二次方程式
ax^2+bx+c=0
の解の公式
x={-b±√(b^2-4ac)}/2a
は、中学校の数学の授業で習ったことと思います。この公式は、非常に古くから知られていて、紀元前21~16世紀のバビロニアの粘土版には、二次方程式の解法に関する記述を見ることができます。三次方程式
ax^3+bx^2+cx+d=0
や、四次方程式
ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0
にも、少々複雑ではありますが、解の公式が存在します。しかし、こちらの方は、比較的新しい発見で、16世紀のルネッサンスを迎えるまで知られることはありませんでした。三次方程式は、カルダノ(Gerolamo Cardano, 1501~1576, Italy)という数学者によって、四次方程式は、カルダノの弟子であるフェラーリ((Lodovico Ferrari, 1552~1565, Italy)という数学者によって発見されました。
三次方程式と四次方程式の解の公式の発見の後、数学者たちは、五次方程式
ax^5+bx^4+cx^3+dx^2+ex+f=0
の解の公式を発見する研究を開始しました。しかし、多くの数学者の努力にも拘わらず、それが発見されることはありませんでした。そして、ついに、19世紀になって、それが不可能であることが、アーベル(Neils Henrik Abel, 1802~1829, Norway)という数学者によって証明されたのです。ところが、例えば、
x^5=1
という五次方程式については、
x^5=1
⇔ x^5-1=0
⇔ (x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1)=0
⇔ x=1, x^4+x^3+x^2+x+1=0
となりますから、ここで、
t=x+1/x
とおけば、
x^4+x^3+x^2+x+1=0
⇔ t^2+t-1=0
となって、二次方程式の解の公式を用いれば、解くことができます。つまり、特定の五次方程式に限れば、解くことができることもあるわけです。すると、どういう形をした方程式が解けて、どいう形をした方程式が解けないのかという疑問が出てきます。この方程式の判別法を発見したのが、ガロア(Evariste Galois, 1811~1832, France)という数学者です。ガロアは、群論と呼ばれる理論を発見し、この疑問を解決したのです。この群論は、これまでの代数学と一線を画し、抽象代数学と呼ばれる分野を切り開きました。現代の代数学は、この流れを汲んでいます。