関東の人たちが打ち消しの助動詞に「ぬ」ではなく「ない」を使うようになった結果、形容詞の「ない」と混同されやすくなりました。
「おぼつか」は名詞ですから「おぼつか無し」→「おぼつかない」でなければなりません。(「おぼつく」「おぼついた」…という動詞はありません。)
現在では、アクセントの上で見ると、「おぼつか」と「ない」を分けないほうが一般的になったかも知れませんが、参考URLに引いた辞書では
「0」_| ̄  ̄  ̄  ̄  ̄
「5」_| ̄  ̄  ̄  ̄|_
の2通りを載せており、見出し語の表記が【覚束無い】であることからも、
「とうてい成功はおぼつかず、…」
のような使い方の誤りであることが知られます。
歌謡曲の歌詞で「月にやるせぬ」というのは、字数合わせで、破格を承知かも知れませんが、これも「遣る瀬(が)無い」なので、「やるせぬ」は誤った形です。
「差し支えない」も「差し支え(が)無い」なのですが、「差し支える」の打ち消しも表記上は同形になるため、そう受け取っている人もいるようです。
アクセントが違います。「差し支え」を平板「0」、「無い」を頭高「1」で2語として(ないしは1語として見れば中高「6」で)発音されるべきものです。
(もっとも、数年後には一語として平板化し、さらには「差し支えぬ範囲で」はなぜいけないのかという疑問が出されるかも知れません。)
このような混同が起こるのは、「ない」の前の名詞の末尾字がア列、エ列など、動詞未然形に同形があるからで、オ列の「心ない」を「こころぬ」と言ったりすることはあり得ないでしょう。
質問から少し逸れますが、ゲームソフトの中の疑似文語(若い人が書いているのでしょう)で、「ない」の文語は「なし」だとばかり考えて、「…ず/ざる」とすべき場合に「…なし/なき」としているのを目にします。
補足
ご回答ありがとうございます。 おぼつかぬ という表現はないということでよいのでしょうか。