オールによる推進力<ガレー船>と帆により推進力を得る<風帆船>の戦いでした。当時の風帆船は、風に逆らう(切れ上がる)力が未だ充分ではなく、艦隊同士の決戦は、広い海域を必要としていました。それに対してガレー船は、無風でも推進力を持ち、風帆船より海戦に有利とされていました。地中海地方では、スペインの艦隊は無敵だったのです。
このような状況での海戦となり、風帆船しか持たないイギリスはガレー船主体のスペイン艦隊に対し窮地に立たされたのです。しかしながらガレー船には漕ぎ手の奴隷が必要で、その点では奴隷廃止を決めたイギリスの方が、より近代国家となっていました。そして奴隷に反対するギリスは、風帆船のみでこれを迎え撃つ決心をするのです。
劣勢なイギリス海軍は、自国出身の海賊の赦免状を発行、<私掠船>の免状を与え、自国防衛に従事させました。そして彼等の採用した戦法は、速度を生かした、ヒット&アウェイでした。つまりアルマダを風が有利な時だけ攻撃して、自らの艦隊に損害の少ない戦法を採用したのです。
イギリス海軍と元海賊の戦闘の末イギリス本土に接近したアルマダは、上陸を試みるも、地中海と違い外海の荒海に妨げられ、上陸出来ないばかりでなく、暗礁等で大損害を出します。地中海とスペイン沿岸では無敵のガレー船の艦隊も、北緯50度以北の荒海では、実力を発揮できませんでした。二次三次と遠征をを続けるも、一度も成功せず、風帆船艦隊の戦法の前に敗戦を重ねたのです。
この海戦以降、世界の艦隊の主力は、漕ぎ手の不要な風帆船時代へと移行していった、重要な海戦でした。
お礼
色々と調べましたが「ガレー船」と「風帆船」という違った視点で捉えていて、とても参考になりました。ご説明もとても分かりやすかったです。ありがとうございました。