建てたままにして1000年使い続けていた訳ではありません。
日本の神社仏閣などの巨大な木造建築物の維持には解体修理という手法が取り入れられてきていました。
このことについては法隆寺が世界遺産に登録される際にもユネスコの外国人委員との間で議論がありました。
諸外国の遺跡は全て造られた時の状態のまま今日まで伝えられています。
これを基準にして考えれば、バラバラに解体して再度作り直したのは遺跡ではない、ということになります。
この解体修理という技法も含めて今日まで伝えられている建築物であるという理解を得るのに相当時間がかかったようです。
解体修理と言う技法が使えるのは、日本古来の木組みという技術があるからやることができた技法です。
木組みというのは、木と木を組み合わせるときに、金属など別な部材を当たり、釘やボルトで止めるのとは全く違う手法です。
組み合わせる木のお互いに凹凸をつくってやり,それをはめ込むことによって木同士を目的の形に作り上げていきます。
はめ込んであるだけですから、簡単に取り外せます。
この組立方法が結果として、耐震性を向上させています。
詳しくは下記のサイトをご参照ください
建築工房零 - 木組みの構造
www.zerocraft.com/skillroom/37-structure.html
【木組みの家(1)】通常の木造住宅とは似て非なる、本来の日本の伝統 ...
www.homes.co.jp/cont/press/buy/buy_00167/
you tubeにも沢山の動画があります
日本の伝統木組み - YouTube
www.youtube.com/watch?v=ufqmiIqfGDc
腐食に関しましては、日本建築は通風に優れていることと諸外国の建物に比較して軒が深く、建物の主要部分に雨がかかり難いという構造が大きく寄与しています。
後は、使われている檜という用材が高湿度下での腐食に強いという特性があります。
檜は浴槽や桶などにも多く用いられている用材です。
レバノン杉や米松などの用材を使っていれば、相当早く腐食してしまっていたでしょう。
(レバノン杉はエジプト遺跡の木材として使われていました。米松は今でも合板として沢山使われています)
法隆寺の柱などの用材の表面を削ると、今でも新鮮な木部が現れることが確認されています。
このことについて解体修理を請け負っていた宮大工の棟梁の話が残っています。
「物のいのち」 へのっっLみ
ville.jp/tokyo_terakoya/images/pdf/No49_3.pdf
法隆寺の木は生きている、という表現をされています。
法隆寺は歴史的に東大寺の大仏殿のように戦火に会うことがありませんでした。
又応天門のように放火されることもありませんでした。
これは、政治の権力闘争とは縁が薄かったことが幸いしたのではないのでしょうか。
一度、金堂と呼ばれる建物が、横着な僧侶が使った電気座布団の不始末で焼失したことがあります。
幸い五重塔は延焼から免れました。
ほかのスレで法隆寺に関するレポートを作成されなくてはならないようですが、五重塔を切っ掛けとされて古建築技術を伝承してきた最古の木造建造物として纏められては如何でしょうか。
現在、薬師寺を始めとして数多くの古建築物が解体修理を受けたり、復元されたりしていますが、この工事の中核となっているのが、法隆寺の解体修理を創建以来続けてきた宮大工の一族です。
逆に言えば法隆寺が残っていたからこそ、技術が伝えられ、今日の復元工事が滞りなく行うことができる、ということもできます。
法隆寺は、現在も社会にも貢献し続けている、と考えても差し支えないのではないのでしょうか
下記サイトをご参照ください
西岡常一 - Wikipedia
ja.wikipedia.org/wiki/西岡常一
修理の進め方 - 京都府教育庁 文化財保護課 - 京都府教育委員会
www.kyoto-be.ne.jp/bunkazai/cms/?page_id=48
蛇足
法隆寺の五重塔のみならず、日本の五重塔は歴史的に地震で倒壊したものがありません。
これは、前述した木組み構造に加えて、心柱と呼ばれる長大な角柱を懸垂してあることによります。
注)心柱は柱という名称からくる印象とは違い、建物を支える機能は全く持っていません。
詳しくは下記のサイトをご参照下さい
五重塔は耐震設計の教科書【プラント地震防災アソシエイツ】
pedpa.co.jp/library/tower.html
この古い日本古来の技術は東京スカイツリーにも使われています。
you tubeに動画があります
東京スカイツリー心柱・制震装置(NHK BS放映)
投稿者:寺井貞夫
参考文献
法隆寺を支えた木 西岡常一/小原次郎 NHKブックス
宮大工千年の知恵 松浦昭次 祥伝社
宮大工千年の手と技 松浦昭次 祥伝社
宮大工と歩く千年の古寺 松浦昭次 祥伝社
木のいのち木のこころ 西岡常一 草思社