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遺棄における作為と不作為

私は最近まで遺棄罪が不作為によるものだと、つまり217条、218条が真正不作為犯だと思っていたのですが、よくよく調べてみると、218条後段だけが真正不作為犯(不保護罪)で217条や218条前段の遺棄には作為犯(他の場所へ移す)と不作為犯(置き去り)の二種類があることがわかりました。そこで質問です。作為による遺棄と不作為による遺棄の言葉の違いがよくわかりません。たとえば、わが子を遠隔地に連れて行ってのこしてくるというのは、一般的には置き去りと世の人は呼ぶと思うのですが、刑法的には作為による遺棄と呼ばれるのではないでしょうか。

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  • 17891917
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回答No.3

問 不真正不作為犯としての保護責任者遺棄罪が成立するならば、その場合も不真正不作為犯に独特の問題、つまり作為との同価値性の問題等があるのではないかと思うのですが、あまりそのような議論はきいたきいたことがありません。よく聞くのは、ひき逃げにおける保護責任者遺棄罪と不作為による殺人罪の問題です。しかし、その場合、殺人罪のほうの成立の問題ばかりが提起されて、保護責任者遺棄罪におけるそういった議論がされないのはなぜなのでしょうか。 答 ご質問のとおり,殺人であっても保護責任者遺棄罪であっても,不真正不作為犯が問題となります。具体的には,先行行為に基づく条理上の作為義務の問題です。  「保護責任者遺棄罪におけるそういった議論がされ」ていないのか分かりかねますが,ひき逃げ事案では,たとえば次のように「分類」できるでしょう。 1 行為者が人を轢いたことに気づいたが,被害者を放置し逃げた場合 保護責任者遺棄罪の保護法益は,生命及び身体の安全であるところ,行為者には,先行行為に基づく条理上の保護義務があるが,放置したのが交通量の多い場所であるなど,その放置が類型的に生命に危険を生じさせる程度に達しない場合には,同罪の実行行為としての不作為はなく,保護責任者遺棄罪は成立しない。(道路交通法の救護義務違反等が成立するにとどまる。) 2 被害者を保護するためにいったん車に乗せたが,発覚を恐れ,途中,交通量や人通りの多い場所で被害者を降ろした場合  いったんは救護を開始し被害者を事故の支配領域内に置いたのだから,被害者の生命への危険を支配しうる地位,すなわち不作為の殺人罪および保護責任者遺棄罪の作為義務が発生している。そして,交通量や人通りの多い場所で降ろしているので,救命可能性があり,不作為の殺人罪の実行行為とはいえず,保護責任者遺棄罪が成立する。 3 被害者を保護するためにいったん車に乗せたが,発覚を考えると怖くなり,ちょうど,人気のない山中にさしかかったので,死んでもかまわないと思って被害者を降ろした場合  いったんは救護を開始し被害者を事故の支配領域内に置いたのだから,被害者の生命への危険を支配しうる地位,すなわち不作為の殺人罪および保護責任者遺棄罪の作為義務が発生している。そして,救命可能性のない場所で,死んでもかまわないと思って降ろしているので,不作為の殺人罪の実行行為が認められ,同罪が成立する。

その他の回答 (2)

  • 17891917
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回答No.2

問1 218条前段に不作為による遺棄も含まれていると通説が解するならばその場合の保護責任者遺棄罪は不真正不作為犯となるのですか。 答 不真正不作為犯とは,構成要件的行為が作為の形式で定められている犯罪を不作為によって実現することをいい(『有斐閣法律用語辞典第3版』),行為者に作為義務があることを前提としています。  遺棄罪についての通説は,218条前半の保護義務と作為義務とを同視しているといわれます。ということは,保護義務違反に作為義務違反が含まれ,おっしゃるとおり,不真正不作為犯としての保護責任者遺棄罪が成立します。 問2 また、218条後段の不保護罪と殺人罪の区別は、例えば嬰児の傍にはいるがミルク等をあげずに育児放棄をした場合、殺意の有無で区別するのですか。 答 犯罪は行為であり,行為は客観的要素と主観的要素とからなります。  そこで,不保護致死罪(218条後半,219条)と殺人罪(199条)とは,まず,その保護放棄の態様が,どちらにあたるかで区別されます。  保護の放棄が,死につながるような態様のものである場合,次に殺意(殺人の故意)の有無が検討されます。  たとえば重度でない成人の病人の場合,殺すつもりで放置されても,自らの力で栄養を採る等生存に必要な行為をすることができる以上,殺人の実行行為とまではいえないでしょう。これに対し,嬰児の場合,放置されれば自らの力では生存に必要な行為をすることができないのだから,長時間にわたり栄養を与えないことは即殺人罪の実行行為にあたり,また,主観的にも少なくとも未必の故意が認められ,殺人罪が成立するでしょう。  

majestic7
質問者

お礼

なるほど、とてもわかりやすくありがとうございます。 もうひとつ質問させてください。 不真正不作為犯としての保護責任者遺棄罪が成立するならば、その場合も不真正不作為犯に独特の問題、つまり作為との同価値性の問題等があるのではないかと思うのですが、あまりそのような議論はきいたきいたことがありません。よく聞くのは、ひき逃げにおける保護責任者遺棄罪と不作為による殺人罪の問題です。しかし、その場合、殺人罪のほうの成立の問題ばかりが提起されて、保護責任者遺棄罪におけるそういった議論がされないのはなぜなのでしょうか。

  • 17891917
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回答No.1

 通説は,217条の「遺棄」については,要保護者を場所的に移転する「移置」(作為による遺棄)のみが含まれ,218条の「遺棄」については「移置」のみならず,場所的移転を伴わない「置去り」(不作為による遺棄)も含むとしています。  質問の事案は,わざわざ遠隔地に連れて行って残してきたというのであれば,「移置」になります。 (ただし,たとえば,ドライブしていた男女が車内でけんかして,男が女を車から追い出し,降雪中の山中に残してきた場合は,「移置」ではなく「置去り」になります。)

majestic7
質問者

お礼

なるほど。では、218条前段に不作為による遺棄も含まれていると通説が解するならばその場合の保護責任者遺棄罪は不真正不作為犯となるのですか。 また、218条後段の不保護罪と殺人罪の区別は、例えば嬰児の傍にはいるがミルク等をあげずに育児放棄をした場合、殺意の有無で区別するのですか。

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