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天文図と天体図の違いは
昨日(2016/9/23)、今日とNHKニュースなどで「世界最古のキトラ古墳の天文図・・・」の報道が流れています。キトラは7世紀のもの。エジプト・デンデラのハトホル神殿にある円形天体図はクレオパトラ7世時代のもの。他にも洞窟などには紀元前の星座などが描かれているのでは・・? 太陽、星、月に関係するキトラより古い絵は、世界中にいくらでも存在しているのではと思っています(私の間違いでしょうか)。 天文図と天体図はどう違うのでしょう。もし同じものなら、キトラの天井図が世界最古の説明は間違っているのでは・・・と不思議に思っています。解説をよろしくお願いいたします。
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語義の違いを考えると、天文は「天体に起こるさまざまな現象の学問」で、特にこのご質問についてはキトラ古墳のものですから時代を考慮して、「天空に起こるさまざまな現象を観察して吉兆を占う」で、一方、天体は「宇宙に存在する物体、物質の総称」ということになるでしょう。それぞれに対する図が天文図、天体図になるわけですが、必ずしも区別できるとはいえません。 とはいえ、そういうことを突き詰めても仕方なさそうです。キトラ古墳の天文図が「世界最古」なのはおかしいのではないか、という疑問がご質問の主旨でしょうから。お考えの通り、間違いです。東アジア最古とされることはあっても、決して世界最古ではありません。 キトラ古墳報道で言われている「天文図」とは「星宿図」も含むような古代中国式のものであり、東アジアにしかないタイプです。正確に言いなおせば、「キトラ古墳の天文図は本格的(描いた範囲が広い)で現存するものでは東アジア最古とされる」(~とされるのは異説もあるから)で、さらに古代中国式の天文図は東アジアにしかないわけですから、「日足アジア最古」を「世界最古」と言い換えても嘘ではないとなるでしょう。しかし、嘘ではないだけで、ミスリードと言われても仕方のないものでしょう。 天文図を広義に「天体を含めて空の様子を描いた図」と解するなら、キトラ古墳のものが世界最古ということはできないでしょう。例えば、古代ギリシアでの今も使う星座、古代エジプトなどでの天体観測由来の正確な暦などを考えれば、世界最古のわけがないことは自明です。
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- staratras
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NHKのサイトを見ますと、「世界最古とされる本格的な天文図の壁画」や「本格的な天文図としては世界最古とされています。」という慎重な表現になっています。この天文図は「星図」を意味していると見られます(朝日新聞は「星図」と書いています)ので、「現存する世界最古の本格的な星図」という限りでは正しいと考えられます。「本格的」という一語が重要です。 野尻抱影氏によれば、「現存の最古の星図は、アラートスの星座詩“ファイノメナ”のローマ訳ーーキケロの“アラテア"の第9、10世紀頃の写本に挿入してあるゲルヴィクス筆の円形星図で、大英博物館に蔵されている」そうです。(「星座」新天文学講座1所収の「歴史的に見た古星図」83頁恒星社) Peter Whitfield の“The Mapping of the Heavens"では、唐と宋の間となる940年の「CHINESE STAR CHART」を、”The oldest surviving paper star map from any civilization" と紹介しています。同書18頁(The British Library,O.I.O.C. Stein 332b)どちらもキトラ古墳の時代より新しいものです。 なお上記の「CHINESE STAR CHART」は、描かれた多数の星をつないで中国の星座のまとまりをしめし、星座名も書き込まれていますので「星図」には間違いありませんが、同書の写真を見る限りラフな「星座説明図」のようにも見えます。中国の本格的な古星図としては南宋時代(1247年)の「淳祐天文図」(石刻)が最古だとされています。 ご指摘のとおり、「ハトホル神殿の円形天体図」など「太陽、星、月に関係するキトラより古い絵は、世界中にいくらでも存在」します。ただしそれらは、星座の動物や神々の姿(星座絵)を描いたものが多く、星が描かれているものもシンボル的に付けられているだけで、星図のように個別の恒星の位置が具体的・実証的に描かれているわけではありません。このため「本格的な星図」とは言えないと考えます。 これは、ちょっと考えると不思議なことです。なぜならば紀元2世紀の学者プトレマイオスの星表や3世紀につくられたとみられる古代中国の星表など、多数の星の位置をまとめた一覧表が(原本ではないにせよ)現在に伝わっているのだから、古代人でもこれを使えば容易に詳しい星図(本格的な星図)が作れそうなものだと考えられるからです。 しかしよく考えると、これは現代人が点の位置を数値座標で表すというデカルト以来の座標幾何学的発想を子どもの頃から学校で教え込まれて身につけているためで、古代の天文学者は星表を見てもすぐには星図と結びつけることができなかったかもしれないと考えます。
お礼
「現存する本格的な星図」では世界最古・・・納得です。もっと古い時代の本格的星図が世界のどこかに、過去にはあったのだと解釈しました。座標幾何学的発想を持ち合わせなかった古代の天文学者は、星表を見てもすぐには星図と結びつけることができなかったかもしれない・・・この説明に大きな興味を持ちました。ありがとうございました。
- kagakusuki
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エジプト・デンデラのハトホル神殿の天体図(エジプトにあるのはレプリカで、本物はフランスのルーブル美術館が所蔵)には、天秤座を象徴する天秤の絵とか蠍座を象徴する蠍の絵などといった具合に、黄道12星座や主な星を"象徴する絵"が描かれているだけであって、星々の並び方が描かれている訳では御座いません。 それに対し、キトラ古墳の天文図には北斗などの実際の星々の並び方が描かれています。 そういった星々の並び方が描かれている"星図"の中で現存しているものとしてはキトラ古墳の天文図が世界最古という事の様です。 【参考URL】 「キトラ古墳 天文図」の検索結果 - Yahoo!検索(画像) http://image.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%82%AD%E3%83%88%E3%83%A9%E5%8F%A4%E5%A2%B3+%E5%A4%A9%E6%96%87%E5%9B%B3&aq=0&oq=%E3%82%AD%E3%83%88%E3%83%A9%E5%8F%A4%E5%A2%B3%E3%80%80%E3%81%A6%E3%82%93%E3%82%82%E3%82%93&ei=UTF-8&fr=slv1-tbtop2#mode%3Dsearch 「ハトホル神殿 天体図 ルーブル美術館」の検索結果 - Yahoo!検索(画像) http://image.search.yahoo.co.jp/search;_ylt=A2RCL6MdNuZXmRUAHQ.U3uV7?p=%E3%83%8F%E3%83%88%E3%83%9B%E3%83%AB%E7%A5%9E%E6%AE%BF+%E5%A4%A9%E4%BD%93%E5%9B%B3+%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E7%BE%8E%E8%A1%93%E9%A4%A8&aq=-1&oq=&ei=UTF-8
お礼
ハトホル神殿の天体図はデンデラとパリ両方を見ましたが、たしかに星関連の絵で星そのものはありませんね。キトラとの違い、納得です。ありがとうございました。
- coco1701
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天体図・・その星の位置 天文図・・その星の動き 簡単に言えばこんな感じ 両方の画像を比べてみればよくわかりますよ
お礼
明解な区分で頭中の糸のカラミがほぐれました。ありがとうございました。
お礼
キトラ古墳の本格的天文図は東アジア最古で、このような古代中国式の天文図は東アジアにしかないの解説は意外でした。シルクロード交易を念頭に考えるとエジプト、メソポタミヤ、ギリシャ、ローマにも何らかの似たような本格的宿星図があったと素人は思いたいです。将来、古代エジプトの本格的天文図発見・・・のようなニュースを聞きたいものです。ありがとうございました。