補足ありがとうございました。
結論から先に書きますと,
○広辞苑5版の発行以後に何かが変わったわけではない。
○少なくとも1973年以降,送り仮名の基本方針は今に至るまで同じ。
○本則と許容がある場合,多くの辞典ではどちらか一方の表記だけ示しているが,他方が誤りということではない。
ということです。
いまたまたま手元に『明鏡国語辞典』があったので,凡例を見たところ,送り仮名については「原則として,本則に従う。」と書かれています。
『現代』のほうはわかりませんが,多くの辞典では,本則・許容のすべてを掲載すると
煩雑になるので,それぞれの辞典ごとに方針を決めた上で,どれか一つか二つ程度を掲載しているのが普通だと思います。
なお,「2002年以降の辞書には許容が載っていない」と書かれましたが,それ以前の辞書でも本則だけという辞書はたくさんあったと思います。
手元の『デイリーコンサイス国語辞典』第1版(1991年)でも,「本則と例外に従った送り仮名だけを示し,原則として許容の送り仮名は示さなかった」となっています。「すばらしい」は「素晴らしい」です。
というわけで,「見出し語の表記に書かれていない」からといって,それだけで「間違い」と判断するわけにはいかず,最終的には「送り仮名の付け方」の規則に照らして考えることになるでしょう。
「すばらしい」の場合,動詞「晴れる」を含むので,「動詞の活用形又はそれに準ずるものを含むもの」に当てはまりますから,元の動詞「晴れ」に合わせて「素晴らしい」とするのが本則。
活用語尾以外の部分は送らなくてもよい,ということで「素晴しい」とするのが許容です。
なお,現代口語では「すばらしい」は語幹「すばらし」+語尾「かろ,かっ・く,い,い,けれ,○」と活用しますので,「し」は語幹に入ってしまっていますが,歴史的には「シク活用」といって,「し」の部分も活用語尾でした(語幹「すばら」+語尾「しく・しから,しく・しかり,し,しき・しかる,しけれ,しかれ」)。
このため,今の仮名遣いでも「語幹が「し」で終わる形容詞は、「し」から送る」という例外が定められています。
以下おまけの話。
日本語変換ソフトのATOK(私が使っているのはATOK17です)では,環境設定で「本則」「省く」「送る」「すべて」の4通りを選べます。
「本則」はその名の通り「本則」に従った表記。
「省く」は,本則・許容のうち短い方。
「送る」は,同じく長い方。
「すべて」は,変換候補に両方表示される,というものです。
なかでも,「省く」は『広辞苑』より徹底していて,これを選ぶと,「うかぶ」は「浮ぶ」しか出てきません。
私は「すべて」にしています。今書いているような文章の時はこれでないととても不便です。
(もっとも,普通の文章の時は逆に,気をつけないと二通りの送り方が混在するおそれもありますが)
お礼
本当に丁寧にありがとうございました。本日図書館に行って調べたのですが、自分では何もわからず残念な思いをして帰ってきたところです。疑問が解決して晴れやかな気分です。ありがとうございました。