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複雑系とカオスの違いと活用状況、量子力学との関係について
- 複雑系とカオスは異なる概念です。複雑系は決定論的な系において確率的な振る舞いをすることを指し、カオスは微小な変化が系全体に大きな影響を与えることを指します。
- 複雑系やカオスの理論は現実の社会や自然現象の解明に活用されています。例えば、気象予測や経済の変動予測などに応用されています。ただし、まだ完全に確固たる理論とは言えません。
- 複雑系の定義における確率的な振る舞いと量子力学の確率波との関係はありません。複雑系では確率的な振る舞いが決定論的な系において現れることを指します。量子力学の確率波とは異なる概念です。
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まず最初に断っておきますが、私はカオスや複雑系 を専門に研究している者ではありません。人工知能や 認知科学など計算機科学に携っているものとして、 関連分野に関して培ってきた知識に基づいて書きます。 > 1、複雑系とカオスとはどう違うのですか? 複雑系には現在、明確な定義は無いように思います。 最もよく聞く複雑系の説明は、システム(系)の要素の 性質や挙動を調べても、システム全体の性質や挙動が 記述できないシステムの事である、というものです。 例えば、脳のニューロンの挙動が正確に分析できた としても、脳の機能の全てを説明することはできない、 といったイメージでしょうか。 で、カオスとの関係ですが、捉え方は色々あると思います。 ・上記の複雑系の性質を持った現象を生み出す 関数がカオス関数である ・複雑系の挙動を定量的に記述するための一つの 方法がカオスである ・カオス的挙動をするシステムは、複雑系の一つの 例である まあ、言ってることはどれもほぼ同じですが。 カオスと同じく複雑系の一つと考えられる理論には以下のような ものがあります。多分他にもあります。 ・非線形性。(カオスの必要条件ですから当たり前ですね) ・フラクタル(における自己言及性が、下の自己組織化システムなど 新しいシステム理論で注目されています) ・自己組織化システム。個々の要素の持つ性質とは全く 別の性質を持つシステムが要素間の相互作用から 自然発生的に生まれる。社会システム、生体システムなど。 カオスや非線形の理論は数学、力学、工学(振動論)などの分野で 研究されています。自己組織化システムというのも「複雑系」と 同じく曖昧な言葉ですが、基本となる理論はプリゴジンらの 非平衡統計熱力学です。 > 2、複雑系やカオスの理論は今実社会でどの程度活用されているのですか? カオスは複雑系の諸理論の中でも最も体系的な研究が為されているように 思います。応用としては、 ・多様性を発生させるために利用(良い乱数発生器として) - 暗号理論 - 多様な挙動が求められる機械システム(マイナーな例かも知れませんが、 ある食器洗い機に応用されてると聞いたことがあります。ノズルの 軌跡が周期的だと、食器に当たる洗浄水にムラができるので) ・カオス的挙動を示すシステムの予測・制御 - 振動の予測、制御 - カオスニューラルネットワークなど 本来的にカオスを内包しているだろうと思われるシステムを真似て 作った人工システムの動作方程式の中に、カオスを組み込んで やったらどうなるかな?って感じでしょうか。 自己組織化システムに関しては、実社会での応用とまでは行ってない気が します。応用研究としては、 ・人工生命 ・機械学習理論 ・ロボット制御 ・画像処理 など、計算機科学の多くの分野に影響を与えています。 フラクタルは自然地形のCG合成や、一般には余りはやってませんが画像圧縮に 使われたり、また、面白い図形が出るのでアートに使われたりします。 あと、うろ覚えですが、低解像度の航空写真から鮮明な画像を得るために フラクタルによる処理が使われてたように思います。 > 3、本には複雑系の定義として「決定論的な系における確率的な振る舞い」 > と書いてありましたがこれは量子力学の粒子の物質波(確率波)を連想して > しまいそうですが粒子の位置が確率で記述されることと複雑系には何か関係 > はありますか? 量子力学は昔1つ2つ講義を取ったかなぁ(単位を取ったではない)って感じ なので詳しくないですが、不確定性原理から位置と速度を同時に一意には 決められないから量子の状態は確率分布として表される、と言った理解で いいんでしょうか? だとしたら、私はあまり関係無いように思います。 量子力学で確率が導入されるのは、量子の状態が「原理的に」一意に 観測できないから。 一方、「決定論的な系」というのは「原理的に」その系の構成要素の 状態は一意に決定されます。しかし、構成要素の記述から系全体の 記述を導くことができないのが複雑系ですから、構成要素の 状態が一意に決定されても、そこから系全体のマクロな状態を知ることは できません。例えば、分子の運動から閉鎖系内の気体のマクロな状態を 計算するには、分子の数Nが多すぎますし、さらに衝突など分子同士の 相互作用を計算するにはN*Nのオーダーの膨大な時間が 必要になってしまいます。 また、カオス系について言うと、決定論的に系が進展しますので、 初期状態さえ分かれば、任意の時刻における系の状態は、初期状態から目的の 時刻まで順に発展方程式を適用してやれば「原理的に」一意に計算できる ことになります。しかし、初期状態の変化に対して系の挙動が 非常に不安定であるため、時刻tと初期状態x0を与えればそのときの系の 状態が一意に出力されるような関数は記述できず、確率的に表現する しかない、というのが、カオスにおける「決定論的な系における 確率的な振る舞い」の意味するところだと私は思ってるんですが、 この辺はちょっと自信がないです。 まとまりがなくなってきましたが、私が感じている両者の違いは、 ・量子力学における不確実性は、観測の限界によるもの ・複雑系における不確実性は、系の大規模性、系の構成要素間の 相互作用の複雑性(tautology?)、系の挙動の不安定性、 などによるもの であると考えています。