知能の定義(何をもって知能とみなすか)にもよりますが,もっとも基本的な問題としては,知能や性格などの心理特性は,たとえば机や椅子のように実体(すなわち,物体のように,ものとしての存在)ではなく,人間の行動や,その個人差を説明するためにつくられた概念だからです(これを構成概念といいます).
机や椅子のように実体のあるものを測定するには,直接,物差しを当ててそのサイズを調べたり,秤に乗せて重さを確かめることができます.しかし,概念である知能や性格は,これらの物のように直接測定できません.そこで,知能に関連する(あるいは,知能を反映する),しかも,測定可能な行動をいくつか設定して,それらを,まず測定します.それらは,知能検査に使われている,さまざまな下位検査と呼ばれる検査項目です.たとえば,知識の量,単語の意味をどれくらい知っているか,計算能力,積木で模様を構成する能力などなどです.
これらの下位検査の結果や,それを総合した得点は,標準化という手続きの際に,多くの人に同様の検査が実施してあり,その結果に基づいて評価のための規準がつくられています.個々の人を検査した結果は,その規準と比較して,どのくらいの成績であるかによって,たとえば知能指数がいくつという形で表示します.
こうした形で知能検査の成績が得られますが,その際,“正確な知能”が求められない要因としては,まず,知能が構成概念であるために直接測定できず,いわば間接的な測定になるため,測定上の誤差がどうしてもともなってしまうことがあります.また,その測定誤差には,検査を受ける被検者の体調や,特徴的な条件(たとえば,注意集中に問題がある,多動があるなど,本来の知的能力以外の特徴で,検査結果に影響する因子をかなり強くもっているなど)によるものもあります.知能検査は“最大能力検査”ですので,その人の最大の能力が出せなかったときには,これらの影響因子が問題になります.この点については,測定誤差を考慮した結果の表示が可能な検査を用いれば,かなり解決はできます.心理測定の上では,これらが重要な点だと思います.
その他,検査では,その個人のすべてを測定しているわけではありません.いくつかの行動のサンプルを取り出して調べているので,これによっても誤差が生じてきます.また,各種の知能検査は,それぞれの知能の理論によってつくられていますので,結果として測定している側面が異なる,また,言語性の問題や,非言語性の問題など,どういった面を主に測定しているかによっても得られる結果は異なるでしょう.
質問者の方が学生の方であれば,心理検査の文献や,心理アセスメントの文献を是非参照して下さい.
お礼
ぜひ、参考にさせて頂きます。自分も心理学の勉強を大学で少しやっています。少しでも心理学が理解できるように頑張っていきたいと思います。 どうもありがとうございました。