私からも少し補足しておきます。
確かに,おっしゃるような現象が起こっているようにみえる日もあります。しかし,逆のときもあります。
たとえば,10月29日の東京・羽田の潮位は,
満潮 3:44 170cm
干潮 9:33 66cm
満潮 16:05 193cm
干潮 22:07 62cm
となっており,満潮の差に比べると,干潮の差はわずかです。また,満潮・干潮の両方にそれなりの差が出る日もあります。(数値は「潮時表」というソフトで算出しました)
海上保安庁水路部のページでは,1日分のデータしか出ませんので,気付きにくいのですが,もし潮位表(気象庁や海上保安庁から本になって出ている。海上保安庁の本の題名は「潮汐表」)を見る機会があれば,「大きく潮が引き、その次に潮が引くときは引き方が小さい」という現象が,他の日付ではどうなっているか,確かめてみると面白いでしょう。
一般に,1日2回ある満潮の潮位,また干潮の潮位は,等しくならないのが普通で,この現象を「日潮不等」といいます。
その原因は主として地軸の傾きです。つまり,地球の公転軌道と赤道面が23.4°傾いているわけで,これを地球上からみると,太陽の通り道(黄道)が赤道と23.4°傾いていることになります。
月の公転軌道も大まかには太陽と同じとみることができます(1.5°ぐらい違う)。
さて,地球は1日1回自転していますが,これを地上で見ると,月が(太陽も)1日1回上って沈むように見えます。これを日周運動といいます。
ところが,前述の傾きのため,月はいつでも赤道の真上にあるわけではありません。ときには,北緯25度あたりまで来ます(つまり,小笠原で月を見ると頭のほぼ真上にみえる)。
起潮力が最大になるのは,月に面した側と,その反対側ですので,もし月が沖縄の真上にあれば,沖縄近海と,その反対側の南半球,つまりブラジル沖の南大西洋で,潮位を高める力が最大になります。
(実際には,起潮力の大小だけで潮位が決まるわけではありませんし,満潮の時刻も月が南中してすぐというわけではありませんが,うんと単純化して説明しています。)
半日後。月は反対側の,北緯(南緯ではない!)25度の地点の真上に来ます。このとき起潮力が最大になるのは,北大西洋とオーストラリアあたりになります。
したがって,このとき小笠原の海が受ける力は,半日前の満潮時に比べると多少小さくなっています。
これが日潮不等の起きる基本原則です。これに太陽による起潮力が加わると,太陽と月の南中時刻(正確に言うと位相)にはずれがありますので,両者の影響が時には強め合ったり打ち消し合ったりして,満潮と干潮の一方に日潮不等が強く現れることがあるわけです。
実際にはさらに,海水と海底との摩擦,地形の影響,気温や気圧の変動などが加わり,潮位の変化はより複雑になります。
お礼
たいへん詳しく説明していただき、恐縮です。 >一般に,1日2回ある満潮の潮位,また干潮の潮位は,等しくならないのが普通で,この現象を「日潮不等」といいます。 私が疑問に思ったのは、まさしくこの「日潮不等」のことです。 これでよく分かりました。かゆいところに手が届いた気持ちです。 本当に、ありがとうございました。