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本のタイトルを教えてください。
食うことの昏がり 食べさせてもらうということほど、心を動かすものはない。感動という意味ではない。心がはげしく揺らいでしまうという意味でだ。 養ってくれるひとに、愛するひとに、看てくれるひとに、食べさせてもらう、あるいは最後の水の一雫で唇を湿してもらうというのは、それこそ腸に沁み入る想いがする。じぶんをほどいて、それこそ馬鹿みたいに口をあんぐりできる。あるいは、身を他者にゆだねきる、と言ってもいい。 (中略) 食を拒む あるうら悲しい話から ミルクの温度があまり高いか、あるいは低すぎるか、あるいは調合の具合が変えられている時、乳児は哺乳びんのミルクをのむことを拒むことがある。 ……発達初期の精神病理に関する多くの知見の教えることは、環境のごくわずかな昏い変動や、母親の態度の些細な冷たい変化が、すでに乳児に、彼を傷つける気分変調をおこさせ得るということであり、その最初の徴候は食物の拒絶ということである。乳児はもし彼が全く何もしたくない時には、あるいは愛情を失った時には、食べることへの関心もなくなることがある。……人間はわずかな感情の浮沈のために惑わされる。 その他に人間的な「吟味」のできないものとしては、老年性痴呆の患者などの「食べることしか楽しみのない」生活をあげることができる。また精神病院での食事時のもの悲しい光景は、ひごろはのろのろと動いている患者たちの恐ろしい速度の「早食い」である。また精神分裂病者や老年性精神病者における、食物に毒が盛られていると確信している被毒妄想は、人間学的には信頼というものの喪失のすさまじい表現に他ならない。(霜山徳爾『人間の限界』) -------------- 上記の文章が載っている本のタイトルを教えてください。 よろしくお願いします。
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- spring135
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人間の限界 (1975年) (岩波新書) 単行本でもあると思います。