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人工呼吸器
5年目医師です。人工呼吸器の従量式と従圧式の使い分けがいまいち分かりません。一般的な話と、追加でLTV1000に特化した使い分けがあれば、ぜひ教えてくださいませ。
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- yamahaseca
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蛇足です。。。。。 従量式換気における「患者の自発呼吸と設定された吸気フローのミスマッチ」の問題は、大分以前から言われていたようです。ベアー社はベア-5という昔の機種で既に「フローサプリメンテーション」という機能で「気道内圧がPEEP以下にならない様に調節する」機能を採用しており、それは今のバイアシスにも「VAPS/プレッシャーオーギュメント」として継続搭載されておりますが、これらはどうしてもその作動が機械的かつ不自然で、「無いよりはマシ」といった感じがします。 一方、制御はPCVのままで、設定した一回換気量になるように気道内圧を増減するPRVCというモードがサーボ300に採用され、それ以降同様のモードが各社各機種に搭載されておりますが、モード切り替えであえてこのモードを選択してまで使用するのが面倒なためか(?)、あまり普及しておりません。しかし、ドレーゲル社のオートフローという機能は、メーカー自ら「付加機能であり換気モードではない」と公表しているにもかかわらず(しかも、実際に画面の表示は従量式換気のモードのまま)、実際にはこの機能をONにすると制御が従量式換気から従圧式換気(PRVC類似)に変わってしまうというシロモノでして、その意味では「従量式換気のつもりで実は従圧式で換気をしている」という先生は結構いらっしゃるのかもしれません。 いずれ、先日発売されたハミルトン社のG5も、デフォルトのモードが従圧式換気ベースのASVですし、「一回換気量を設定する」という意味での従量式換気はこれからも利用されてゆくかも知れませんが、「吸気フローを一定で吸気する」スタイルの従量式換気は徐々に使用されなくなって行くのではないかと、個人的には感じております。 以上、蛇足でした。
- yamahaseca
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LTV1000の特徴は、何と言ってもそのコンパクトさでしょう。しかも、タービン内蔵で、その制御も(同じデザイナーの)Tバードゆずりのユニークさ。さらに内蔵バッテリーで短時間なら換気が可能(外部バッテリーだと更に長時間の使用が可能)という素晴らしさ!しかし、それらの美点と引き換えに、いくつか使いづらい点があるのもまた事実です。 まず、データ表示などのグラフィック機能が貧弱。バーグラフの気道内圧と、一行だけ表示させるLEDディスプレイのみ。まあ、でもこれらに関しては別売りの外部ディスプレイの使用でかなり改善されるものの、そうすると今度はコンパクトさが損なわれてしまいます。さらに、呼気弁を本体から外して蛇管の終末に付けるようなタイプになってますので、PEEPの設定もやりづらく、呼気の制御も細かいことが出来ません。そして、操作ボタンやダイヤルも、押しづらく回しづらく、しかも裏モード設定もあったりして、決して操作しやすいものではありません。小型化のためにタービンの口径を小さくしたせいで回転数が増大し、Tバードよりも高い音質の駆動音が結構耳に付きます。 それら欠点のうち、PCSIMVを行うのに最もやりづらい点はフロータイムカーブが確認できない(本体のみでは)という点だと思います。PCVでは、「その気道内圧で、どのように吸気が入っているか」が大切になります。例えば一回換気量を増やしたいとき。吸気と呼気の状態を見ながら「設定気道内圧を上げるか、吸気時間を増やすか」という選択をするわけですが(吸気終末ですでに吸気フローがゼロになっているのであれば、それ以上吸気時間を増やしても意味が無いですし~その場合は気道内圧の設定を上げなくてはいけない~、呼気のフローがゼロになって程なく次の吸気が始まっているようであれば、それ以上吸気時間を増やすのは危険ということになります~オートピープが増える危険性があります~)、フロータイムカーブが無いとそのような判断が難しい部分があります。まあ、とはいえ一般的な成人の患者さんに一般的に使用する場合(たとえば、PIP18、PEEP5、f10、PS5、吸気時間1.2秒、とか)、それで換気量がリーズナブルであればそう大きな問題はないと思いますが、使い込もうとした時にはやりづらい点が多々出て来てしまうでしょう。しかし、機械の限界はいたしかたありませんし、少なくともLTV1000は価格とコンパクトさの割には性能が比較的高い機種だと思いますので、がんばって使いこなしてあげてください。 以上、先ずはご参考まで。
- yamahaseca
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人工呼吸の話は、詳しく始めるとそれだけで本が一冊書けてしまいますし、使い手によっていろいろな考え方があると思いますので、あくまで個人的な意見をサラッと述べるだけにとどめます。 さて、大昔。人工呼吸器の性能が悪く、他方良い鎮静剤も使えなかった時代には、患者の自発呼吸を抑制して無理矢理人工呼吸を行うということも良く行われておりました。しかし、現在の人工呼吸の主流は、「(一部の神経筋疾患の様に自発呼吸が無い場合は別ですが)自発呼吸を可能な限り温存する」方法だと思います。その際、患者の呼吸中枢に問題が無ければPSV(これについては、「正しくはCPAP+PSと呼ぶべきで、PSVという呼び名は旧シーメンスの悪い影響だ」とおっしゃる先生も居られますが)やPAV、(A)TCなどでおおむね問題なく換気ができるのでしょうが、呼吸中枢が不安定でいくらかの強制換気が必要な場合、質問者様のおっしゃる「従量式か従圧式か」という問題点が出てきます。 従量式換気は、決められた一回換気量を、決められた時間で(あるいは、決められた吸気流速で)決められた回数送気する方法です。これは、患者に自発呼吸が無い場合には大きな問題はおこりませんが、患者の自発呼吸と同調(SIMVなど)して送気しようとした場合、 (1)吸気流速が決められている(患者が早く息を吸おうとしても吸えない) (2)一回換気量が決められている(患者が深呼吸をしようとしてもできない) という問題点が起こりえます。 その点、従圧式換気は、呼吸回数の他は吸気時間と吸気圧を規定しているだけですので、患者は好きな吸気流速で好きな量だけ吸気が出来ます。その点で、従量式より患者の自発呼吸との同調性が良いといえ、私も含めた人工呼吸の専門家は一般にこちらをより好む傾向があると思います(実は、BIPAP類似の換気モードだと、吸気終末との同調性も改善されますので、それが出来る人工呼吸器ではそのモードがよく使われております)。 LTVについては、今ちょっと時間がございませんので、後ほどあらためて回答させていただきます。
お礼
業務多忙の中ご丁寧に分かりやすくご説明いただきありがとうございました。実は、SIMVで管理中の患者さんで概ね自発呼吸で換気できていた方がいらっしゃいました。ほぼCPAPでよさげながらもCPAPだと時々自発の弱いときがあり、SIMVとなっていました。私自身は従圧式を考えていたのですが、指導医の先生や同僚は共に『圧損傷のリスクがない患者さんは基本的に従量式』を選択されていました。ご回答頂いたご説明の中で、一回換気量さえ確保できていれば従圧式の方がより生理的であると理解できました。ありがとうございました。