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鳥インフルエンザと他のウイルス。

よく、鳥インフルエンザが変異したら強毒型に変わってパンデミックが起こるとかよくいわれますけど。 この人間に危機的な状態を起こすウイルスに変異する可能性って、 他のウイルスより高いんですか? 他のウイルスがその様に変化する可能性はないんですか? というか変異のメカニズムってそこまでわかっているんですか。

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noname#160718
noname#160718
回答No.2

 「鳥インフルエンザが変異したら強毒型に変わってパンデミックが起こる」というのは正確には違います。  正しくは、 「鳥インフルエンザが変異して強毒型に変われば高病原性鳥インフルエンザになる」 と、 「鳥インフルエンザが変異してヒト型になれば新型インフルエンザとなってパンデミックが起きる」 の2つの"変異"があり、それらは本来別物なのです。  現在は、「鳥インフルエンザが強毒性に変異して高病原性鳥インフルエンザになっており、それがさらにヒト型に変異してパンデミックが起きることが懸念されている」状況です。  詳しく解説します。  インフルエンザウイルスは元々カモなどの水禽類が自然宿主となっているウイルスです。HAが16、NAが9つの組み合わせて144の"亜型"のインフルエンザウイルスが存在し得るわけですが、カモ類からはその全てが見つかっています。(HAもNAも今後まだ増える可能性あり)  これを「鳥インフルエンザ」と言います。  鶏は鳥類なので、当然この鳥インフルエンザに感染するわけですが、鶏はたまたまこのウイルスに非常に感受性が強く、また鶏は「家畜」ですから野生ではあり得ないほど密集した状態で暮らしています。  なので鳥インフルエンザが鶏に感染すると、カモ類で増えるでもなく消えるでもなくゆるゆると増殖していたウイルスは、鶏ではケタがいくつ違うんだろう・・・というくらい、桁違いに増殖するわけです。  基本的に「変異」は単なる確率なので、これだけ桁違いに増殖すると、そのうち感染した宿主を全て殺してしまうような"狂い咲き"の変異を遂げたウイルスが出現してしまうわけです。これを「強毒型」とか「高病原型」と言います。  このウイルスが鶏で暴れ狂っているのが「高病原型鳥インフルエンザ」です。  さて、この「強毒型」の説明です。  ウイルスは生きた細胞の中に取り込まれなければ増殖することができない微生物なのですが、どんなウイルスでも細胞に取り込まれるためには、細胞の"ドア"を開ける"鍵"が必要です。ウイルスはその鍵を持っているから感染できるわけです。また、ヒトと鳥ではその"鍵穴"の形が違うため、鳥インフルエンザはヒトに感染できず、その逆もまた真なわけです。  インフルエンザウイルスは、その「鍵」に鞘が被っているような構造をしています。つまりその鞘が除去されないと細胞のドアを開けて感染することができません。  普通のインフルエンザ(鳥型ヒト型に限らず)は、その鞘の除去にトリプシンという酵素が必要です。この酵素は動物の体内にはなく、気管や腸管などに定着しているバクテリアしか持ちません。  なので普通のインフルエンザは気管や気管支、腸管にしか感染できないわけです。  ところが強毒型に変異したウイルスは、トリプシンがなくても鞘が除去されるような変異を遂げています。ですから、全身どの臓器にでも感染して増殖、つまりその臓器を冒すことができるようになるわけです。  これが「強毒型」です。  この強毒型は、16種類あるHA亜型の中でH5とH7の2つの亜型しか変異できないとされています。少なくともこれまでに出現した強毒型のウイルスは全てこの2つのどちらかです。  なので日本ではH5とH7の2亜型のウイルスはそれだけで「高病原性鳥インフルエンザ」と定義して防疫対象にしています。発見されたときは病原性が低くても、いつ強毒型になるか判りませんから。  なので「低病原性(弱毒型)の高病原性鳥インフルエンザ」などという、一見へんてこな言葉が存在するわけです。ちょうど今日、愛知県で出たのも弱毒型と考えられています。  ちなみにこの「鞘」と「鍵」はどちらもHA蛋白の構造です。  次に「ヒト型」の話を。  やはりHA蛋白なのですが、この鞘とは別に、鍵の構造がどのように変異すると「ヒトの細胞のドアに合う鍵」になるかが判っています。  そうなると、ヒトとヒトの間で流行してしまうウイルスになるので、これが「新型インフルエンザ」→「パンデミック」となります。  現在アジアでヒトに感染しているのは、「滅多なことではヒトの細胞の鍵穴には合わないのだけど、たまにこじ開けてしまう」状態です。もしくは、ヒト側の要因で鳥型のレセプター(鳥の細胞の鍵穴)を多く持っている人がいることが知られています。もちろんこのような人は鳥インフルエンザに感染しやすくなります。  どちらにしても、今のアジアの高病原性鳥インフルエンザは、「もう少しでヒト型になれる」鍵の形をしていることが判っています。  ちなみにH5N1は全てヒトに感染するのかというとそうではありません。  これまで日本で発生した宮崎や山口のウイルスは、同じH5N1ですがアジアのウイルスとは異なりヒトには非常に感染しにくい鍵の形であることが判っています。  これまでの知識をよ~く考えると判ると思いますが、「変異はランダムだから、カモの中で突然ヒト型のウイルスに変異することがあるのではないか?」という疑問が湧きませんか?  その答えは、「まずほとんど絶対にあり得ない」です。  なぜなら、カモあるいは鶏の体内で「ヒト型」に変異してしまったウイルスは、もはやカモあるいは鶏に感染することができません。それどころか生まれた細胞を出て隣の細胞に感染することすらできません。つまりその場で死に絶えるしかないわけです。  ここに豚という動物が出てきます。  豚はこれもたまたま、鳥型とヒト型の両方の「鍵穴」を持った動物です。  なので、1頭の豚に鳥インフルエンザとヒトのインフルエンザの両方が感染することが十分あり得るわけです。  すると、インフルエンザウイルスは豚の体内で、互いの遺伝子を交換することができます。  インフルエンザウイルスは、遺伝子を8つの小パーツに分けて持っています。こういうのを「分節ゲノム」と言います。  1つの細胞にヒト型鳥型両方のウイルスが侵入した場合、細胞内では両方のウイルスのそれぞれ8つの遺伝子が複製されるのですが、新しいウイルスを組み立てるとき、それらの遺伝子は基本的にバラバラに新しいウイルス粒子に組み込まれます。  つまり、まったく違う遺伝子を持った2つのインフルエンザウイルスが1つの細胞に感染した場合、256種類の遺伝子セットを持ったウイルスが誕生し得るわけです。要するに「生体内遺伝子組み替え」ですね。  こうやって「ヒト型の鍵」を持ちながらまったく新しいウイルスが出現するのが、「新型インフルエンザ」の主要な出現メカニズム、と言われてきました。少なくとも人類が前世紀に3回経験した新型インフルエンザ(スペイン風邪、アジア風邪、香港風邪)は全てこのパターンと考えられています。  それが現在、少々違う状況になっているのは、「現に今現在、高病原性鳥インフルエンザが直接ヒトに感染している」という点です。  つまりヒトを豚に置き換えれば、容易に新型インフルエンザが出現し得る状況が整ってしまっている、というのが現在の状況というわけです。  さらに今のアジアの高病原性鳥インフルエンザはヒト型に非常に近い鍵を持っているため、「生体内遺伝子組み換え」を経なくてもそのまま単独でヒト型に変異することができそうだ、という点も異なります。  鳥に感染している状態で「ヒト型」に変異しても、そのウイルスは即座に死滅してしまうでしょうが、ヒトに感染した状態でヒト型に変異すれば、そこから即座に大流行が始まってしまうわけです。  というのがインフルエンザの変異、流行のメカニズムです。  他のウイルスには他のメカニズムがあり、よく解明されているものもあればさっぱり未解明のものもあります。  「変異」そのものは基本的に単なる偶然、ランダムなのですが(細かい個々の話をすると多少違うこともあるが)、どこがどう変異すればどうなるのか?というあたりがそれぞれのウイルスで異なる、ということです。あとはその個々のウイルスの増殖様式なり構造なりによって、またメカニズムは異なってきますから。  「生体内遺伝子組み換え」のことを「遺伝子再集合」とか「リアソータント」と言いますが、これは特にインフルエンザ特有の現象というわけではないのですが、インフルエンザに特徴的な現象です。

lionart
質問者

お礼

回答ありがとうございます。 鶏は密度が高いから、ほかのウイルスに比べれば変異を起こしやすいということですね。 あまり心配はしていませんが、疑問がひとつ解けました。

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回答No.1

可能性は高いです。なぜなら、このトリインフルエンザウイルスは現在の形でもヒトに感染しうる能力があるからです(効率は低いですが)。ほんの少しの変異が加わるだけでヒトーヒトに感染しうる新ウイルスが生まれることが心配されています。 鳥のかかるインフルエンザにはいくつものタイプがあります。そのうちの一部はヒトにも感染しうることは既に知られています。またインフルエンザの遺伝子は非常に変異をおこしやすいことも分かっています。 もしもヒトにうつることの出来る(しかしそれほど効率がよくない)鳥インフルエンザウイルスに変異が生じて、ヒトに感染しやすくなったらどうなるか。それはヒトーヒト間での感染サイクルを引き起こす新しいインフルエンザウイルスになります。このウイルスに免疫をもっている人間はほとんどいないので、世界中の人たちの間に爆発的に感染が広まって、いわゆるパンデミックを引き起こします。20世紀初頭にあったスペイン風邪(インフルエンザ)の大流行はこのようなものだったと考えられています。 パンデミック(大流行)は数十年に一度おこると考えられています。前回起きたのは1968年のことなので、次いつ起きてもおかしくないと考えられています。現在トリの世界で猛威を振るっているのがH5N1型といわれるインフルエンザです。これはヒトにかかりうるインフルエンザです(実際感染していたトリと密接に接していた人にトリインフルエンザが感染するケースが散発しています)。おそろしいのは、このH5N1型ウイルスは非常に毒性が高いことです。トリの場合でもヒトの場合でも非常に致死率が高いのです。もしもこのウイルスに変異が入りヒトでも効率よく感染できるようになった場合、ヒト側に免疫がないことと相まって、非常に多くの人に感染、そして死に至らしめることが懸念されます。

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