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行列積状態(matrix-product states)とは具体的にどのような状態??
DMRG(密度行列繰り込み群)に関する論文を読んでいるのですが 頻繁に論文の中に現われる行列積状態という言葉がいまいち理解できません。 どなたか具体的に説明していただけませんか? DMRGに限らず一般の事例による説明でも構いません。よろしくお願いします。
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これはまた超専門的な質問ですね~. DMRG は専門じゃありませんが...(^^;). 行列積状態(matrix-product states = MPS)で最も有名な話は 1次元 S=1 量子反強磁性 Heisenberg model に関するものでしょう. 80年代はじめに Haldane が1次元整数スピン(S=1,2,...) 量子反強磁性 Heisenbeg model の基底状態は非常に奇妙なものである ということを見いだしました. S=1 は Sz=+1,0,-1 には3状態 Sz=-1,0,+1 があります. これが鎖状に並んでいるわけです. 相互作用は隣同士のみとしておきます. つまり,Hamiltonian が (1) H = Σ_j S_j ・ S_{j+1} です. j 番目のスピンが -1,0,+1 である状態をそれぞれ |->_j, |0>_j,|+>_j と書くことにして, 例えば (2) |+>_1 |->_2 |+>_3 ・・・ の様な状態(つまり,完全な Neel 状態)をつくると, 変分的にいじる余地がありません. 大体,各スピンは |-1>,|0>,|+> の3状態を適当な確率で取っているであろう と思われるのに,(2)では各スピンの状態が完全に固定されてしまっています. もちろん,(2)の一部を |0> で置き換えたりして線形結合をとるということも 考えられますが,下手をすると各スピンによって扱い方が違ったりします. (2)がいわばスカラー積だからまずいので, それでは 2×2 の行列にしてみたら,というのが MPS の発想です. (2)がいわばスカラー積だからまずいので, それでは 2×2 の行列にしてみたら,というのが MPS の発想です. ┌ ┐ │-|0>_j -b|->_j │ (3) g_j = a│ │ │b|+>_j |0>_j │ └ ┘ として,パラメーター a,b を導入します. といっても,a は規格化で決まりますから, 実質的パラメーターは b だけです. この g_j を使って (4) ψ = Tr(g_1 × g_2 × g_3 × ・・・) としたものが MPS です. × はテンソル積の意味 (本当は ×を ○ で囲んだ記号ですが,×で代用しています). テンソル積に慣れていなければ (5) g_j = a {- bσ(+)|->_j + bσ(-)|+>_j - σ(z)|0>_j} とした方がわかりやすいかも知れません. σは Pauli matrix. 2スピン系や4スピン系で実際に状態を書き下ろしてみると, どのような状態を取り入れているかがわかります(なかなかうまくできている!). こうやって,変分エネルギー (6) <ψ|H|ψ> が最小になるように b を決めればよいでしょう. 実は,(4)はいわゆる AKLT (Affleck-Kenndy-Lieb-Tasaki) model の 厳密な基底状態になっていることが知られています. こういうこと書いていると, すぐ大学院の講義の1回分くらいになってしまいますので, ここらで終わりにします. MPS の有名な論文は ○ Kluemper et al: Z. Phys. B87, 281 (1992) (ue は本当は u ウムラウト) Europhys. Lett. 24, 293 (1993) ○ Fannes et al: Europhys. Lett. 10, 633 (1989); Coomun. Math. Phys. 144, 443 (1992). ○ Totsuka et al: J. Phys.: Cond. Matter 7, 1639 (1995) など. DMRG の論文に MPS があちこち出てくるのでしたら, MPS で得られた結果と DMRG の結果を比較しているか, それとも 変分原理と関連した DMRG の基礎づけの話か, どちらかでしょうかね. ところで,質問内容からしますと,machael さんは物理系の学部4年以上の 学生さんでしょうか(物性理論系の院生?). それでしたら,MPS という話が出てきてよくわからないのでしたら, いろいろ探して上のような話を見つけるべきです. 例えば,cond-mat を検索するくらいでも手がかりが見つかるでしょう. 多分,machael さんの読んでいる論文にも MPS の文献が引いてあるんじゃないでしょうか. で,見つけた論文にとにかく目を通す. 結局ハズレかも知れませんが,知識というのはそうやって蓄積されるものです.
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- siegmund
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siegmund です. > 正直言って、質問をしても余りの反応のなさにもう諦めて締め切ろうと思っていました そりゃそうです. ここの物理板はよく見ています. 回答陣にプロの物理屋さんと思われる方も何人かおらますが, これだけ高度に専門的な話になるとプロの物理屋だといっても 誰でも回答できるわけではありません. 私が回答を書けたのは専門が近いという偶然の結果で, 同程度に高度な専門的質問で私の専門と離れた分野でしたら, 回答は無理です. > ちょうど最近physical review letterでの論文のダウンロードの仕方を教わり、 あ,そういうことでしたか. なるべく早いところ,関係ありそうな文献を自分でいろいろ探して読む習慣を 身につけられるようおすすめします. 指導教員(?)に指示された論文だけ読んでいるようではダメです.
お礼
回答ありがとうございます。 正直言って、質問をしても余りの反応のなさにもう諦めて締め切ろうと思っていました。 ちょうど最近physical review letterでの論文のダウンロードの仕方を教わり、これからそれに関する論文を読んでみようと思います。 ちなみに今読んでいる部分はDMRGの密度行列とMPSの相関関係の部分です。 どうもありがとうございました。