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共役ジエンの1,2付加と1,4付加について
高温条件下では、1,4付加が起きて熱力学的支配、低温条件化では、1,2付加が起きて速度論的支配とありますが、意味がよく分かりません。是非教えてください。
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「高温条件下では熱力学的支配」で「低温条件化では速度論的支配」は共役ジエンへの付加反応に限った事ではありません。 で,それぞれどういった意味かを先ず簡単に書いて置きます。 【熱力学的支配の反応】 より安定な生成物が生成する反応 【速度論的支配の反応】 より安定な遷移状態を経由する生成物が生成する反応 もう少し具体的に述べます。低温では供給される熱エネルギーが少ないため,大きな活性化エネルギーを必要とする反応(つまり,不安定で高エネルギー状態の遷移状態を経由する反応)は進みにくく,結果的に安定な遷移状態を経由する生成物が主として得られます。 遷移状態に至るエネルギーが低いほど反応は起こり易い(反応速度が速い)ですから,安定な遷移状態を経由する反応を「速度論的支配の反応」と言います。 一方,高温では充分な活性化エネルギーが供給されるため,高エネルギー状態の遷移状態を経由する反応も可能になります。平衡反応でどちらの経路も可能になった場合,より安定な生成物が主として得られます。 この場合,どの生成物が主として得られるかは,生成物の熱力学的な安定性によりますから「熱力学的支配の反応」と言います。 お書きの「共役ジエンの1,2付加と1,4付加」で説明しましょう。#1 さんがお書きの「1,3-ブタジエンへのHClの付加」で説明します。 まず,両反応の遷移状態は次の様になります。 1,2付加: CH2=CH-CH(+)-CH3 1,4付加: CH2(+)-CH=CH-CH3 ここで両遷移状態のカチオンの安定性を考えると,2級カチオンである「1,2付加」の遷移状態の方が1級カチオンを与える「1,4付加」の遷移状態よりも安定だと考えられます。 つまり,「1,2付加」の遷移状態の方が到達しやすく,低温でも必要な活性化エネルギーが供給されるために,低温での反応では「1,2付加体」が主として生成します。 一方,両反応での生成物は次の様になり,「1,4付加体」の方が電子供与性のアルキル置換基が多い内部オレフィンを有するため安定になります。 1,2付加: CH2=CH-CHCl-CH3 1,4付加: CH2Cl-CH=CH-CH3 結果,両反応が可能な高温での反応では「1,4付加体」が主として生成します。 反応は異なりますが,こちらの説明と図15も参考にしてみて下さい。 ・http://www.geocities.jp/junk2515/chem2/chem2_15.htm <速度論支配と熱力学支配>
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例がないと説明が難しいので、1,3-ブタジエンへのHClの付加を例に挙げて説明します。 この反応は求電子付加ですので、はじめにH+が付加して、下式のカチオンを生じます。ここで、*は正電荷と考えて下さい。←→は共鳴を表します。 CH3-CH*-CH=CH2 ←→ CH3-CH=CH-CH2* 次にCl-がこれに付加して、1,2-付加体と1,4-付加体を生じます。 1,2-付加体:CH3-CHCl-CH=CH2 1,4-付加体:CH3-CH=CH-CH2Cl 理由を説明するのは困難ですが、1,2-付加体の方が生成速度が速く、低温では主として、1,2-付加体が生じます。これが速度論支配と呼ばれる反応です。すなわち、生成速度の速い物質が多く得られるという意味です。 可逆反応の場合、反応の種類によっては、高温で生成物の分解が起こり、出発物質や、反応の中間体にまで戻る反応も起こります。 そのために、反応系全体が化学平衡になり、最も安定な物質が多くなります。結果的に、熱力学的に最も安定な物質が多く得られることになります。これが熱力学支配の反応です。アルケンの場合には多置換のものが安定ですので、1,4-付加体の方が安定であることになり、これが熱力学支配の場合の主生成物になります。 要するに、低温の場合には全体が化学平衡にならず、生成速度の速い生成物が多く得られます(速度論支配)。高温の場合には、全体が化学平衡になって、熱力学的に安定な物質が多く得られます(熱力学支配)。ただし、これは可逆反応に限ったことであり、非可逆反応では、温度に関わらず速度論支配になります。