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身体的特徴の個人差について。
身体的特徴の個人差について興味があり、 ド素人ながら本を読んで調べています。 分子生物学的見地からすると、 まずヒトとしての特徴を決定づけるヒトゲノムがあり、 その中におよそ1000分の1の割合で存在するヒトゲノム多型が 個人差を生むというところまで知りました。 しかし、手に取った書籍には多型と病気の関係についての簡単な記述しかなく、 容姿との関係を詳細に指摘するものにはまだ出会えていません。 そこで今回質問したいのは、まずヒトゲノム多型がどのようなプロセスで ヒトの身体的特徴を形成しているのかということです。 例えば、ある特定の文字配列が髪質の直毛やくせ毛などを決定するといった具合に、 できれば人種差などの大きな違いだけでなく、 ヒト全般に見られる細かい特徴差の範囲まで知りたいです。 勿論、自分は現在の研究がどこまで進んでいるかもわかっていないので、 可能性の示唆という次元でも構いません。 また、このような遺伝情報のみならず、 生後の環境も外見形成の一因であるとよく言われます。 自分はヒトゲノムが生前の影響要因、環境が生後のそれと大雑把に理解していますが、 両者が身体に作用するメカニズムについても何らかの知見を求めています。 それぞれの影響とは厳密にどう違うのか。 ゲノムによって指定された特質を環境の影響が(成人後に)凌駕することはあるのか。 そのときゲノムは書き換えられるのか、書き換えられないまま眠っているのか。 などなど。。 さらに、ヒトゲノム、環境以外に身体的特徴を決定づける要因はあるのか。 ということも疑問です。 以上の大まかに3点の質問について、 研究の進捗も含めて教えていただきたいと思います。 関連するものならばどんな些細な情報でも助かります。 質問が広範囲すぎる上に漠然としている気が自分でもするので、 参考になる書籍やウェブサイトなどの情報源を紹介していただくのが 一番手っ取り早いかもしれません。 自分は全くの初心者なので、 質問文自体に誤りがあればそれも遠慮なく訂正してください。 長々と失礼しました。よろしくお願いします。
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- ruehas
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こんにちは。 ANo.1です。回答をお読み頂き、ありがとうございます。 >多型によって異なるタンパク質の種類や組み合わせが個人で違う形質として人体に表れるのですね。 はい、その通りです。 >そのさらに具体的な過程を知りたいです。 ええっ! >質問で挙げた例に倣うならば、これらのタンパク質群がこれこれこういう具合に合成されるとくせ毛になるが、違うタンパク質がまた違うこのようなプロセスで合成されると直毛になるというような実際例、とりわけプロセスの具体的内容については、現代の科学でどこまで判明しているのでしょうか。 そうですよね、ゴメンなさい、ほとんど解明されていないと思います。 「ヒトゲノム解析」が完了し、その遺伝子の数は約二万五千個と発表されました。その後、お酒に強い遺伝子ですとか、パーキンソン病の因子といったものが軒並み話題に上りましたよね。確かに、我々の身体機能を決定する様々な遺伝子の特定は急激に加速しました。ですが、それもまだ針で引っ掻いた程度でしかないと思います。では、二万五千に上るそれぞれの遺伝子機能の特定とはどのように成されるのでしょうか。 まず、遺伝子疾患であるならば、発病したひとの遺伝情報を調べれば、その遺伝機能や実際のタンパク質の性質が分からなくとも統計的に特定することが可能です。お調べになった質問者さんが、病気に関係するものしか見付からなかったというのは、このような理由があるのではないでしょうか。 次に、お酒に強い遺伝子といいますのは、確か「アルコール分解酵素」としての機能を持つタンパク質を指定するものだったと思います。そして、お酒に強い弱いという個人差は、「SNP(一塩基多型)」であることが突き止められていますが、このように特定の酵素に対応する多型を「酵素多型」といいます。この場合、酵素として働くタンパク質の性質がその遺伝機能と対応しているわけですから、明確に特定できるわけです。また、瞳の色や肌の色といった個体差であるならば、その色素を作るタンパク質酵素が見付かれば良いわけですね。 では、主だった個人差もなく、病気でない健康なヒトゲノムの中から、その遺伝機能を特定するためには、動物実験によって遺伝子を破壊したり、特定の化学物質を分解できるかどうかといったことを調べることになります。まして、耳たぶが大きいとか、背が高いといった身体的な遺伝形質といいますのは、親からもらったという事実はひと目に明らかではあるのですが、そのほとんどが「多因子遺伝」というものであり、何れかひとつのタンパク質の性質と対応するものではありません。 どうしてこんなにたいへんなのかと言いますと、まず、「ヒトゲノム解析」が完了したということは、そこに書かれたDNA情報によって指定される「アミノ酸配列の読み取り」が完了したということです。ですが現在では、そのアミノ酸配列から合成される「タンパク質の種類や性質を予測する」という技術がまだ確立されていません(の、はずです)。このため、既存の現象という結果から原因を見付け出す以外に手段がないわけです。 解析されたヒトゲノムの様々な機能が解明されれば、それは医療や生産などに画期的な変化をもたらす宝の山です。ですが、その道のりはまだ始まったばかりなのだと思います。 現在、どのような遺伝子が特定されているのかといった一覧を見付けるのは結構たいへんですね。質問者さんに資料提供できると思い、試しに厚生省の作ったという「一家に一枚遺伝子マップ」というのを初めて覗いてみたのですが、はっきり言って何の役にも立ちませんでした。お役所のやることって、どうして何時もダメダメなんでしょうかねえ。ダメでも仕方ないですが、税金を使っているというのは許されませんよね。どなたか、「特定遺伝子の一覧表」、見付けて頂けませんかねえ(甘えるんじゃない! って?)。 >また、遺伝情報が生後書き換えられることはないとのことですが、とすれば、よく耳にする「遺伝子組み換え」という技術は、成熟した生物のゲノムを書き換えるのではなく、個体発生や親の交配の段階でゲノムに手を加えるものなのですか。 そうですね、それ以外に手段はないと思います。 我々の人体は全く同じゲノムを持つ60兆に及ぶ細胞から成り立っています。従いまして、成長した多細胞生物のゲノム情報を途中から書き換えるというのは99.999%不可能だと思います。 >では生来のものと違う遺伝情報を蓄えた細胞を、人為的に生後の体内へ注入し培養させるとどうなるのでしょうか。 >体が異物として排除しようとするのですか。 >それとも病気となって生命活動に支障を来すのでしょうか。 はい、質問者さんのお考えの通りで良いと思います。 何らかの後天的要因によってDNA情報の変異、もしくは変更が加えられた場合、その細胞は修復されるか、細胞自身の生命機能を失って死滅するか、あるいは異物として体内から排除されます。そして、このような生命機構による修復・死滅・排除の何れも成されない場合は、生来のものとは異なるDNA情報を持った細胞が体内で分裂・増殖をすることになりますが、それはガン細胞と同じ性質を持つことになります。 >この分野についてもっと勉強したいと思っています。多型と身体的特徴の関係を研究した書籍などでおススメのものを教えていただけませんか。 ゴメンなさい、書籍はちょっと……、現在はWeb情報が頼りで、科学雑誌ですとか、かなり古いものしか持っていないんです(お恥ずかしいことです)。
- ruehas
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こんにちは。 >ヒトゲノム多型がどのようなプロセスでヒトの身体的特徴を形成しているのかということです。 DNAに情報として書き込まれているのはタンパク質を合成するためのアミノ酸の種類とその配列です。これによって指定されたタンパク質の性質が我々の生体活動に必要な様々な化学反応を担っています。このタンパク質一種類を合成するために必要なアミノ酸配列が遺伝情報の最小単位であり、これが同一の染色体上に複数配列され、その生物の特定の機能発現に対応するものを「遺伝子」と言います。ですから、身体内の様々な細胞骨格や細胞機能、あるいは組織・臓器の形成といった、我々の生体機能を形作るそれぞれの「遺伝子の役割」とは、それによって作られる「タンパク質の組み合わせ」によって定められているということになります。 「遺伝子多型」といいますのは、DNA上に書き込まれた情報の内容や並び方が異なるために、発現する遺伝形質が個体ごとに違ってしまうということです。特定の書き込みパターンの繰り返し回数が違ったり、最も多いのは情報の内容が一箇所だけ異なる「SNP(一塩基多型)」というものだそうです。このような「多型」がタンパク質情報の「翻訳部」や「制御部」などにありますと、 「何れかの種類のタンパク質が合成されない」 「違う種類のタンパク質が合成される」 「合成されるタンパク質の量が異なる」 といった違いが発生することになります。 このように、我々人間の染色体上で構成されている「目を作る」「髪の毛を生やす」といった基本的な遺伝機能というのはみな一様に果たされるわけですが、そこでは合成されるタンパク質の種類や組み合わせが微妙に違います。これが、瞳の色や癖毛といった、個体ごとの様々な形質の違いとして現れることになります。 人体のSNPは最低でも100万箇所以上、その種類は数百万と予測されています。ですから、染色体上での「配列の多型」もしくは「SNPのあるなし」など、その組み合わせによる遺伝情報の個体差というのは、ほぼ無限大ということになるのではないかと思います。両親からの遺伝情報の受け渡しといいますのは染色体単位で行なわれます。ですから、親子兄弟の遺伝的形質はたいへん良く似たものになり、一卵性の双子に至っては全く同じですよね。ですが、他人となりますと、当然のことながらその体質や風貌は千差万別ということになります。 >それぞれの影響とは厳密にどう違うのか。 「遺伝形質」といいますのは遺伝情報によって決定されるものであり、これが外的・後天的な要因によって何らかの影響を受けるということは一切ありません。それ以外のものは全てが「獲得形質」ということになり、こちらは生後環境を外的・後天的要因とし、先天的に決定された遺伝形質を基盤に付加されてゆくものです。 >そのときゲノムは書き換えられるのか、書き換えられないまま眠っているのか。 ですから、DNAに書き込まれた遺伝情報が途中で書き換えられたり変更されたりということは生涯に渡って絶対にありません。 遺伝的に持っていない機能が発現するということはありませんし、生後環境に応じて新たな遺伝的機能が獲得されるということもあり得ません。また、発現すべき遺伝形質が外的要因によって変更されたり抑制されたりするということも基本的にはないと思います。遺伝的に定められたものは、「生後環境とは一切関係なく」我々の身体的特徴・機能としてその通りに発現するものであるはずです。 >ヒトゲノム、環境以外に身体的特徴を決定づける要因はあるのか。 ちょっと思い当たりませんね。 遺伝情報というのは変更不可能な先天的要因です。それ以外のものは全て後天的な要因と対応する「獲得形質」あり、これに生後環境と完全に切り離して扱えるものは恐らくないと思います。
お礼
詳細なご回答ありがとうございます。 とても参考になりました。 ご回答により新たな疑問がいくつか出てきました。 多型によって異なるタンパク質の種類や組み合わせが 個人で違う形質として人体に表れるのですね。 そのさらに具体的な過程を知りたいです。 質問で挙げた例に倣うならば、 これらのタンパク質群がこれこれこういう具合に合成されるとくせ毛になるが、 違うタンパク質がまた違うこのようなプロセスで合成されると直毛になる というような実際例、とりわけプロセスの具体的内容については、 現代の科学でどこまで判明しているのでしょうか。 タンパク質の組み合わせは天文学的な数値に昇るでしょうから 網羅することは不可能なのかもしれませんが。。 また、遺伝情報が生後書き換えられることはないとのことですが、 とすれば、よく耳にする「遺伝子組み換え」という技術は、 成熟した生物のゲノムを書き換えるのではなく、 個体発生や親の交配の段階でゲノムに手を加えるものなのですか。 では生来のものと違う遺伝情報を蓄えた細胞を、 人為的に生後の体内へ注入し培養させるとどうなるのでしょうか。 体が異物として排除しようとするのですか。 それとも病気となって生命活動に支障を来すのでしょうか。 そもそもこのような技術が可能なのかすら知らないわけですが(苦笑) この分野についてもっと勉強したいと思っています。 多型と身体的特徴の関係を研究した書籍などで おススメのものを教えていただけませんか。