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実験的にDOSの形を知るためにはどうしたら良いですか?

よく、STMなどで物質の状態密度(DOS)の図が書いてありますが これを実験的に知るためにはどうしたら良いのでしょうか?単純にSTMで電位を変えていってそのときの電流値の変化をみれば良いのでしょうか? それだと フェルミ面以下では測定不可能 表面のDOSしか分からない といった意味からあまり適当ではないように思います、 もっと良い方法がありましたら教えて下さい。

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  • inara1
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回答No.1

2電源オペアンプの回答者です。 光電子分光法(こうでんしぶんこうほう)という手法があります[1]。 これは、光電効果を使って、フェルミ準位より深いエネルギー位置にある電子を真空準位より大きなところ(つまり物質外部)に叩き出す(励起する)ものです。叩き出された電子(光電子)の運動エネルギー分布を、電子アナライザで分析すれば、それがフェルミ準位より深いエネルギー位置にある電子の状態密度分布になります。照射する光のエネルギーが大きいほど深い準位の状態密度が分かります。照射する光として遠紫外線を使ったものをUPS(Ultraviolet Photoemission Spectroscopy)、特性X線を使ったものをXPS(X-ray Photoemission Spectroscopy)といいます。 照射する光(電磁波)のエネルギーを hν[eV] 、電子の結合エネルギー(フェルミ準位からのエネルギー差)を Eb [eV] としたとき、叩き出された電子(光電子)のエネルギー Ek [eV] は    Ek = hν - φ - Eb で表わされます。φは物質の仕事関数 [eV] で、これはフェルミ準位から真空準位までのエネルギー差に相当します。光電子が外に出てくるには、Ek > 0 でなければなりません。φは普通、数eVの大きさなので、hν = 10eV (波長123nmの遠紫外線)なら、価電子帯付近の状態密度が得られます。hν = 1000eV (波長1.23nmのX線)なら、内殻準位の状態密度まで測定できます。 資料 [2] はSiの価電子帯付近のDOSスペクトルの計算値と測定結果(光電子分光法)を比較したものです。横軸はフェルミ準位を基準(0)とした結合エネルギー(Binding Energy)です(単位は eV)。縦軸は電子密度(電子数)です。両者は非常によく一致していることが分かります。結合エネルギーが正の伝導帯側の状態密度は計算値と測定結果で大きく異なりますが、これは光電子分光法は「電子で占有された状態密度」しか測定できないからです(叩き上げる電子がないと測定できない)。半導体の伝導帯には状態密度はあっても、そこに励起されている電子が非常に少ないので、フェルミ準位より上(高エネルギー側)の状態密度は光電子分光法では測定できませんが、フェルミ準位より上の状態密度を測定する手段もあります。逆光電子分光法がそれです[3]。 Eb は原子に固有のエネルギーを持つので、光電子分光法の内殻準位のスペクトルから、その物質にどんな原子がどのような割合で含まれているのかを知ることもできます。化学の世界では、物質同定に使うという意味でESCA(Electron Spectroscopy for Chamical Anallysis、化学分析のための電子分光)と呼ばれることがあります。和歌山の毒入りカレー事件で、カレーから砒素を検出した手法が光電子分光法です(SPRING8ではシンクロトロン放射光を分光した光を光源として使っています)。私は光電子分光法を使って元素分析したことがあります。 [1] 光電子分光法 http://lucid.msl.titech.ac.jp/~www/facilities/NewPES.html [2] SiのDOSスペクトルの計算と実験の比較(pptファイル29ページ) http://home.sato-gallery.com/education/kouza/KesshoSchool2002.ppt [3] 逆光電子分光法: [1] の下のほう

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