- ベストアンサー
「姪」と「孫」が同じ単語である背景
文化人類学に関心のある方には面白い質問だろうと思います。イタリア語では「姪」と「孫」は同じ単語"nipote"で表します。 疑問なのは、イタリア語では「姪」と「孫」を区別する必要がないのか?ということです。これはほんとうに興味深い事実です。 他の言語での類似例があれば教えてください。あるいは、イタリア語でそうなる背景を教えてください。 質問が多くなってしまい、すみません。
- みんなの回答 (8)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
No.4です。補足です。No.5の方の網羅領域はすばらしいとおもいます。例としてあげておられるking/queenも印欧祖語にさかのぼると広義の親族名称ですね。kingは*gen-(生む)から、queenは*gwen-(女性。wはgの右肩につく)からです。 No.4では筆が滑り*nepOt-/*neptI-は一族の若者と、確認せずに書いてしまいましたが、訂正します。調べたところでは「娘、姉妹の息子/娘」を意味していたと推定されているようです。印欧祖語の話し手が形成していた社会については、男性優位の社会であり、結婚した女性は夫の属する集団に移って生活していたと推定されています。したがって、元々はともに生活していた女性の親類が結婚してから別の集団で出産した子供を意味する言葉が存在したことでしょう。ラテン語のnepOs/neptisはその要請を完全に満たしています。 たしかに*nepOt-の再建はラテン語にのみよっているようですが、それだけをもってラテン語の形が印欧祖語にさかのぼり得ないとする根拠にはなりません。上のように文化人類学的な根拠もあることですし、印欧語学の進展によって新たな同系語が発見されることもまれではありません。例えば英語のwifeも印欧語ではあるものの長らく系統不明とされてきましたが、90年代になってトカラ語の女性を意味する語と関連があることが明らかになったばかりです。 もちろん新たな進展によって私が参照した説が間違っていると証明される可能性もあります。記録も存在しない言語について理論を立てている以上そのような可能性は常にあります。参考資料を挙げておきますので、精確さを期したいとお考えならどうぞ。 Pokorny, Julius. "Indogermanisches Etymologisches Woerterbuch." この本は1959年刊でしかも内容が30年代間での研究を中心にまとめられているので、情報が古いことは確かですが、印欧祖語の研究内容が一冊で把握できる点では便利な辞典です。 Watkins, Calvert. "Indo-European and the Indo-Europeans." In American Heritage Dictionary of English Dictionary. 4th ed. 2000. Boston: Houghton Mifflin. 印欧祖語とその研究方法についてきわめて簡潔に記したエセーです。所載はアメリカの英語辞典ですが、この辞典には見出し語の語源を印欧祖語とセム祖語の語根にさかのぼるAppendix A and Bを巻末に付しています。語源学研究の成果とはかくあるべしという壮観です。
その他の回答 (7)
- Shimo-py
- ベストアンサー率61% (170/275)
親族関係語彙は興味深いものがありますね。 (1)祖父江孝男『文化人類学入門』(中公新書)に、確かその他の言語での親族関係語彙について、少し触れる箇所があったと記憶しています。(今海外駐在で確認できない) (2)英語の例、と言っても古くて恐縮ですが、8世紀~9世紀ころの作と考えられる古英語の叙事詩『ベーオウルフ』では、nefa (現代英語の nephew と間接的に関連あり)という単語が5回用いられています。そのうち4回は「甥」の意、残る1回は「孫」の意です。 (3)ラテン語 nepos がフランス語をとおして現代英語の nephew になったわけですが、ラテン語 nepos は「男の子孫」のことで、「孫」「甥」を含み得るわけです。
- junt
- ベストアンサー率38% (97/254)
昨夜 映画『十戒』を観たんですが、古代エジプトのファラオが自分の実の息子も『我が息子』と呼び、妹の息子(甥)も『我が息子』と呼んでいたんですが参考になりますでしょうか? 全然的外れの回答でしたらすみません。
- lupinletrois
- ベストアンサー率76% (702/917)
nipote をイタリア人が2つの意味があると感じているか、同じ親族の子供と感じて いるかはわかりませんが、区別する意識が薄いと思います。 No.4 さんの意見名ほぼ同意ですが、ラテン語が印欧祖語を語れるほど古い形を残し てるとは思いません。 ルーマニア語でも nepot/nepoata で孫・甥/姪です。(-oata は女性形語尾) おそらくラテン語が東(イタリア語・ルーマニア語)、西(フランス語・スペイン語)に 分かれたときに東に残ったのでしょう。 ただ、ラテン語ではひ孫・やしゃごも派生語ですがありました。 ・nepos nepotis : grandson /-daughter ・pronepos proneptos : great-grandson ・abnepos : great-great-grandson 。 必要があるときは figlio/a di figlio/a か figlio/a di fratello o sorella で 明示するのでしょう。ルーマニア語では、孫は祖父母の子と表現しますが。 デンマーク語では barnebarn sosterson broderson sosterdatter とそのままです。 (訳:子の子 姉妹の息子 兄弟の息子 姉妹の娘) また、デンマーク語では 兄と弟、 姉と妹をよく使い分けます。 (訳: storebror lillebror storesoster lillesoster) 日本・中国・台湾では、戸籍があって親族関係を明示したのでしょう。 長男などの概念があり、漢字では伯父(母)と叔父(母)を使い分けます。 ベトナム語では、「おじさん・お姉さん」など親族名を二人称に使いますが、年下に は「弟・妹」も二人称として使い分けます。(日本語よりも日常的に他人に対しても) ヨーロッパ王家の場合、王の子・孫・甥・姪 すべて prince/princess (英語)です。 継承権一位の皇太子という用語があるのもデンマーク語くらいです。 ( kronprins =[ crown prince]) queen も女王・王妃をわけません。女王の夫は king とはいいませんが。 注) デンマーク語・ルーマニア語の母音の付加記号は省略してます。
- melechjapani
- ベストアンサー率57% (31/54)
No.1の方のラテン語に由来するのではないかという推測は正しいと思います。男性形nepOs(大文字母音は長母音を表すことにします)、女性形neptisというラテン語は甥/男孫、姪/女孫を意味します。最も古いラテン語、またラテン語よりも古い時代にはこの語は、年若い一族のものを意味したのではないでしょうか。Julius Pokornyという学者は印欧祖語の形としてnepOt-を再建しています。 ロマンス語では元の語の二重の意味を残した単語(It. nipoteなど)を使っているとのことですが、それはイタリア語が「姪」と「孫」を区別できないという意味ではありません。ただ、いちいち区別する必要がない、また区別しようとすると「子供の子供」とか「兄弟/姉妹の子供」などややこしい言い回しに頼らざるを得ないという状況は予想できます。 ロマンス語ではありませんが、英語のnephewとnieceも、それぞれnepOt-の男性形と女性形をフランス語を介して移入した語です。それぞれ「甥」と「姪」のみを意味しますが、同じ英語でもnepotism(縁故主義)という語があります。この語は影響力のあるものが自分の身内を重要な地位に取り立てたり便宜を図ったりすることを意味します。nepotismの対象は必ずしも自分より若い世代に限定されませんが、「一族の庇護すべき立場のものに手を差し伸べる」身びいきさと解釈すれば5000年以上前の語といわれるnepOt-の元の意味は完全には失われてはいないといえるでしょう。 nipoteに限らず、ロマンス語、またゲルマン語やスラヴ語、インド語などを含めた印欧語族の親族名称に関しては様々な研究があります。『印欧語の親族名称の研究』(風間喜代三)などを参考にされてはどうでしょうか。
フランス語だと 孫はpetite-filleで、姪はnieceになります。イタリア語のnipoteは ラテン語のnepotisに由来し、原義は「孫」です。この言葉は フランス語の neveu(甥)の語源でもあります。それから petite-filleはハイフンを取ると「小さな女の子」という意味になります。
日本語です。「姪」と「孫」とは逆なんですが、日本語の方言で「ばっちゃん」というと「おばあさん」を意味する地域と「おばさん」を意味する地域があります。もっとも「おばさん」と「おばあさんも」"ば"を伸ばすか伸ばさないの ちょっとの差なんですがね。
お礼
鋭い観察力ですね。どうもありがとうございました。
全てを調べたわけではありませんがロマンス語では多分似たような表現ではないかと思います。なぜならラテン語が孫と姪を同じように表現するからです。スペイン語ではnietoですが、孫、子孫の意味がありイタリ語と同じです。甥はsobrino. これから先は推測ですが、もともとの言葉は人の子供の子供を指していたものと思われます。つまり、お前、お前の子供、お前の子供の子供です。それが段々と使う範囲が狭くなって息子や娘の子供、つまり孫の意味となり、広く子孫(血のつながりがある)を意味するように なったのでしょう。では姪はどう説明されるのか・・・分かりません。ラテン語に鍵があると思いますが・・
お礼
ことばが特殊化したというわけですね。 おもしろい説です。 erudite とはあなたのような人のためにある!と思います。
お礼
nepotism nephew nieceが語源で関連しているとは心地よい驚きです。 さっそく推薦された本も読んでみます。どうもありがとうございました。