まず、基本的な認識が間違っています。日本人が学校で学ぶのは、確かに「橋本文法」が基礎になっています。実際には少し改良が加えられているようですが。外国人に教える文法は「時枝文法」ではありません。「時枝文法」は非常に特徴ある文法で、強く推奨する人もありますが、それを特に教えようという動きはありません。学校で教える文法をいろいろ取り替えても、迷惑するのは生徒であり、また教師自身ですから。
外国人に教える文法として、ほぼ共通認識されているのは、(外国人のための)「日本語文法」とも呼ばれるもので、学校で教える「国文法」とかなり違っています。しかし、それが一つの大系としてまとまっているかというと、それがかなりばらばらの状態です。最近、次第に形を整えつつあるようです。大学で学ぶ「文法」もこの系統が主流を占めているようです。
この文法の特徴としては、文の中心になるのは「述語」であるという考えに立ち、文を名詞文・動詞文・形容詞文の三種に分けることです。また、学校ではあまり聞かなかった「アスペクト」などを論じるのも特徴のひとつです。現在ネット上で見かける「文法教室」などもこの系統です。(ただし、ネット辞書は学校文法の考え方を採っています)最近、「『象は鼻が長い』の言語学」について質問がありましたが、回答がないまま締め切られてしまいました。これは三上章という学者が書いた書物の名で、日本語に主語はいらないという「主語不要論」を主張した考え方ですが、最近この考えを受け継ぐ学者が増えているのが実情です。
学校で習う「国文法」とこのような「日本語文法」との違いをある程度知っておかないと、ネット上の記事に迷わされかねません。文法の違いを完全に説明するのは容易ではありませんから、この程度で止めておきます。