主要事実とは、要件事実に該当する「具体的事実」です。
すなわち、訴訟物たる「所有権に基づく返還請求権としての土地明渡請求権」は、(1)原告所有、(2)被告占有という「要件事実」が認められた場合に、これが認容されることになります。
「所有」とは、法的概念ですから、これに該当する「具体的事実」を主張しなければなりません。これが、「主要事実」です。
そして、物の所有権を取得するには、何らかの法的原因が必要です。たとえば、前所有者から売買により譲り受けたとか、原始取得したとか、時効取得したとかです。これらは、事実レベルの問題です。
したがって、「要件事実(1)」に該当する「具体的事実」すなわち「主要事実」としては、「原告が前所有者から係争土地を買い受けた事実」を主張すべきことになります。
もっとも、ここでいう「前所有者」の「所有」も、同様に法的概念ですから、「前所有者が、前々所有者から所有権を取得したこと」を証明しなければなりません。さらに、「前々所有者は、前々々所有者から・・・」と、原始取得の事実に行き当たるまで延々と証明する必要があります。
しかし、これは非現実的であり、かつ、「これは誰それの物である」という概念は一般人においても観念し得るものなので、「所有」に関しては、いわゆる「権利自白」を認めるのが実務であり、通説です。
したがって、被告が、(1)について争わない限り、請求原因事実としては、「原告は、本件土地の所有者である。被告は、本件土地を占有している」とだけ記載すれば足ります。
そして、被告が(1)について争う場合は、順次時系列を遡っていって、原告の現在の所有を基礎づける「主要事実」を主張・証明すべきこととなります。
すなわち、いったん生じた権利は、変更・消滅等の事情がない限り、現在も存続しているものと推定されるので、まず、「原告は、XX年XX月XX日、本件土地を所有していた。被告は、本件土地を占有している」となります。
被告がこれについても争うときは、さらに遡って、「原告は、XX年XX月XX日、本件土地を甲より買い受けた。被告は、本件土地を占有している」となります。被告が、甲の「もと所有」についても争うときは、さらに遡っていきます。
したがって、「原告が当該土地を買い受けたという事実は主要事実」です。売買契約があれば、法律上、所有権が買主に移転するからです。
間接事実とは、「主要事実の存在を推認させる事実」です。たとえば、「土地の売買」という主要事実であれば、その売買があったとされる時期に買主から売主の銀行口座に多額の振込があったとか、原告が係争土地上に自宅を建てる契約を結んだとか、そういう事実です。
補足
私は「所有している」ということ自体が主要事実なのだと勘違いしていました(>_<)本当にありがとうございます☆ もう一つ質問させていただいてもよろしいでしょうか・・・?? 主要事実が「原告が前所有者から係争土地を買い受けた事実」ということであれば、弁論主義によって、原告は必ずこれを主張しなければならないということになるのでしょうか?被告が権利自白するか争うかのどちらかに必ずなるからそれに対応するだけで良く特に自ら主張しなくても良いということでしょうか? まとまりのない質問でごめんなさい(>_<)