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分子の中のエントロピーというのは考えられるのでしょうか。
ひとつの分子を考えて、この分子内のエントロピーが最大になっている状態が安定した分子であるというようなことはないのでしょうか。
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こんにちは。 たいへん興味深いんですが、もし、質問の意味を取り違えていたらごめんなさい。 散逸構造を持った複雑系としての分子が特定の性質を示すということは、その系のエントロピーが高い状態で保たれているということですよね。エントロピーが低ければ、分子はその構造を維持することはできません。ですが厳密には、「最大」とは飽くまで「臨界点」のことを言います。必ずしも安定した状態がその系に於けるエントロピーの最大であると言うことはできません。「最大」と言うよりは、分子内のエントロピーが「一定のレベルで保たれている状態」を「安定」と言うべきではないでしょうか。 「下限」と言うならば、何事にも「0」という歯止めがあります。ですが、「上限」とはひたすら無限大です。「複雑さ」なんてものは幾らでも増してゆくことができるわけです。ですが、そんな風にエントロピーをどんどんと無尽蔵に増大させてゆくならば、やがては何処かでバランスが崩れてしまい、どんなものだってきちんと機能しなくなってしまいますよね。エントロピーの増大や減少がある一定のレベルを越えるならば、その系は崩壊するか相転移します。つまり、構造が維持できなくなるか性質が変わってしまうかのどちらかなんですね。 このように、その系が構造や性質を安定して維持するためには、エントロピーはある一定の範囲に収まっていなければなりません。そして、その上限と下限が「臨界」です。ですから、「その系に於けるエントロピーの最大値」というのは、「安定状態が崩壊する臨界点である」ということになります。 「エントロピーの原理」とは、基本的には「完全閉鎖系」でなければ成立しないことになっています。ですが、如何なる物質も、何が何でも必ず単純な構造に移行しようとするその法則から逃れることはできません。ですから、分子が分子としての構造や性質を維持するためには、何とかエントロピーの自然減少を抑えてやらなければなりません。そのためには、どうしても外からのエネルギーや物質の供給が必要になります。このような、エネルギーや物質の出し入れによるエントロピーの逆行が「散逸構造」であり、「完全閉鎖系」に対して、それを「散逸系」と言いますよね。 分子には光や熱といった外からのエネルギーの供給があります。一時的には励起したりしますが、余分なエネルギーは放射という形で外に放出し、常にエントロピーの収支を保っています。 化学的に安定な分子、不安定な分子というのがあります。不安定な分子はすぐに化学反応を起こします。これは、臨界を越えて構造や性質が変化したということですね。ですが、反応後の分子がその時点で安定した状態であるということは、そのために反応エネルギーの出し入れがきちんと行なわれたということですよね。 地球は、太陽から得られるエネルギーによってエントロピーを増大させている散逸系です。太陽から送られて来る膨大なエネルギーは大気圏を循環し、再び宇宙に放射されています。気象現象と共に、そのエネルギー循環の大きな一端を荷っているのが生物層ですね。生物とは、太陽エネルギーを糧に極めて高いエントロピーを維持する究極の散逸系です。 このように、分子に限らず、散逸構造を持つ複雑系というのは、エントロピーの収支を一定に保つことによってその構造や性質を維持しているわけです。ですから、当然のことながら、その全てにエントロピーの上限と下限、即ち「臨界」というものがあります。
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- shkwta
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No1~2のご回答とは別の話ですが、高分子の分野でエントロピー弾性というものがあります。細長い分子を引き延ばしたときはエントロピーの小さい状態、丸まったときはエントロピーの大きい状態です。たとえば卵の白身は液体なのに弾性を持っていますが、これは伸ばされた分子が丸まろうとする傾向に関係しています。ゴムの場合は分子が架橋されていますが、やはりエントロピー弾性で、同じ機構です。 参考URLの中で「ゴムは、温度が上がると、どうして長さが縮むのですか?」に詳しい説明があります。
お礼
ご教示有難うございます。ゴムなどの場合は分子の外のような感じがするのですが、私の拙いイメージでは分子内のことを想像しておりました。
- DIGAMMA
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一番単純な水素分子(H2)を例にとりますね。 水素原子にはスピンがありますから、2つの原子のスピンが同じか違うかによって、2種類の水素分子が存在します。それぞれ「パラ水素分子」・「オルト水素分子」と呼ばれ、エントロピーも安定度も異なります。 水素の高圧低温液化技術などの分野では重要な要素です。
お礼
ご教示有難うございます。素人なりに理解できるところまで勉強してみたいと思っております。
お礼
掃き溜めに鶴のようなご考察をうかがい感激と感謝の念で一杯です。我々の認識あるいは理解体系にもご高察のような構造があるように感じました。自分なりに勉強させていただきますが、大変貴重なご教示でした。