ポアンカレ予想
10月22日のテレビ番組で、このポアンカレ予想の問題を見ました。地球からロケットに乗り、そのロケットに長い長いロープを付けて、宇宙のありとあらゆる所を旅行する設定です。そして、旅行が終わり地球に辿り着いた時、手元にはロープの始まりと終わりの両端があります。そのロープの両端を持ったまま離さないで、ロープ全体を手元に引き寄せます。そして、ロープが全て手元に引き寄せられた時、この宇宙はおおむね丸いと言えるか、という問題でした。宇宙が仮にドーナッツ形であれば、ロープは穴に引っかかって引き寄せられません。
トポロジーでは、形は自由に伸ばしたり縮めたり出来、その様に加工して同じ形になれば、同じ形と考えます。球体・円錐・三角錐・円柱・立方体も全て同じ形と考え、この問題ではおおむね丸い形であると定義します。球体をいくら伸ばしたり縮めたりしても、穴が無いので、ドーナッツ形にはなりません。この問題は、球体以外の形で、内部にロープをありとあらゆるコースを辿って張り巡らせ、その両端を離さずに引っ張って全てを回収できる形があるかということを言っています。
これは、物の形をテーマにしています。物の形には有限のパターンがあるか、それとも無限にパターンがあるのかが焦点になります。パターンが有限であれば、一つ一つのパターンについて、ロープが手元に回収出来るか調べれば、球体以外に回収できる形が有るか否か証明できます。物の形には、無限のパターンがあるとしたら、証明は不可能となります。
物には色々な形が有ります。ドーナッツ形も在れば、穴の2つ3つのドーナッツ形や、ドーナッツの途中に1つの結び目のある形、または2つ3つの結び目のある形とさまざまな形があります。それらの形はいくら伸ばしたり縮めたりしても、球体にはなりませんので、おおむね丸い形ではないと言えます。そうして見ると、形のパターンは無限とも思えます。
そこで、この問題では、ロケットに付けたロープを長い円柱形と考えてみましょう。ドーナッツ形は、ロープ(=円柱形)の両端をくっ付けた形です。ドーナッツの途中に1つの結び目のある形は、ロープで1つの結び目を作り、両端をくっ付けた形です。円柱形のロープをいろんな風にぐるぐると絡ませた上で、その両端をくっ付けることで、異なる形を作ることが出来ます。(ロープの途中をくっ付けることは、トポロジーでは両端をくっ付けること同じです。くっ付けたところから先を、縮めて無くしてしまえばいいのです。複数個所をくっ付けて穴を複数にすることは、穴1つの形の集まりと考えることが出来ます。)
そのロープの絡ませ方で異なる形になり、その絡ませ方は無限です。しかし、ロープの両端をくっ付けない限り、そのロープは複雑に曲がりくねってはいますが円柱形であり、伸ばしたり縮めたりすれば、結局球体になります。ロープの両端をくっ付けて初めて、球体とは別の形になるのです。
円柱のロープの中心に、一本の赤い紐があるとします。円柱のロープの両端をくっ付けてしまうと、途中でどの様にぐるぐるとロープを絡ませても、中心にある赤い紐の両端を離さずには、赤い紐全てを引き寄せることは出来ません。ロープの両端をくっ付けない時のみ(=球体である時のみ)、赤い紐の両端を離さずに引っ張って、赤い紐全てを手元に引き寄せられます。従って、赤い紐を全て手繰り寄せられた時は、ロープの両端はくっ付けられておらず、ロープは複雑に入り組んだ円柱形であり、おおむね丸い形であると言えます。
この問題では、ロケットに取り付けたロープそのものが、宇宙の形を表現しているのです。いろんな形を作るには、無限にあるコースの1つをロープ(=円柱形)が辿り、両端をくっ付けることによって初めて、球体とは異なる形になり、辿るコースの違いによってそれぞれ異なる形になると、ポアンカレは言っているのです。
問題の中に答えが隠されているのです。ポアンカレが色んな形を頭の中で作ろうとして、丸い形(=球体)を色々引き伸ばしてみたが、一部をくっ付けない限り、いくら引き伸ばし縮めても元の丸い形に還元されてしまう。それがまさに、この問題におけるロープのイメージに、辿り着いたのではないでしょうか。
ちなみにロープ(=円柱形)の両端をくっつけるには両端の外面と外面、内面と内面を普通にくっ付ける方法と、両端の外面と内面、内面と外面をくっ付ける方法の2通りがあります。前者は単純に分かります。後者はロープは内側と外側が連続した輪になり、ロケットが空間の外側に出て、外側で輪の穴を通り抜けることになるのでやはり穴に引っかかります。これで答えになっているでしょうか。
お礼
そんなことを考えたきっかけは何でしょうか