてしまったのだろうと思われます。
なぜ漢文では「ぬ・ね」と読まないのかという理由の説明にはならないかもしれませんが、わたしはこのように理解しています。
お礼
よくわかりました。ありがとうございました。