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モンテーニュの「エセー」
こんにちは。 ある本にモンテーニュの「エセー」の中の一文が 2,3個、紹介されていて、結構面白そうな本だ なと思ったのですが、哲学とかを特に学んでるわけ でもない一般の学生にとって、難しい本ですか? 読んでみるには購入が必要ですが、立ち読みでは 難しいかどうかなんて判断できませんし、あまりに 難しい本は挫折しがちな性格なので…
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質問者が選んだベストアンサー
この本は哲学に興味がある方にとっても、また、ない方にとっても、共に大変読み易い本です。私は何方にも、この本を読むことを薦めています。ただし読み方にコツが在ります。先ず、解説を読まずにいきなり本人が書いた部分を読むべきです。この本はそもそもエセーすなわち随筆ですから、各章が一見バラバラな内容で、超崇高な題材から、超下ねたまで、人間のあらゆる行為をまな板にあげて論じていますので、本を順番通りに読む必要が在りません。面白そうな見出しから自分で勝手に順番をつけて、読んだ所に印を付けながら読み進んで行けば良いのです。 どんな名著にも、読む時期と言うものが在ります。質問者さんは既に、この本の幾つかの文を読んで「結構面白そうな本だなと思った」のですから、質問者さんにとっては機が熟しているのだと思います。この本を是非楽しんで下さい。 この本は、一見どんなに優れた説得力のある論理に対しても、その反対の論理にもまた説得力のある論理が在ることを、一つ一つ具体的に示してくれると言う意味で、懐疑論の権化とも言える本です。事実、西洋哲学史のなかで、この本は懐疑論を究極まで押し進めた本として評価されています。モンテーニュ自身、懐疑論を徹底的に押し進めると、結局あらゆる物には両面が在るので、我々はその是非を決めることができないという、所謂「思考の停止」以外にないという意見に到達しています。 この思考の停止を何とか打破しようとして、何とか懐疑論を生産的に使えないものと苦しんだ末、デカルトが「我思う故に我あり」と言う形で「生産的懐疑論」を構築したのです。ですから、デカルトの仕事はこの本の回答としてなされたと言う側面もあります。将来デカルトに付いて理解したいと考えるようになった方にも、この本は必読の書だと思っております。 私は自然科学者ですが、この本を読んで、どんなに理屈の通った理論でも、その反対が正しいことも在り得ると言うことを教わりました。そのことは、自分の研究で、独りよがりする危険を教えてくれました。その結果、私は自分がどんなに自信を持っている意見を述べるときにでも、それを覆す意見も同時に考えながら述べていると言う習慣を身につけることができるようになりました。 また、この本に出てくる面白い話の題材が、多くの場合ギリシャやローマの古典から採られているので、どうしてもその元の出典を読みたくなってしまいます。ギリシャやローマの古典のどの本を読んだら良いのかを教えてくれると言う意味でも、それらの古典の大変良い入門書です。 この本は分厚い本ですので、しばしば抜粋のダイジェスト版が在りますが、そんな一部だけを読むのではなく、最終的には全部を読むべきです。大変面白いので、本の厚さが気にならず一気に読めてしまうことを保証致します。また全てを読んでおけば、その本の専門家も含めて誰かとその本に付いて語り合うときに、「私の記憶では、モンテーニュはそんなことを書いてはいなかった」と自信を持って言えるようになります。この自信は、貴方が生きて行く上の自信にも繋がり、貴方にとって貴重な財産になるはずです。この本を読み切ったと言うだけで、貴方は思索をする者としてある高みに登った人間になって居りますので、その高みに登る努力をすることをお薦めします。岩波文庫で読めば、安いし運び易いので便利だと思います。
お礼
ものすごく丁寧な回答ありがとうございました 本当に参考になりました。 確かに分厚い本みたいですね。楽しく読んでみたいと思います。 モンテーニュからパスカルやデカルトなどに進めたら面白そう ですね。情報たくさんのとても嬉しい回答でした どうも本当にありがとうございます。