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ジュール熱による上昇温度測定
- 半導体の積層アルミ配線に電流を流した際のジュール熱による温度上昇を求める方法について
- アルミ配線の測定用セラミックPKGによる熱測定と抵抗の変化について
- 定電流を流して行った抵抗測定でのジュール熱効果の予測と反応について
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充分な情報を提示した非常に良い質問です。 いくつか質問があります。 (1) 電流の印加方法(定電流源?)、電圧測定の方法(4端子法?アンプ使用?)、抵抗の計算法(電圧/電流?) (2) 最初に抵抗の温度依存を測定したときの電流値 (3) 最初に測定されたAlの抵抗値の温度依存から計算される抵抗率とその温度係数は、Alの典型値[ ρ0(20℃) = 2.62×10^(-8) Ω・m、α = 0.0039 /℃ ] と大きな差はないか Alの抵抗率と温度係数から計算される配線抵抗は、ご質問のサイズの場合、20℃で 39.3 Ω、200℃で 66.9 Ω となります。電流 1μA で抵抗を測定した場合、電圧は20℃で 39.3 μV とかなり小さい電圧となります。そもそも抵抗測定が精度良くなされているのかどうか、値の分かっている数十Ωの抵抗器を測定して、電流値に依らず一定の抵抗値となるのか確認してみてはいかがでしょうか。電源の種類によっては1μAの電流設定でもその値の電流が流れていなかったり、ノイズが多くて測定がうまくいっていない場合があるかと思います。配線抵抗によるジュール熱は 1μA から 200μA の範囲で 10^(-11)~10^(-6) W 程度なので、熱抵抗が 10000 ℃/W だとしても、温度上昇は 0.01℃程度未満と思われます。 最初に抵抗の温度依存を測定したときの抵抗値がAlの抵抗率と配線サイズから計算される値と一致していれば、測定そのものは正しく行われていると思います。 低電流ほど抵抗が大きいという現象は、電圧を横軸に、電流を縦軸にとってV-Iカーブを描いたとき、低電圧領域でカーブが寝ていて、電圧上昇と共に傾きが大きくなっているということでしょう。これは半導体の抵抗測定で、オーミック接触が充分とれていない場合に見られますが、ご質問はAlなのでそのようなことは考えられないと思いますが、電極パッドでの接触抵抗が大きい場合には似た現象が起こるかもしれません。それを確認する意味で、実際の抵抗値がサイズから計算される値と一致しているか確認してください(それよりかなり大きければ接触抵抗の影響が大きく、その電圧-電流特性が支配的ということになります)。 1μA での電圧が非常に小さいので、異種金属の接触により発生する熱起電力も誤差原因として考えられます。金属のゼーベック係数は μV/℃ のオーダなので、測定端子間(2端子間)の温度差が 1℃ あれば、μVオーダの電圧が測定電圧に重畳されます。したがって測定電圧が μV オーダの場合、熱起電力による誤差が大きくなります。この影響を小さくするには、測定電流値を大きくして、電圧測定を mV 以上で行ったほうが良いと思いますが発熱との兼ね合いがあります。測定は難しいですが、熱起電力の影響を見る方法として、パルス電流を印加したときの電圧波形を見る方法があります。温度は急に変わらないので、電流パルスがなくなった直後には熱起電力が残っていて、電流が流れていないのに電圧波形がテールを引いたように減衰していく現象が見られたら熱起電力影響が大きいと考えられます。電極パッドやプローブの金属が何か分かりませんが、それらの金属のゼーベック係数から熱起電力を見積もってみてはいかがでしょうか。
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- inara
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>配線長を1000umに訂正します。 そのサイズと、測定された抵抗率から計算すると、25℃での抵抗値(測定電流4μA)は 75Ωだったわけですね。 配線サイズが幅0.4um、厚さ0.5um、長さ1000umで正しければ、本来の配線抵抗は 131Ωとなるはずですが、それより小さくなり、かつ、電流増加と共に抵抗が下がるというのは、電極パッド間や配線間のリーク電流によるものではないかと思われます。 抵抗値が計算より大きくなる理由は、以下のようにいろいろ考えられます。 【抵抗値が大きくなる原因】 ・2端子法による配線抵抗 ・配線と電極パッド間の接触抵抗 ・配線断面積が小さことによる表面からのTiNやTiの拡散 ・表面効果による実効抵抗率の増加 [1] ・ジュール熱による抵抗率増加 ・実際の配線サイズが異なっている(断面積/長さが小さい) 一方、抵抗値が計算より小さくなる理由は、以下の原因が考えられます。 【抵抗値が小さくなる原因】 ・実際の配線サイズが異なっている(断面積/長さが大きい) ・電極パッド間や配線間のリーク電流が大きい テスト配線は蛇行型だと思いますが、その長さや幅に大きな誤差ないと思います。パラメータアナライザを使っているので測定器自身の問題でもなさそうです。したがって、計算される抵抗率が本来の半分くらい小さいというのは、配線の膜厚が大きいか、あるいは電極パッド間や配線間のリーク電流が大きいことが考えられます。ちなみに、配線の許容電流密度を 1MA/cm^2 とすれば、この断面積では 2mA まで流せます(このときのジュール熱は0.3mW)。 ご質問では、電流増加と共に抵抗値が減少していく現象が見られましたが、電流依存をもつ原因には以下のものが考えられます。 【抵抗の電流依存の原因】 ・ジュール熱による温度上昇 (正の電流依存→×) ・接触抵抗の電流依存(電流によって電流集中が起こるため接触抵抗が大きくなる) (正の電流依存→×) ・電極パッド間、あるいは配線間のリーク電流(もし基板が半導体で、不完全なショットキーバリアが形成され、そこを通してリークしているのなら負の電流依存) もし、配線の膜厚が正しいのであれば、「抵抗値が小さくなる原因」と「抵抗が電流依存の原因」の両方に出てくる「電極パッド間、あるいは配線間のリーク電流」が原因ではないでしょうか。電極パッドや配線の間隔、パッシベーション膜の有無は分かりませんが、そのあたりの可能性はいかがでしょうか。配線のないパッドだけのパターンがあれば、パッド間のリークは確認できると思いますが。 [1] CuとAl配線の実効抵抗率の配線幅依存性(PDFファイル10ページ) http://www.miraipj.jp/ja/result/060526/060526MIRAI3_2.pdf
補足
ご回答有難う御座います。 【抵抗値が小さくなる原因】 ・実際の配線サイズが異なっている(断面積/長さが大きい) 実測はしていませんのでサイズは正確ではありません。それと長さ1000umは配線長ですが、電流が集中しない様にPADから引き出し線があり実際には80um長くなります。 ・電極パッド間や配線間のリーク電流が大きい 配線は直線で両側のPADのアルミにアルミワイヤーを超音波圧接していますので端子間やPAD間のリークはありません。 微小な電流では、ジュール熱による抵抗増大が測定できない場合、ある程度大きな電流で抵抗増加を測定し、温度係数よりジュール熱による温度上昇を求め、そこから低電流側を外挿して見積もる方法はどうでしょうか? 配線の許容電流密度を 1MA/cm^2 とすれば、この断面積では 2mA まで流せます(このときのジュール熱は0.3mW)。とありますが、EM(エレクトロマイグレーション)試験では200℃で2.5MA/cm~2程度流しますので常温ならこれ以上流しても問題なかと考えています。逆に、常温ではなく200℃の高温なら低電流でも測定できるのでしょうか?
補足
ご回答有難う御座います。 ご質問にお答えする前に、配線長を1000umに訂正します。 1) 電流の印加方法は定電流です。電圧測定の方法は2端子で4端子測定はまだ未実施です。 (2) 最初に抵抗の温度依存を測定したときの電流値は4uAです。 (3) 最初に測定されたAlの抵抗値の温度依存から計算される抵抗率とその温度係数は、Al配線のみで計算しますと25℃で 1.50×10^(-8) Ω・m、α = 0.0033 /℃で低効率が低くでました。温度係数は理論通りです。 測定はアジレントの半導体パラメータアナライザー4155Cを使用していますので測定誤差は少ないと思います。所有の半パラはパルス印加できないのでご指摘のような測定はできませんが、外部からストレス端子に50uA印加して半パラで4uAの定電流で測定を実施し、外部電流を入れる前とストレス電流印加後OFFした直後で電圧測定を試みましたが抵抗差が出ませんでした。 inaraさんのご指摘の様にこのスケールで温度上昇が0.01℃程度ならなんら問題はありません。基本電流量を50uAとして設計している配線に8倍の400uAや16倍の800uAの電流が流れたとき配線温度が上がってEMまでは生じないがAlとTi(TiN下層にTi層があります)合金化しなかどうかが問題で、その為に配線温度を見積もうとしました。電流量が8倍や16倍になれば、ジュール熱は64倍、256倍いなります。実際には、抵抗値が上昇していますので温度は上がっているのではないかと予想しています。