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気体分子の連続性
電子が原子中でとびとびのエネルギーを持つ軌道を運動しているにもかかわらず、気体は、気体の分子運動論から、気体分子は連続的に動くことが知られています。 一見、矛盾しているように思えるのですが、これはどのように考えればいいのですか。
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原子の中で電子は原子核との間に働く引力の場の中に存在しています。ある空間に閉じ込められている(束縛状態と言います)場合にエネルギーが不連続になります。隣の準位との間隔は束縛が強ければ(引力が強ければ)大きくなります。 簡単なモデルで考えます。 箱の中の運動に対応する1次元井戸型ポテンシャルの場合がたいていの量子力学の入門書には載っている筈です。 その時のエネルギー順位は E=n^2(h^2/8m/L^2) ん=1,2,・・・ になります。この式では運動物体の質量m、束縛領域の大きさLが分母に入っています。電子の運動のスケールで考えているときと気体分子の運動のスケールで考えているときでEの値に大きな違いがあることが分かると思います。 mを電子の質量、Lを原子の大きさとしたとき(A)と mを分子の質量、Lを気体の入っている容器の大きさとしたとき(B) のエネルギー準位を比べてみてください。 (B)の場合はエネルギーの間隔が狭くほとんど連続分布であると見ていいというのが分かるはずです。どういうエネルギーの値でも自由に取ることが出来るということになります。 気体分子運動論では比熱の値が出てきます。 2原子分子で定積モル比熱は5R/2です。これは重心の併進運動の自由度がx、y、zで3つ、重心周りの回転の自由度が2つの5つに加えた熱量が配分されるとして出てきます。このとき2つの原子の間隔は変わらないとしています。これは2つの原子は強いばねでつながっているので普通の熱エネルギーでは次のエネルギー順位に移ることが出来ないということを意味しています。 伸縮振動の部分に量子的なエネルギーが不連続という効果が強く出ています。この振動は赤外線の領域にあります。 量子力学の勉強をするとき、式だけを眺めてどんどん先に進むのではなくて、その式で表される量の大きさがどれくらいになるかというのもチェックしながら進むというのが大事なことだろうと思います。
お礼
丁寧に回答してくださり、 ありがとうございました。 とても参考になりました。