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非常に強力な超伝導磁石の使い途は?
強磁性体を用いた永久磁石は表面磁界が約1T程度の磁界が限界の強さですが,超伝導体に磁束をトラップした磁石は17Tもの磁界を発生できるそうです。(ただし29Kという低温ですが)。下記に参考のURLを記しました。 http://www.istec.or.jp/Operation/LateNews/Div30301-J.html このような強力な超伝導磁石にはいったいどのような使い途があるのでしょうか?超伝導だから冷却しなければならないと思うのですが,これを補って余りあるほどの用途が存在するのでしょうか?モーターやフライホイールなどのこれまで永久磁石で実用化されていた用途はすぐ思いつくのですが,強力な磁界でなければ達成できない用途があったら教えて頂きたいと思います。よろしくお願いします。
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- foobar
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小型冷凍機+金属系超伝導線つかった直流マグネットはすでに作られてかと思います。 JASTECからは液体ヘリウムレスのコイルが市販されています。 最近も,液体ヘリウムを使わずに小型の冷凍機で4K位にしてNbTiを超伝導状態にするコイルが作られてたような。
- anthracene
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>1GHzクラスのNMR 正確には900 MHzです。 それ以上のマシンが存在するか、また一般的に使われているものなのか、については分からないです。
お礼
ありがとうございました
補足
調べてみました。現在,930.7MHz(発生磁場21.9 T)が昨年6月時点での世界記録みたいです。記事が載っていたURLは以下の通りです。 http://www.chem.t.u-tokyo.ac.jp/appchem/labs/kitazawa/SUPERCOM/69/69_5.html 神戸製鋼のNb3Sn線材は世界最高らしいです。Oxfordも欲しがっているそうですが,ライバル会社には売らないでしょうね。着磁した高温超伝導バルク磁石によるコンパクトNMRは実現したらインパクトあると思うのですが,その前にヘリウムレス型のNMRが先に登場すると思います。その場合も液体ヘリウムが要らないですが,持ち運びは無理でしょう。手の平サイズの冷凍機では金属系超伝導線材の冷却は難しいのでコンプレッサーなどが巨大となるからです。
- anthracene
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有機化学をやってる人間なので少々畑違いかもしれませんが、No.1の方がNMRを挙げておられましたので、いつもNMRを使ってる人間として補足させていただこうかと思います。 一般に有機化合物と聞いて想像されるような、ベンゼン環が数個ある程度の化合物なら、1Hが300-500 MHzのラジオ波で共鳴する、9テスラ前後の超伝導磁石を用いたNMR装置で十分に分析が可能です。 実際、1H, 13C, 31P, 11B, 29Siなど、有機分子に入っている元素のうちほとんど全ての核が測定できます。 一方、タンパク質やDNA、あるいは近年さかんになってきていますが、生体膜の分析など、生体高分子の分析になると、なにしろ分子が巨大であるため、もっと強力なNMRが必要になります。 最近では理化学研究所がNMRによるタンパク質分析のために、1 GHzクラスのNMR(磁場にすると24テスラ程度)のマシンを多数揃えています。 特にたんぱく質の場合は、アミノ酸のつながりを分析するためには通常の1H, 13CのNMRでは不十分で、アミノ基の15Nを使ったNMRが必要になります。この核は非常に感度が低く、観測が困難であるため、このような強力な磁石が必要である一因となってます。
お礼
NMRへの応用の可能性を改めて考え直すきっかけとなったような気がします。ありがとうございました。
補足
補足入力が遅くなってしまいまして申し訳ありません。私も固体NMRをやっている者としてバルク超伝導磁石を超伝導コイルに変えて用いるのに興味があります。自分の質問に答える形になりますが,anthraceneさんのコメントを読んでいて思いついたことがあるので,ここに記します。 最近の冷凍機技術はすごくてコンプレッサー付きで片手に乗ってしまう大きさの冷凍機がありますから,これと高温超電導のバルク超伝導磁石を組み合わせれば,ハンディタイプのNMR装置が実現できるかもしれません。ただし強力な磁界をシールドしておかないと大変なことがおきますので,高温超伝導の磁気シールドも必要となるでしょう。化学用だと高速の回転機構も必要でしょうから,これは小さなボンベに圧縮ガスを詰めておくとして,装置全体の大きさはサムソナイトの旅行カバンくらいには収められそうですね。重さは50kgといったところでしょうか。これでanthraceneさんが言われた9 T程度のマグネットは実現できそうです。 実際には実現までに様々な問題が生じると思いますが,NMRに用いる最大の難関は磁界の均一度でしょう。高温超伝導のバルク磁石は,着磁に用いるマグネットの均一度を反映すると考えられるので,パルス強磁界などの方法ではだめで,高い均一度を持つ超伝導コイルマグネットが必要となりますね。これはすでに世の中にあるので,メーカに1台設置されていればよいということになります。もう一つの問題は,世の中でハンディタイプのNMR装置が必要かどうかですね。おそらく価格は相当安くなると思いますので,低価格で同一機能という売りがあれば充分市場に受け入れられそうです。 これまで使われている普通(?)の高分解能NMRの超伝導コイルは,メインの磁界は永久電流モードで発生させていますが,励磁するための電流リードを抜き差しする機構や液体ヘリウムを長時間保つためのクライオスタットの構造,ならびに磁界の均一度を高めるために,調整用のコイルが付属するなどの様々な周辺部品が装置を巨大化させています。高温超伝導バルク磁石を用いれば,これらがいっさい必要なくなるのですからコンパクト化するのは当然と言えますね。 プロトン周波数で1GHzは越えたのですか?知りませんでした。1GHz越えに関してもこのコンパクトNMRにはアドバンテージがあるかもしれません。というのはグルノーブルや筑波などにあるビッターマグネットでは30T以上の定常磁界が発生できるので,高温超伝導バルク磁石をビッターマグネットに持って行って着磁してしまえば,簡単に1GHz以上の磁界が手に入るからです。つまり次世代(?)のコンパクトNMR装置では30~40 Tの磁界を有することになるので,2GHz-NMRも夢ではなくなるでしょう。高温超伝導体の上部臨界磁界は100T以上と言われていますから,パルス強磁界による着磁によって5GHz-NMRすら可能となるかもしれません。しかもコンパクトで安価にです。まあこのくらいの磁界の強さになったら,さすがに持ち運びは御遠慮願いたいですが。
- foobar
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以下、おもいつくところを散文的に並べてみました。 バルクでだと、すぐに思いつくのは、磁気浮上や磁気ベアリングの類ですね。 磁力で支持可能な重量(圧力)は磁束密度の2乗で効いてきますので、高磁束密度だと色々構造的に変わったことが出来そうです。 例えば、1Tだと0.4MPa(4kgW/cm^2)程度の圧力しか支えられないのですが、10Tフルに使えれば100倍の圧力を支えることが出来ます。すると、同じ重量を支えるのに1/100程度の面積(同じ面積だと100倍の荷重を支えられる)で済み、これまで困難と言われていた磁気支持が可能になります。例えば、モーターやフライホイールなどを磁気支持しようとすると、面圧が制限されていると浮上面積を大きくしなければなりませんが、面圧が二桁上がると従来のすらすとベアリング程度の大きさに収まるかもしれません。 早稲田大学などではクリーンルーム用の磁気搬送システムの研究をしていますが、高磁束密度のバルクが出来ると、設計自由度の増大(早稲田のシステムは、床をはさんで浮上させてるので、高起磁力による浮上ギャップの改善はメリットが大きいです)などで、一気に応用が広がるかもしれません。 と、このように工学的には、2桁の改善は結構インパクトがあります。(場合によっては、2桁と言う量的な変化が、質的な変化を導くこともあります) また、10T超だと、水などの磁気分離に使えるかもしれません。水を磁界中を通して磁気分離して水質改善する研究がされていたかと思います。
お礼
重量を支える。さらに重量物を搬送するという使い方は面白いと思います。ベアリングが実は物を浮かしているというシーンを想像してしまいました。21世紀後半にはいろんなものが浮きまくっている世界が来るのかもしれないですね。どうもありがとうございました。
補足
水の磁気分離で探してみると九州電力の以下のようなページが見つかりました。 http://www.kyuden.co.jp/service_tech_consulting_consult16 これを見ると汚れた水に細かい磁性体を入れて,そこに不純物を吸着させてバルク超伝導磁石の磁力で磁性体ごと水から分離してしまうのですね。 1Tの磁束密度で0.4MPaを支えられるというのは初めて知りました。ということは4気圧で,10Tだと400気圧ですか!重量を支えるという視点だとかなりのことができそうですね。磁気搬送で探すとバルク超伝導磁石で物を浮かしておいてリニアモータで搬送するように見受けられましたが,これは現在の超伝導コイルによるリニアモーターカーを置き換える技術になるかもしれませんね。またかなりの重量を浮上させられるということは,場合によってはビルとかも浮かせられそうな気がします。 超伝導転移温度以下に冷却するとなるとやはり大型の機械などへの応用が主となるのでしょうか。エレクトロニクスとかその他の何か民生品に超強力バルク超伝導磁石が使用できると面白そうなのですが,すぐには考えつきそうにないですね。私は家庭で使えるか家庭生活に直結するところまで応用の幅が広がってそこに新しい市場が開かれるのが理想的だと思えるのですが。
- foobar
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(超伝導での最高記録って30Tくらいだったような) ひとつは#1の回答にあるNMRです。これは、強い磁界と同時に磁界の均一さ(時間的、空間的)も必要で、超伝導マグネットの応用の第一候補ですね。 それ以外では、例えば物性研究用の試験用マグネット(試験材料に強磁場を加えるためのマグネット)なんかも強い磁界を必要とします。(短時間なら、超伝導マグネットじゃなくて水冷マグネットなどでも強磁界はできますが、やはり連続して発生できるのは色々メリットがあるようです。) あと、超伝導マグネットは大きな空間で連続してかなりの磁界(数T)を発生するのにも有用で、粒子加速器関連、核融合用実験装置で使われたり、高周波発振管(ジャイラトロン)あたりでも使われています。
お礼
確かに加速器のビームラインや核融合のプラズマ閉じ込めの超伝導コイルを超伝導バルク磁石に置き換えれば,かなりの小型化ができそうですね。どちらも磁界の強さをスウィープする使い方ではないので,冷却しさえすれば一定の磁界を発生するバルク磁石は使える可能性がありますね。ジャイロトロンへの応用も小型化できればかなりユニークですね。ありがとうございました。
補足
やはり私の質問の仕方が悪かったものと思います。お二方がおっしゃるように,巻き線の超伝導マグネットの利用価値はいろいろあると思いますが,質問したかったのは着磁した超伝導磁石の利用法です。バルク状の超伝導磁石は,低温の世界では永久磁石と同じように考えられる(または扱える)と思うのですが,これを何かに利用できないかということをお聞きしたいのです。これまでの永久磁石と同じようなサイズや形状をしながら,1桁高い磁界を発生できるバルク磁石は何かに使えそうな気がするのですが,どうもいまひとつピンとこないので質問してみました。新しい形状の磁界発生方法ですから,これまでにない新しい利用価値があるのではないかと考えたのです。
- shkwta
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核磁気共鳴(NMR)装置には超伝導磁石が必要です。 化学分析や医療用MRI装置に使います。 (参考) http://www.nirs.go.jp/newinfo/press/2004/11_19.htm http://ltphys.sci.hokudai.ac.jp/ http://www.hosp.med.keio.ac.jp/kensa/hoshasen/ http://www.natc.co.jp/bunseki/fn-nmr.html (その他、多数)
お礼
様々な機関へのリンクを教えて頂きありがとうございました。いろいろ覗いてみようと思います。
補足
NMRへの用途はもちろんあり得ると思うのですが,医療用に限って言えばマグネットは最大でも2Tです。というのは高い磁界を印加すると脳内の水分がモーゼ効果を起こすので,人体に悪影響を起こすらしいのです。とすると医療で用いる場合には現在の超伝導マグネットを着磁した超伝導磁石に置き換えることが考えられます。それによって安価な医療用MRIができますね!またバイオなどで活躍する化学用NMRでは21Tが実用化されていますから,超伝導着磁磁石だとまだ性能不足というところでしょうか。
お礼
ありがとうございました
補足
はい,JASTECのヘリウムレスマグネットは私のところにもありますが,NMR用はまだできそうにないとJASTECの方がおっしゃってました。問題は磁界の均一度だそうです。また現在のヘリウムレスマグネットはクライオスタットも大きいし,コンプレッサーなどを含めると設置面積が広いので,コンパクトとはほど遠いですね。そういう意味で磁界の値が一定で均一度を高くできる超電導バルク磁石は最適だと思えるのですが,問題は誰がどうやって実現させるかだと思います。