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マタイ福音書の「報い」
http://www.ne.jp/asahi/church/sasebo/youshi04'10_17.htm >ここで「報い」と訳されている言葉は基本的には「報酬」とか「賃金」という意味だが、聖書をはじめとするキリスト教文献では、しばしば「刑罰」という意味で用いられる。そしてこの文脈では 「刑罰」と訳す方が 妥当ではないかとも思われる。 とあるのですが、原文でこの「報い」というのは何と記述されているのでしょうか。
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マタイの10章にあるこの箇所は、原文では「ミストス」(misthos)と いうギリシア語が使われています。「ミストス」は引用された文章に 書かれているとおり、「賃金」とか「報酬」を意味することばです。 マタイは他の章、たとえば有名なぶどう園のたとえの中でも、「賃金 を払ってやりなさい」という主人の言葉にも「ミストス」を使って います。 URLにあるページの文章を読ませていただきましたが、この10章の 「ミストス」を「刑罰」と解釈するのはかなり乱暴で強引な気がし ます。というのも、イエスの善に対する報いの説話はマタイのあちこ ちで記されていますが、マタイは「刑罰」という意味でイエスの言葉 を引用するときは、はっきりと別の単語を使って記しています。 たとえば、マタイの25章46節ですが、ここでもイエスは小さな者に しなかったときの報いを説いて、「彼らは永遠の刑罰を受けるであろ う」と言っています。このようにマタイは小さい者を引き合いに出した ときのイエスの説諭で「刑罰」として戒めるときには「刑罰」という 言葉を使います。この箇所で「刑罰」と訳されている言葉は原文の ギリシア語では、「コラシス」(kolasis)という名詞です。これは kolazoという動詞から派生したものですが、その意味は明確に「罰す る」という意味です。 新約聖書のギリシア語はコイネーですので、古典期のギリシア語との 間に意味の変遷なり派生があるか、という問題もあります。 古典ギリシア語における「ミストス」は、コイネーとほぼ同じ意味 で使われています。第1義は「賃金」「雇用」という意味です。アテ ナイでは、軍隊の兵士に支払う1日の報酬もミストスと呼んでいまし た。それから、古典ギリシアにも「悪事の報い」という意味がなくは なかったのですが、それは「報酬」という意味から当然派生する「返礼」とか「報復」とかいう反作用としての語義であったろうと思われ ます。 しかし、いずれにしても、件のページの文章はかなり無理のある解釈 と私には思えました。
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- trgovec
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merces mercedem メルケース/メルケーデム 格変化は主語になったり目的語になったりということですからそれで意味が変わることはありません。多義語は前後関係で意味が変わります。それでも意味が特定しづらいこともあります。 merces:主語や主格補語の形 mercedem:対格(直説目的格)の形
お礼
ありがとうございます。 ラテン語は難しいので混乱してしまいました。
- trgovec
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参考までにいくつかを書いてみます 欽定訳 he shall in no wise lose his reward. ウィクリフ版 he shal not leese his mede. (= he shall not lose his reward) Youngs literal translation he may not lose his reward. Vulgate ラテン語 non perdet mercedem suam (= he not lose his reward / punishment) ラテン語の merces (mercedem は対格) が「報い・刑罰」の両義を持ちます。
お礼
ご親切にありがとうございます。 追加でお聞きしたいのですが、ラテン語のmerces(mercedem)は何と読めばいいのでしょうか。 メルセス(メルセデム)で宜しいのでしょうか。また、対格変化させた場合も両義性は損なわれませんか?
お礼
とても丁寧かつ明瞭なお答え、ありがとうございます。 対極の訳し方が出来てしまう原文、というものに興味があったので質問させて頂いたのですが、すっきりしました。 本当にありがとうございました。