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物質に可視光をあてた時の現象について
物質に光を当てたときの吸収や反射などの現象を、電磁場と電子の相互作用で理解しようと独学している者です。 (1)吸収や反射などの現象を、"電磁場の振動によって発生する電子の分極"という考え方で理解するには、 どのようなイメージを持てばいいでしょうか? (2)吸収や反射などの現象を、エネルギー準位図を用いて"遷移"として理解するには、 どのようなイメージを持てばいいでしょうか?
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>『光電場の振動によって双極子モーメント(原子核と荷電子からなる分極)が振動させられる。その振動のエネルギーを電磁波として再放出して、双極子モーメントの振動は減衰する。』というイメージでよろしいでしょうか? そうですね。厳密に言うと双極子モーメント単体では反射というより散乱になります。 しかし、そのような双極子モーメントを集団で扱うと互いに干渉しあうこととなり反射する様子を導くことが出来ます。 >これが正しいとすると、反射という現象をエネルギー準位図で考えた時に、吸収と同じように上位準位へのエネルギー遷移が起こり、その後にその逆過程の遷移が起こると思うのですが、"反射についてはエネルギー遷移が生じるわけではない"というのはどういうことでしょうか? なかなかよい質問ですね。量子力学などの基礎を学んでいるとのことなので、そのレベルにあわせてお話しすると、上位順位の波動関数と下位順位の波動関数が電場の振動にあわせて入れ替わっている状態になります。波動関数が電子の存在確率を表しているのはご承知と思います。要するに、電子が上位と下位の間で振動しているのです。これが実は古典的モデルの一つである双極子モーメントの正体です。 これは電場の振動による摂動ハミルトニアンを使って導出していきます。 (わかりやすい参考書として霜田先生のレーザー物理入門があります) >"双極子モーメントが電磁波の電場に合わせて振動する=電磁波のエネルギーを受け取って上位準位に遷移する"と考えるのは何かマズい点が出てくるのでしょうか? 吸収して上位にいくと考えると、その順位間エネルギー差に相当する波長しか反射も出来なくなってしまいます。ちなみに反射という現象は基本的には屈折率の差があるので生じます。(金属反射は電場が進入できないために起きるものですから別のモデルが必要です) この意味は入射した光が物質に入ったときに元の電磁波と物質を通過する電磁波では、物質を通過する電磁波は物質との相互作用で位相がずれるということを意味します。 言い方を変えると双極子モーメントが元の入射電場に対して遅れが生じるので、位相がずれていくということです。 でも、吸収ピークでは共鳴しますから、双極子モーメントは電場と位相差0で振動します。そうすると屈折率は1になってしまうのです。矛盾してしまいますよね。 屈折率、吸収の詳しい関係についてはクラマース=クローニッヒの関係というものがありますので、それを調べてみるとよいでしょう。この両者は密接に互いに関係し合っています。(更にいうとこの関係は因果律に関係しているのですが、話が飛ぶので省略します) ●吸収について >吸収はその双極子に伝えられたエネルギーの一部が失われることで生じます。 >吸収については、電子にエネルギーが移り、電子は上位準位に遷移することになります。 >この2つのイメージがまだ合致しなくて困っています。前者は"振動のエネルギーが失われること=吸収"で、後者は"振動のエネルギーを得ること=吸収"のように聞こえるのですが・・・ 電子が上位順位と下位順位を激しく移動(上位の波動関数と下位の波動関数が電場にあわせて入れ替わり続ける)というものと、光のエネルギーが完全に電子に移り、上位順位になってしまうというのは別ということですね。 上位順位に電子が一度遷移してしまうと、もはや双極子モーメントではないから簡単には落ちてきません。 ちなみに上位に一度遷移した電子がそのまま自然に元の順位に戻る(中間にある別順位を経由することもあります)のは、自然放出といい、通常我々が「蛍光」と呼んでいるものです。この確率はアインシュタインA係数というもので表します。 (この戻る課程ではやはり上位の順位とその下の順位との間で先に述べた激しい入れ替わりが生じてそれが双極子モーメントを形成して電磁波を作り出します) 逆にこの上位準位(この変換が出にくくて順位と書いてしまっているものが多数ありますけど読み替えてください)の状態の時に電磁波がやってくると、やっぱり基底順位と上位順位との間での振動が生じることになるので、上位にいた電子がそれで下位に戻り光を放出します。(このときにもあくまで電場は”摂動”させているだけであり電子にエネルギーを与えている訳ではありません) これを誘導放出といいます。(アインシュタインB係数でその確率を表現します) ちなみに「燐光」(蛍光よりも減衰時間が長い)の場合には、基底順位から上位順位、次に中間順位に遷移して、ただここから基底順位に戻るにはスピンの変換が必要な禁制遷移になる場合に生じます。 もちろん上位の電子が格子振動エネルギーに代わり熱に変わってしまうような光の再放出のない遷移もあります。 一応お断りしておきますと、上記はなるべくわかりやすく説明するために厳密性は犠牲にしています。大体こんなイメージで考えればよいという程度にとどめて、より厳密な話はやはり数式ベースで正確に理解してくださいね。
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- walkingdic
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>(1)吸収や反射などの現象を、"電磁場の振動によって発生する電子の分極"という考え方で理解するには、どのようなイメージを持てばいいでしょうか? まず振動する電場により電磁波が出るというマクスウェル方程式はイメージできているでしょうか。 それが出来ている場合には、通常は「双極子モーメント」(プラスの電荷とマイナスの電荷を両端にもつもの)を仮定して、それが入射電場にあわせてくるくる回り、くるくる回る双極子は平たく言うと電場が振動しているわけなので、それにより電磁波が再放出されるというイメージになります。 反射や屈折は上記のイメージだけで話を進められます。 吸収はその双極子に伝えられたエネルギーの一部が失われることで生じます。 >(2)吸収や反射などの現象を、エネルギー準位図を用いて"遷移"として理解するには、どのようなイメージを持てばいいでしょうか? 吸収については、電子にエネルギーが移り、電子は上位準位に遷移することになります。 このあたりは今現在どの程度の知識、及びイメージがあるのかによりわかりやすい説明のしかたも異なるので、簡単にここで解説は難しいです。 反射についてはエネルギー遷移が生じるわけではないので直接的に関係はしません。
お礼
親切な回答ありがとうございます。 その上で、まだ疑問点が数点あるので質問させていただきます。 ●反射について 『光電場の振動によって双極子モーメント(原子核と荷電子からなる分極)が振動させられる。その振動のエネルギーを電磁波として再放出して、双極子モーメントの振動は減衰する。』というイメージでよろしいでしょうか? これが正しいとすると、反射という現象をエネルギー準位図で考えた時に、吸収と同じように上位準位へのエネルギー遷移が起こり、その後にその逆過程の遷移が起こると思うのですが、"反射についてはエネルギー遷移が生じるわけではない"というのはどういうことでしょうか?"双極子モーメントが電磁波の電場に合わせて振動する=電磁波のエネルギーを受け取って上位準位に遷移する"と考えるのは何かマズい点が出てくるのでしょうか? (確かに、絶縁体結晶の反射を考えた時に、空いている上位準位が伝導帯にしかないので、この考えだと何やらマズそうですが…) ●吸収について >吸収はその双極子に伝えられたエネルギーの一部が失われることで生じます。 >吸収については、電子にエネルギーが移り、電子は上位準位に遷移することになります。 この2つのイメージがまだ合致しなくて困っています。前者は"振動のエネルギーが失われること=吸収"で、後者は"振動のエネルギーを得ること=吸収"のように聞こえるのですが・・・ >今現在どの程度の知識、及びイメージがあるのかによりわかりやすい説明のしかたも異なるので、簡単にここで解説は難しいです。 説明不足で申し訳ありません。現在、学部で習う物理(電磁気学、量子力学、固体物理)は一応一通り勉強し終えている段階です。
お礼
回答ありがとうございました。 おおよそのイメージをつかむことができました。 今まで『反射=吸収+放出』と曖昧に掴んでいたのが混乱の原因でした。 あとは厳密な理解のために、数式を用いて勉強していきたいと思います。