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金型の熱処理におけるベイナイト析出と靭性低下
- 金型の熱処理において、焼入れ時の冷却が遅いとベイナイトが析出し、靭性が低下します。
- ベイナイトが析出すると靭性が低下する理由について詳しく教えてください。
- 金型の熱処理におけるベイナイト生成域の冷却時間と金型の靭性や衝撃値の関係についても教えてください。
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回答(2)の続きです。参考URLがあるので別投稿にしました。 4.「衝撃値は20J/cm2以上」。熱間金型(特にダイカイト型)では、ヒートチェックを起点とする型の大割れが最も嫌われる事故です。これを防ぐための目安として、よく言われている数値です。しかし金型分野の文献で、この根拠を明示した文献は見たことがありません。しかし破壊力学を勉強してみると、根拠になっていると考えられる事実が出てきます。 文献(a)はその一つです。脆性力学が誕生発展したきっかけになった事故の一つに、全溶接船の脆性破壊事故があります。もちろん溶接部の靱性を確保する技術が重要ですが、使用する鋼材の品質も問題になりました。文献(a)はシリーズになっており、この第5回では、鋼材に対する品質要求の経緯が解説されています。詳細は読んで頂くとして、要は、脆性破壊を防ぐためには、使用温度での鋼材の衝撃値が15ft-lb(2.1kgm)以上が必要であるとされました。小生は、これが根拠になっていると考えています。 ただ文献を読むと判りますが、多少問題もあります。もともとは2mmVノッチシャルピーでの評価ですが、通常SKD61で用いられているのは2mmUノッチシャルピーです(Vノッチよりも高くなる)。また破壊力学では、破壊を防ぐには、鋼材が厚くなるほど、より高い靱性値が必要になります。この辺りは無視されて「衝撃値は20J/cm2以上」が一人歩きしています。 質問は、ダイカスト型の熱処理に関わる技術者ならば、必ず知っておくべきとも言える事項です。大変的確な質問と言えます。 ついでに回答を書きながら感じた事。(1)今回述べたような内容は通常のWEB検索では出てきません。ベテランの回答者のみなさんを含め、もっと文献検索をやって頂けると、質問回答のレベルが上がります。検索する時に、PDFを付け加えるのも一つの方法です。(2)工具鋼の熱処理特性に関して、構造用鋼の知識での答えが目につきます。SK、SKSまでは良いとしても、SKDとSKHについては、全くと言っていいほど違います。その点の配慮をお願いしたい。
大変古い質問ですが、質問内容が重要で、その答えを知ることは非常に有意義であること、にもかかわらず回答が不適切であることから、投稿します。 1. 回答(1)が不適切な理由。質問は金型用鋼、さらに明記してありませんが、内容からSKD61などの熱間工具鋼に関するものです。回答(1)は炭素鋼に関するものです。炭素鋼でのベイナイトはTTT曲線図には出てきますが、CCT図には出てきません。つまり「焼入れ時の冷却が遅いと」には答えられません。 2. ベイナイトによる靱性低下。文献(1)(2)を読んで下さい。マルテンサイトは炭化物を含まない組織であるのに対し、ベイナイトは、見かけはマルテンサイトに似ていますが、実態は「炭化物+フェライト」組織です。このため焼戻時の炭化物の析出成長がマルテンサイトよりも速く、その結果、焼戻ベイナイトは焼戻マルテンサイトよりも靱性が低くなります。回答(1)とは異なる現象です。 3. 「30分以内」の意味。SKD61のCCT図でベイナイトが出現する最高の冷却速度変は、文献(1)によれば、焼入温度からMs点(約300度)までが30分です。つまり300度までの冷却時間が30分以上になると、ベイナイトが生成するということです。室温までが30分ではないことに注意して下さい。文献(2)では、その時間が約1時間になっています。この差の原因は不明です。 4.「衝撃値は20J/cm2以上」。広く言われている有名な言葉です。長くなるので、別途投稿します。 3.項の訂正。文献(1)での30分の解釈を間違えました。ベイナイトが生成するのは半冷時間15分以上ですから、「焼入温度から室温までが冷却時間が30分」になります。一方文献(2)の約1時間は前述の通りです。
ご質問から時間がたっておりますが、回答がないようですので、 私の個人的見解を述べさせていただきます。 ベイナイトは炭素鋼や合金鋼の組織の一つであることはすでに ご存知のことと思います。 ベイナイトは上部ベイナイトと下部ベイナイトに大別されます。 炭素鋼の場合には上部ベイナイトから下部ベイナイトへの遷移温度は低炭素鋼の 823Kから0.8%Cの623Kまで変化します。 冷却速度が遅くなると粗い板状の上部ベイナイト組織になってしまい、 靭性が低下してしまうのです。 ベイナイト変態が発生する温度域で、変態発生温度は変化します。この温度域の冷却速度が遅いと上部ベイナイト組織が発生します。 それでこの上部ベイナイト組織を生成させないため30分以内での冷却 が必要になるのではないかと思います。 ご参考にしていただければ幸いでございます。 それはベイナイトの組織の違いに起因すると考えられます。 上部ベイナイトは羽毛状組織で下部ベイナイトは針状組織です。 なぜ、ベイナイトで羽毛状組織のほうが針状組織より靭性が低いかという ことまでは私には分かりませんが、大まかな靭性の順位は分かりますのでご参考までに 以下に補足しておきます。 炭素鋼の場合は靭性は組織、結晶粒度、化学成分に依存します。 靭性低下の組織の順位は上部ベイナイト、フェライト+パーライト、マルテンサイト、下部ベイナイトです。つまり、上部ベイナイトの生成はこの中の組織の中で最も靭性を低下させてしまうということなのです。
お礼
御回答ありがとうございます。 もう少し掘り下げてお聞きしますが、何故上部ベイナイトが析出すると靭性が低下するのでしょうか?