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熱力学における準静的過程と可逆サイクルについて
- 熱力学における準静的過程と可逆サイクルについて、その間違いについて解説します。
- 任意のサイクルを準静的に完了すれば最も熱効率の良いサイクルであるという誤解があります。
- カルノーサイクルでもオットーサイクルでもディーゼルサイクルでもブレイトンサイクルでも、サイクルを準静的に完了すれば全て同じ熱効率となります。
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一言で言えば,熱源の数が違います. 最初に効率の定義を確認しておきましょう. 1サイクルでもらった熱量を Q2, 捨てた熱量を Q1 総仕事(外にする方を正と勘定)を W とするとき, 熱機関の効率ηは (1) η = W/Q2 で定義されます. エネルギー保存則によって (2) Q2 - Q1 = W ですから (3) η = 1 - Q2/Q1 と書くこともできます. ここまでは効率の定義で,最大とかいう話はまだ出てきません. さて,カルノーサイクルは2つの熱源の間で動作し, その効率ηは (4) η = (T2-T1)/T2 に等しいことが知られています. T2 は高温熱源の温度,T1 は低温熱源の温度. カルノーサイクルでは, 作業物質の温度が T2 から T1 に移る(あるいはその逆)ときには 断熱過程で移りますから, 上記の2つの熱源以外に熱源は要りません. で,カルノーの定理は 【ただ2つの熱源の間で動作する可逆機関】はすべて同じ効率をもち, その効率は(4)である, というものです.【】に注意. ところが,他のサイクルではそうは行きません. 他のサイクルには等圧変化過程や等積変化過程があります. これらの過程では必ず熱の出入りがあります. で,準静的変化(可逆変化)では, 熱の移動の時に温度差があってはいけませんから(☆1), 例えば等圧変化で温度が Ta から Tb まで変化したとすると, 熱をやりとりする相手の熱源は温度が Ta から Tb までの連続無限個の ものが必要になります. したがって,カルノーサイクル以外のものは 【ただ2つの熱源の間で動作する可逆機関】 ではないのです. カルノーサイクル以外のサイクルでは熱を授受する温度は 最高温熱源から最低温熱源まで分布しているわけですから, カルノーサイクルとは効率が違って当然でしょう. (4)は高温熱源の温度が高いほど,低温熱源の温度が低いほど, 効率がよいということを意味していますから, 熱源温度が連続的に T2 から T1 まで分布していたら 効率はカルノー効率(4)より小さくなることは容易に想像できます. 実際,クラウジウスの不等式を用いることによって, このことを示すことができます. (☆1) 本当に温度差がゼロでは熱が移動しませんから, 無限小だけ温度差があると思うべきでしょう. 温度差を小さくすることによって, 非可逆性の影響はいくらでも小さくできると考えられています. この意味で,可逆機関は理想極限ですね. ただし,これはオットーサイクルなどの効率がカルノー効率と違うこととは 別の話です. (★) 本文からおわかりと思いますが, 【ただ2つの熱源の間で動作する可逆機関】は 本質的にカルノー機関しかありません. したがって,カルノーの定理は, 効率が作業物質によらない(理想気体でも非理想気体でも同じ),というところが最も大事です. (★) 熱機関は1サイクル回って元の状態に戻るのですから, 束縛エネルギーなどため込んではいけません. エネルギー保存則(2)は常に成り立っています. hitokotonusi さんはエントロピー出入りの話と混同されているように思われます.
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- tareo
- ベストアンサー率58% (7/12)
基本的な熱力学はすべての変化は平衡状態を保ったまま行われることが前提だと思います。 >状態Aと状態Bが平衡であるということは, >ほかに何も変化を残さないままAとBで状態変化を繰り返している, >(すなわちAとBで可逆変化を繰り返している) >ことと同値だと思っております. 平衡というのはそれ以上何の変化も起こらない状態を言うのだと思うのですが。上記のような、二つの異なる状態の間で可逆変化を繰り返している状態というのは平衡な状態とは見なされないと思います。ゆえに、状態Aも状態Bも、この場合は平衡ではないと思われます。また、可逆変化というのはその過程に何らかの損失、例えば摩擦や断熱変化における熱漏れなどが発生しないような変化を言うのではないでしょうか?。ですから、可逆変化と平衡とは関係がないと思われます。 >状態Aから平衡を保ちながら微小に変化させた状態をBだと考え(←これ >は上記より可逆変化), >この微小な変化(可逆変化)を繰り返してサイクルを完了させると考えま >す. 仮に状態Aから状態Bに系の状態を平衡を保ったまま、変化させたとしても、その経路が常に可逆変化である保証はないと思います。その変化がどれだけ微小なものであっても、その経路上に不可逆過程が存在していた場合、それは何らかの損失を発生させますので、効率は悪くなります。この辺はhitokotonusiさんの説明通りです。 以上、よろしいでしょうか?。
補足
ご回答ありがとうございます.非常に嬉しいです. 平衡を保ったままの変化でそれが可逆変化にならない具体例を教えて頂けないでしょうか? また,工業上重要な次の変化 (1)等温変化 (2)定圧変化 (3)定溶変化 (4)断熱変化 のうちで,どんなに注意深く変化させたとしても(例えば準静的に変化させるetc...),可逆変化になり得ない変化というのはあるのでしょうか? もし上記4つの変化のうち全てが可逆変化になり得るのだとしたら, カルノーサイクル,オットーサイクル,ディーゼルサイクル,ブレイトンサイクル,は全て可逆変化になり得ると考えることが出来ると思うのですが,どうでしょうか?
- hitokotonusi
- ベストアンサー率52% (571/1086)
ひょっとすると間違ってるかもしれませんが、こんなところかと思います。 可逆サイクルの熱効率は、サイクルの種類によらずすべて等しく最大効率で η=W/Q1=1-Q2/Q1 (Q2:放熱 Q1:吸熱) が成り立つはずです。これは、可逆であればエネルギー保存則が成り立つのでW=Q1-Q2となるためです。 非可逆サイクルではどこかにエントロピー生成がありその分の束縛エネルギーδQが必要になるので保存則からQ2-Q1=W+δQ>Wとなるため、効率η'は η'=W/Q1<1-Q2/Q1 となり、最大効率ではなくなります。
お礼
ご回答ありがとうございました.
- tareo
- ベストアンサー率58% (7/12)
(1)ですが、平衡を保ったまま系の状態を変化させたら、何故それが可逆変化といえるのでしょうか?。
補足
ご回答ありがとうございます. 状態Aと状態Bが平衡であるということは, ほかに何も変化を残さないままAとBで状態変化を繰り返している, (すなわちAとBで可逆変化を繰り返している) ことと同値だと思っております. 状態Aから平衡を保ちながら微小に変化させた状態をBだと考え(←これは上記より可逆変化), この微小な変化(可逆変化)を繰り返してサイクルを完了させると考えます. この様に考えれば,平衡を保ったままサイクルを完了させればそれは可逆変化になると言える (可逆変化を繰り返して状態を変化させていけばトータルで可逆変化と言える). のだと思っておりますが,自信がないです、、、 この考え方が間違っているのでしょうか? ご指導お願いいたします. cf) ttp://homepage2.nifty.com/eman/thermo/irreversible.html
お礼
丁寧な回答ありがとうございました. 【ただ2つの熱源の間で動作する可逆機関】はすべて同じ効率をもち~ というところが理解できていないため混乱していたことが解りました. 今は正しく理解できていると思っております. 大変感謝しております.ありがとうございました.