医学ばかりでなく、人類の最大の教師といわれる孔子、釈迦、ソクラテスがほとんどその頃に輩出しています。
多分、これは新石器時代以降人類が都市を作り出し、千年にも渡って徐々に発展して来て、いよいよ都市問題がもたらす不安定性が深刻な問題になって来た結果ではないでしょうか。この都市問題の解決法は一意的ではなく、孔子は「礼」すなわち「規則の導入」による解決法を提案し、釈迦は「執着」からの解脱を提案し、ソクラテスは「倫理の概念の確立」にその解決法を見いだそうとしたようです。
近年の物理学の成果の一つである「散逸構造の理論」によると、系の内部に構造が自発的に出来上がって来るためには、その系が不安定性であることが本質的であることが判って来ました。この都市問題という社会の緊張感や不安定性が、人間の知的進歩を押し上げるのです。このような不安定な社会ではあらゆる知的文化が花開く物です。その一つが医学の進歩ではないでしょうか。
近年、西欧が覇権を握ったのも、小国家に分裂した結果、封建制度とならざるを得なかった西欧社会の内在的な不安定性に本質的な原因があります。また、西欧と同じような封建制度下で信長,秀吉、家康とめまぐるしく変わった不安定性は、世界的に見て特異な日本文化を産み出す契機になり、鎖国が終わった日本が資本主義社会として一気に西洋に追いつくことができた遠縁になっております。
中国の長い歴史を見ても、孔子のいた頃の戦国時代の間に、中国文化での本質的な物がほとんど出てしまったようです。その後、中国が封建制度から中央集権制度に移行してしまった安定期には、確かに富の蓄積はありましたが、哲学も技術も戦国時代ほどの進歩はなかったように思えるのですが、どうでしょうか。