- 締切済み
衝撃荷重が鉄鋼材料の疲労強度を低下させるのは何故
- 衝撃荷重が鉄鋼材料の疲労強度を低下させるメカニズムについて、繰り返しの衝撃荷重により安全率が低下し、疲労寿命が大幅に短くなることが知られています。
- 衝撃荷重が鉄鋼材料に与える影響は、これまでの力学や工学の参考書では詳しく解説されていない部分です。
- そのため、衝撃荷重による鉄鋼材料の疲労強度低下のメカニズムはまだ解明されていない可能性もあります。
- みんなの回答 (15)
- 専門家の回答
みんなの回答
まず「衝撃荷重」の定義。 定性的だが、文献(1)のまえがきにあるように「物体の衝突により発生する荷重」、例えば歯車の歯、ローラーチェーン、ドットプリンタなど。 衝撃荷重は荷重速度が0.1~1msecの世界であり、「荷重速度が速い通常の試験」とは異なることに注意。例えば、荷重サイクル60回/秒の回転曲げ疲労試験結果と、荷重サイクル1回/秒の油圧サーボ単軸疲労試験結果はほぼ同等。なおランダム波形疲労試験は通常の試験の一種。 一方文献(2)図5にあるように、衝撃疲労強度は静的疲労強度(回転曲げも含む)よりも明らかに低下する。 その理由は二つある。 まず「荷重速度が速い通常の試験」でも見られる荷重速度の影響。荷重速度が高いほど破壊強度は高くなり、破壊は脆性方向に変化する(例えば文献(3)図21)。大雑把に言えば、破壊進展が速く転位の動き(変形)が追い付かなくなるため。 もう一つは衝撃荷重の時にだけ見られる、回答(2)にもある「応力波」の影響。文献(4)第6項にあるように、伝播する波と反射した波が重畳し、荷重が大きくなることがあり、試験片寸法や支持構造が影響する。 「疲労寿命が1/10」は低サイクル疲労での話。疲労限が1/10になるわけではないことに注意。 「大雑把に言えば、破壊進展が速く転位の動き(変形)が追い付かなくなるため」は少し判りにくい表現でした。 荷重速度が遅い場合は、転位の発生蓄積移動→塑性変形が起こり延性破壊になります。荷重速度が速くなるに連れて、転位の発生蓄積移動量→塑性変形量が減少し、次第に脆性破壊に近づきます。 この点についての参考文献(5)「鋼材の脆性破壊(その2)」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/hpi1963/5/1/5_1_934/_pdf 追加質問の件。 粒界破壊は脆性破壊の一種ですが、粒界の脆化が原因ですので、通常荷重速度で粒界破壊していない材料に衝撃荷重をかけたからと言って粒界破壊になることはありません。 荷重速度による破壊形態の変化の場合は、延性破壊から擬へき開破壊に変化します。 もともと脆性破壊している材料では、荷重速度の影響は小さくなります。 追加質問の件への回答を訂正します。 荷重速度の増加により延性破面から粒界破面に変化することもありそうです。さらに調べてから再度回答します。
>逆に衝撃荷重のピーク値が振幅一定と同じ値なら、衝撃の方が寿命が長くなるはず。 >→これと逆の結果が実験で出たとしたら、どんな理屈が考えられるでしょうか。 衝撃荷重のピーク値を実測しているならば、測定系の応答速度が不十分で、 真のピーク荷重を検出できていない可能性を疑います。 さらには、荷重を測定する部位と、実際に応力が集中する部位との応力の差 を検討する必要があるかもしれません。 衝撃荷重のピーク値を実測しているのではなく、衝撃荷重の平均値やその 変動からピーク値を推測しているならば、推測の考え方と実際のシステムの 挙動との間に乖離があると疑います。要するに、システムのモデリングが 不十分ということです。 さらには、 悪路を走る自動車の例を考えれば理解しやすいと思いますが、衝撃力のピー クは一定ではなく、観測時間を長くすればより大きなピークを観測すること になります。従って、製品に期待する寿命に対して、どの程度の観測時間の 衝撃荷重データを適用するかも重要なファクターと思います。 回答(2)さんのご指摘の通り、衝撃荷重の定義はかなり曖昧と感じています。 黒猫さんがこの森に登場されたので、私のような素人が回答を記載することは 質問者さんや読者の方々に貢献しないかもしれません。 悪あがきかもしれませんが、衝撃荷重の定義はかなり曖昧と感じている理由を 少々書き込ませて下さい。 アンウィンの安全率が古すぎる概念であり、衝撃荷重の安全率を12とすること についての議論は、皆様ご指摘の通りと思います。 本質的には、衝撃による波動が物体の中を伝わって(何回かの反射を繰り返し て)定常化するまでの時間に比べて、衝撃力の立ちあがり時間が速い場合を 衝撃と扱うことが適切であると理解しました。 しかしながら、衝撃を受ける物体の挙動と衝撃力の立ちあがり時間を比較し て、衝撃として扱うことが適切であるある旨断って記載している情報は乏し く、旧態依然のアンウィンの安全率を適用する場合の扱い方と大きく異なる ことがない場合が多いのではないでしょうか? 限られた情報を通じて素人が感じていることですから、不適切かもしれませ ん。ご質問者さんのスレッドを借りて恐縮ですが、私の考え方がおかしけれ ばご指摘頂けると有難く存じます。 私が参考にした資料: http://www.ms.t.kanazawa-u.ac.jp/~design/tachiya/text/impact.pdf http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%85%A8%E7%8E%87
繰り返しって書いてあるから 繰返し応力
衝撃荷重とは何ぞや? この定義が曖昧なきらいがあると思います。 旧態依然とした設計では、荷重条件がよく判らないから12どころか 安全率参ったかの18倍カレー とにかく増やしとけ、、、なんてのがまかり通る。 繰返荷重とはS-N曲線を得る為の振幅一定な疲労試験そのもの。 衝撃荷重とはランダムな繰返荷重で、それは平均振幅より大きなものが混ざってくるから振幅一定より寿命が短くなるのは道理。 逆に衝撃荷重のピーク値が振幅一定と同じ値なら、衝撃の方が寿命が長くなるはず。 ランダム振動は確率現象として定義されるが、その定義をクリアにすれば疲れ強さも定まる。 これは製品輸送の振動試験方法で定まってきたが、構造体の疲労試験でもこのような例。 https://ansys.jp/news/images/pdf/vol2_issue3_2008/AN-Advantage_vol2_Iss3_08_15.pdf もうひとつの議論は波動。衝撃パルスで大きな構造体を加振すると伝搬するにつれ反射と重なりが生じて元の振幅より大きくなることがあり、それは破壊を増悪。1.17の20周忌でもあって地震特番で話題に。 衝撃荷重の発生源として重量物の落下(バウンド)があり、大きな値になる。 しかし条件が定まれば荷重値が確定するから、試験としては発生源にさかのぼることはない。 考えとしてはそれほど難しくないが、深めようとするとランダム振動の扱いに数学知識が必要です。輸送の振動試験でマイッタ!! http://www.nams.kyushu-u.ac.jp/~yasuzawa/strength/alwbl-str.htm 許容応力と安全率 基準強さは •静荷重に対しては、引張強さまたは降伏点。 •繰り返し荷重に対しては疲労限。 •圧縮に対しては、座屈限界応力。 •衝撃荷重を受けるものに対しては、その影響を入れる ⇒⇒⇒ 前項より高いも低いも有得る 許容応力の大きさはこれらの基準強さより小さい値を用いるが、その理由は、 •使用材料の不均一性 •荷重の見積もりの不正確さ •応力算定の精密程度 •不連続部における応力集中 •腐蝕による衰耗 •工作の精度 などを総合的に考えて決定されるものである。許容応力を決定する基準強さと許容応力との比を 安全率(safety factor)と言う。すなわち、 (材料基準強さ)/(許容応力)=(安全率) (>1) であり、必ず1より大きい値である。 この手順が妥当。そして安全率は~2でよい。 基準強さは引張強さだけを用い、衝撃荷重には安全率12などとする古臭い論は捨てるべきです。 疲労試験では波形が選べます。 http://www.shimizutech.co.jp/inspection.html 常温疲労試験 制御対象:荷重、ストローク、外部入力、ひずみ制御 制御波形:三角波、正弦波、矩形波、台形波、ランプ波等 (プログラム作成により任意波形可) 厳しい結果になるのは、矩形波ではないでしょうか? ステップ状に変わる加速度が大きいし、最大荷重の時間が長い。 標準的には三角波や正弦波。それはあまり変わらず穏やかな波形。 比較されての結果ですか? 上記試験でも衝撃なんてのはなく(全く別の試験)、安全率12の根拠は書いたように無い、それで如何なる設定をされたか是非聞きたいところです。
補足
>>逆に衝撃荷重のピーク値が振幅一定と同じ値なら、衝撃の方が寿命が長くなるはず。 →これと逆の結果が実験で出たとしたら、どんな理屈が考えられるでしょうか。 実験した事は無いですが、論文などを見ると試験波形はピーク値を等しくしてあるようです。そして、高サイクル領域ではひずみ速度が速いほど寿命が短くなるという結果が得られているようです。
先ず大きな力が走り易い表面は、微量な欠損がないこと。(当然、応力集中形状は不可) 鉄鋼等は鏡面研磨で、や樹脂&ガラスは表面アニール。 表面程大きな力が走らない内部も、内部欠損で応力集中が発生しないや、鍛練又は塑性加工 目と応力が走る方向を合わせる、等々ですよね。 それに加え、応力が走る(伝播)の微量欠損への伝播衝撃や伝播ウェーブのより戻し。 波が、より戻しで大きくなったり、岩で波飛沫が大きくなったり、のようなもの。 通常の荷重と、衝撃荷重の違いは、例えば材料が応力で伸びる速度の違い。 伸びる速度の違いは、全てではないが、菓子袋を明ける際に、 * じわっと大きな(目一杯の)力を加えるより ※ 素早く力を加える方が (内部の接着部に加える)力が、結果的に大きくなり、又は破け易くなり、 開封できる、破損しやすくなる、と考えてください。 衝撃荷重とは、微小のピーク荷重が、設定荷重を超えるのではなく、 荷重が掛かる速度が非常に速くなので、 結晶構造の応力に対しての不均一が、素早い引張や圧縮のに対して、微小損傷を起こし、 又は、隣り合う結晶構造間でも、同様の応力伝播が発生し、応力伝播も不均一になると 云われております。 緩やかな応力伝播と急な応力伝播では、単位時間当たりの変化(力積的考察)で考えますと、 後者が大きくなり、前述の微小損傷を起こし易い原因となります。
お礼
応力波の干渉が原因という事でよいですか? 後半の内容がよく分かりませんでした。 ありがとうございました。
補足
ではなくて、後半の話もお願いします。 これはバネマス系に重力がランプ状にかかるのと 重力がステップ状にかかるときの差の事を言ってますか?
- 1
- 2
補足
文献ありがとうございます。まだちゃんと読めていませんが、転位が追いつかないということは、もし破壊する時は結晶粒界で割れるんでしょうか? よく読んでみます。