熱力学第二法則について(基礎)
以下の質問に答えてくだされば幸いです。
・カルノーサイクルに対する理解
カルノーサイクルとは事実上熱をやり取りする熱源が2つの場合のサイクルの1つ。
熱効率を無駄に下げないためには不可逆変化があってはならない。
そこで,作動流体と熱源は接しているときは同じ温度でなければならない(温度差があれば不可逆変化となってしまうから)。
つまり,接しているときは等温変化のみが許される。
しかしそれだけでは双曲線を描くだけでサイクルにはならない。
もう1つの熱源を利用したいがそのままでは温度差があるのでだめ。
そのためには作動流体の温度を第2の熱源の温度まで変化させなければならない。
温度を変化させるのだから熱源と熱のやり取りは出来ない(温度差によって不可逆過程となる)。
それ以外の熱源とは熱のやり取りをしてはいけないので,断熱変化しかない。
断熱変化で第2の熱源温度まで変えてやり,そうなれば第2の熱源と接させて等温変化。
以下,同じ理屈によりサイクルが完成する。
不可逆過程はなかったので最大熱効率が実現されている。
質問1.不可逆過程があれば熱効率が無駄に落ちるという事実(エントロピー生成)を使っていますが(理論あるいは歴史的には逆なのかもしれませんが(?)),それを既知とすればカルノーサイクルに対する理解はこれであっていますか。
・準静的過程と可逆過程について
次のようなサイクルを考えます。 サイクルCと名づけます。
状態1 p=√(RT0) v=√(RT0)
状態2 p=2√(RT0) v=√(RT0)
状態3 p=2√(RT0) v=2√(RT0)
状態4 p=√(RT0) v=2√(RT0)
状態1→2:定積変化
状態2→3:定圧変化
状態3→4:定積変化
状態4→1:定圧変化
先ほど最大熱効率を目指せば,2熱源では等温変化と断熱変化しかできませんでした。そこでサイクルCを多数のカルノーサイクルによって分割して考えます。そのためにサイクルCを描いたpv平面に等温線と断熱線を多数描き,多くのカルノーサイクルを描きます。分割後,隣り合っているカルノーサイクルの共通曲線部は可逆だったので打ち消しあうので(向きが逆なので),サイクルCはカルノーサイクルで近似出来ます.
質問2.以上よりサイクルCは可逆過程で,最大熱効率であると考えてもいいですか。
質問3.熱効率の計算の仕方についてです。多数のカルノーサイクルによる近似を用いるので,もちろん各カルノーサイクルに固有の熱源温度TH,TLがあると思います。そのうちそれぞれの高温熱源TH1,TH2,…,TH∞から得た熱量がQH1,…,QH∞となり,それらの総和が熱効率の分母となり,分子は外部にする正味の仕事(サイクルCに囲まれる面積)RT0ということでよろしいでしょうか。
質問4.実際に熱効率を計算する場合は,熱を得るのは状態1→2,2→3の過程なのでそこで得た熱量を分母として計算するのでしょうか。得た熱量は実際には,
過程1→2でcv(T2-T1)
過程2→3でcv(T3-T2)+2RT0
となります(理想気体)。
サイクルCの最高温度はT3,最低温度はT1(=T0)ですが,質問4の方法で計算すると,理論最大熱効率である1-T1/T3となりません。
質問5.そこで最後の質問なのですが,サイクルのpv曲線は無限に描けます。しかし曲線によっては熱源の数が2だったり100だったり無限大だったりします。2熱源の場合の理論最大熱効率は1-TL/THですが,サイクルCでは上述のとおり質問4の方法で計算してもそれと一致しません。熱源の数によって最大熱効率は違うのでしょうか(おそらく質問3の方法だと一致するはずですが)。