こんにちは。
「学習」といいますのは「生後環境において入力される条件に基づいて発生する神経系の可塑的変化」と定義されます。心理学でも現在はこのように扱われています。そして、「条件反射」といいますのはこの「学習(可塑的変化)の結果」です。ですから、生後環境ではなく、生まれるから遺伝情報として備わっている神経接続は条件反射とは異なるため、こちらは「無条件反射」と呼ばれることになったわけですよね。
このように、「条件反射」といいますのは「学習の結果」です。ですから、これまで心理学で行ってきた様々な学習の分類とは一切関係なく、我々動物の「学習行動」といいますのは、構造的にその全てが条件反射に含まれます。
心理学では、学習行動全般に対して条件反射という言葉を直接はあまり使いません。ですが、生理学的には「無条件反射(本能行動)」以外はみな全て「生後学習に基づく条件反射」です。
例えば、パブロフの実験では生後環境における条件付けにより、生まれたときには持っていなかった神経回路の「過疎的結合」がイヌの脳内に作られました。「食べ物の好き嫌い」や「異性のタイプ」といった我々の「個人の好み」などは、これは大脳辺縁系の情動反応として獲得される条件反射です。果たして、心理学ではその目的や結果に基づいて単に「学習の過程」を分類しているだけです。
通常「学習」には上記のような単純な条件付けよりも、どちらかといいますと我々が勉強をして知識を身に付けるといった意味合いが濃いですが、実はこれも大脳皮質の神経接続に作られる学習記憶という過疎的変化であり、神経活動としてはこちらも条件付け・訓練と全く同じものです。
ただ、「中継中枢(反射中枢)」が大脳皮質の高次領域である場合は「反射・反応」という表現そのものが不適切になりますので、一般的にはこのような解釈はあまり用いません。ですが、厳密にはそれは全て条件反射であり、パブロフはこのような大脳皮質を用いた我々人間の言語思考といったものを「第二信号系条件反射」として扱っています。
従いまして、パブロフの分類を用いますと、
「本能行動(無意識行動):無条件反射」
「学習行動(無意識行動):第一信号系条件反射」
「学習行動(意識行動):第二信号系条件反射」
ということになります。
但し、パブロフの段階では第一信号系と第二信号系の生理学的分類というものがまだきちんと解明されていませんでした。では、第二信号系を人間の高次な精神活動として捉えている点では、それは従来の心理学的手法に基づく分類方法です。ならば、古典心理学がパブロフの学説を扱う限り、学習行動と条件反射を別物とすることはどうやってもできなかったはずです。