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数学「行列」の実生活への応用
こんにちは、よろしくお願いいたします。 私の年代は高校数学で「行列」を学んでいません。 お尋ねしたいのですが「行列」は実生活の中では、どういう場面で応用できるのでしょうか? よろしくご教示ください。
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例えば、理系で大学へ進むと、ほぼ全員が線形代数(行列とその応用)、解析学(微積分とその応用)は必修になります。行列ですと、それが何に使えるかというより、数字として必要と言ったほうがいいくらいです。基本中の基本ということです。 分かりやすい例題を考えてみます。次のような連立線型方程式があるとします。 x+2y=3 ―(1) 4x+5y=6 ―(2) 普通なら、(1)の両辺を4倍してから、(2)で両辺を引いて……と式変形しながら、xとyを求めます。行列を使うと、上の二つの連立線型方程式は以下のように書けます(縦に並んだ[]は上下つながったカッコだと思ってください)。 [1 2][x]=[3] ―(3) [4 5][y] [6] これは逆行列というものを計算すれば、以下のように計算できます(何をしたかは分からなくても大丈夫です)。 [x]=[-5/3 2/3][3]=[-1] ―(4) [y] [4/3 -1/3][6] [ 2] x=-1, y=2と計算できるわけですが、変数がたった二つの簡単な連立線型方程式なので、わざわざこんなことしなくてもいいという感じがするかもしれません。しかし、変現実の問題を解くときには、数が100個とかあるようなケースは当たり前に発生します。(線型)多変量解析などと呼ばれます。 なお、上記が何をしたかを、数字での場合に対応させて説明しておきます。 3x=6 という式があるとします。3の逆数1/3を両辺に掛けると(逆数は掛けて1になる数字)、 x=2 となります。変数が二つ以上になっても、行列で書いておけば同じようにして、一発で全ての変数を求めることができます。 行列で逆数に相当するのが逆行列で、(3)から(4)は両辺に逆行列を掛けたのです。行列が数字みたいなものであることを感じ取って頂ければ幸いですが、何せ習っていない行列ですから、分からなくても問題ありません。 線型連立方程式でも、解き方を単純作業の繰り返しとして手順を定めることができるのですが、行列を使うとそれがもっと簡単になります。手計算するなら大した差ではないかもしれませんが、コンピュータを使うなら(普通はそうする)、大きな差となります。コンピュータプログラムは、要は単純作業の手順を書いたもので、繰り返しに関して極めて強力だからです。 もちろん、これだけではありません。コンピュータは半導体なくして動きませんが、半導体の基礎理論である量子力学は行列で数式を書く方法があります(他に、微分方程式で解くやり方もある)。行列がなければ、コンピュータもスマホも何もかもといっていいくらい電化製品はなくなってしまいます(今の電化製品の多くはコンピュータ内蔵)。車などもそうですし、半導体に限りません。 行列自体は普通の数に比べれば面倒臭い数です。整数に対して分数は面倒臭い数ですが、それ以上に面倒臭いです。それでも、行列で式を書くことができれば、機械的に解くことができるのです(※解けるかどうかも事前に明確に分かったりする)。機械的に解けるのですから、コンピュータ向きでもあります。 理系では行列は普通の数同様、なくては困る、数同様のものです。理工系が支える分野の多くは行列が必須です。ただ、以前に高校で行列が履修範囲に入っていた頃、行列を使っていろいろ便利にできるところまでは教えていなかったようです。 なお、微積分も同じで、それで微分方程式という強力なものが扱えることを習いません(※なお、微分方程式は物理学では基本中の基本、なければ物理学自体がなくなるくらい重要)。虚数から複素数なんてありますが、それも同じです。 面白くない、面倒臭いところまでやらせておいて、いろいろ便利になる使い方を教えていないんですね。 一方、使わずに済む人からすれば、行列は何の役にもたたないものです。中学数学でも、2次式か、連立線型方程式ですら、習いはしても一生使わないことも珍しくありません。算数でも、分数の計算などは、電卓や表計算ソフトだと使いません(小数で計算してしまう)。そのため、大学生になって分数の計算問題を出されて解けない人が出る、なんてことが話題になったりします(個人的には使わないものは忘れていいと思う、分数計算くらい復習すればすぐ思い出せるんだし)。
お礼
非常にご丁寧なご回答、心より感謝申し上げます。 「行列」が大切な学問であり、実生活の中でも広く使われていることが理解できました。感謝申し上げます。 誰だったか、「数学の教師は単に問題を解かせるだけでなく、それが生活の中で如何に応用されているかを教えるべきだ」と主張していましたが、私も同感です。 貴重なお時間をさいての御回答に感謝申し上げます。